AMD、IDF会場近くでモバイルAthlon 64の実機デモを初公開


 AMDは、IDF Spring 2003の会場に近いホテルでプレス向けの説明会を行ない、モバイル用のAthlon 64が動作している実機を初めて公開した。モバイルAthlon 64は、今年の後半にリリースが予定されているノートPC向けCPUで、実際に動作している様子が公開されたのは今回が初めて。

●モバイルAthlon 64+VIA K8T400のフルサイズノートPCを公開

 昨年のIDF Spring 2002の期間中、AMDはIDF会場近くのホテルにおいてOpteron(当時の名称はSledgeHammer)、Athlon 64(同じくClawHammer)、およびチップセット(AMD-8000シリーズ)を報道陣に公開し、大きな話題を呼んだ。その模様はhttp://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0227/idf04.htmでレポートしたとおりだ。

 今年もAMDは期待を裏切ることなく、IDF会場近くのホテルでプレスミーティングを開催し、そこでモバイル用のAthlon 64および4ウェイのOpteronサーバーを公開した。

 公開されたのはモバイルAthlon 64プロセッサを搭載したフルサイズのノートPCで、チップセットにはVIA TechnologiesのK8T400チップセット、256MBのDDR266、30GBのHDD、DVD/CD-RWコンボドライブ、グラフィックスはMobility RADEON 9000が採用されていた。なお、実クロックや、モデルナンバーなどは一切明らかにされておらず、デモといってもDVDの再生が行なわれただけだった。

初公開されたモバイルAthlon 64搭載フルサイズノート。チップセットはVIAのK8T400を採用

●熱設計消費電力は35~45W、ライバルはモバイルPentium 4プロセッサ

現在のAMDのロードマップ。モバイルAthlon 64は第3四半期に登場予定(1月31日付)
 モバイル用のAthlon 64は、「Mobile AMD Athlon 64 Processor」と表示されていたが、これは正式な名称ではない可能性が高い。というのも、最近AMDはモバイルAthlon XPのブランド名をモバイルAthlon XP-Mと「-M」をつけたものに変更している。したがって、Athlon 64にも-Mがついてもおかしくない。AMD コンピュテーションプロダクトグループ プロダクトマーケティングエンジニア ジョン・クランク氏も「現在のところ最終的なブランド名は決定していない」としており、今後変更される可能性は十分にありそうだ。ここでは仮に「モバイルAthlon 64」と呼ぶ。

 モバイル向けCPUということで、熱設計省電力が気になる。というのは、熱設計消費電力の仕様により、利用できるノートPCのフォームファクタが決まってしまうからだ。クランク氏によれば、「当初、モバイルAthlon 64の熱設計消費電力は35~45Wをターゲットとしている」という。

 現在、AMDのモバイル向けCPUである、モバイルAthlon XP-Mは、35~45WをターゲットとしフルサイズノートPCを想定した通常版、25~35WをターゲットとしA4シン&ライトを想定した低電圧版、12W~25Wをターゲットとしサブノートを想定した超低電圧版の3つのバージョンが用意されている。

 なお、同じ低電圧版、超低電圧版でもIntelとは異なっていて、Intelでは低電圧版は12W、超低電圧版では7Wをターゲットとしているので、名前は同じだが、同じ熱設計のセグメントにはなっていない。

 このうち、モバイルAthlon 64がターゲットとしているのは、35~45Wとなるので、フルサイズノートPCということになるが、この熱設計の仕様は今後変更される可能性が高い。なぜかと言えば、モバイルAthlon 64の競合相手はもっと高い熱設計消費電力を採用としているからだ。

 Intelが3月12日に発表するCentrinoモバイルテクノロジのCPUであるPentium Mは、熱設計消費電力が25Wの通常版、同12Wの低電圧版、同7Wの超低電圧版が用意されているが、モバイルAthlon 64の最初のターゲットは35~45Wの市場ということになるので、Pentium Mとは直接競合しない。

 モバイルAthlon 64が競合することになるのは、Intelが第3四半期に投入を予定しているモバイルPentium 4プロセッサだろう。この-MがつかないモバイルPentium 4プロセッサは、各PCベンダがフルサイズPCにデスクトップPC版Pentium 4を採用していたことに対応するCPUで、デスクトップPC版のCPUに、エンハンストSpeedStepテクノロジの機能を追加した、新しいモバイル向けCPUだ。第3四半期には3.06GHz、第4四半期には3.20Gzの投入が予定されており、3.20GHzに至っては熱設計消費電力が75Wに達することになる(なお、SpeedStepのバッテリーモード時のクロックは1.60GHz)。

 AMDが、モバイルAthlon 64の用途をデスクトップPCリプレースメントと呼ばれるデスクトップPCの置き換えとなるフルサイズノートPCの市場であると位置づけるのであれば、ライバルはこのモバイルPentium 4となる。

 ならば、Athlon 64の熱設計消費電力が45Wである理由はどこにもない。Intel製のCPUを採用しているノートPCで75Wが処理できるのであれば、当然AMDのCPUを搭載しているノートPCでも75Wが処理できるからだ。これまでもAMDは熱設計の上限をIntelに合わせてきた。したがって、近いうちにAMDのCPUの熱設計の上限も75Wをターゲットとしたものに変更されれることになるだろう。

 なお、モバイルAthlon 64は今年後半のリリースを予定しているが、前述のようにブランド、モデルグレードなどは今のところ未定であるという。


●Opteronを採用した4ウェイサーバーの内部を公開

内部が初公開されたOpteron搭載4ウェイサーバー

 また、4つのOpteronプロセッサが搭載された4ウェイサーバーの内部も公開された。これまで動作しているところは公開されていたが、内部が公開されたのは初めてだ。

 こちらも、実クロックやモデルナンバーなどは明らかにされていないが、チップセットにはAMD-8000シリーズチップセットのうち、PCI-XハブのAMD-8131とI/OハブのAMD-8111を搭載したAMDのリファレンスマザーボードが利用されており、12GBのPC2100メモリが利用されていた。

 すでに、AMDはOpteronのリリースを4月22日にニューヨークで開催することを明らかにしており、投入されるのは実クロックで1.8GHz、1.6GHz、1.4GHzの3つのグレードであることが明らかになっている。

 気になるOpteronのモデル表記だが、やはり実クロックではなく何らかのモデルナンバーのようなグレード表記になるようだ。となると、ターゲットとなるのはIA-64なのか、IA-32であるのは気になるところだ。

 AMDのクランク氏は「Opteronはボリュームゾーンをターゲットとした製品だ。そういう意味では競合相手をあえてあげるとすれば、Xeonということになるだろう」と述べOpteronはXeonと競合する製品であると説明している。となれば、モデルナンバーもXeonを意識したもの、例えば3000+とか2800+などになる可能性が高い。

□関連記事
【1月31日】AMD、Opteronを4月、Athlon XP 3000+を2月に投入
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0131/amd.htm
【2002年11月22日】【COMDEX】Bartonを搭載したPCやAthlon 64対応PCが展示される
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1122/comdex09.htm
【2002年9月27日】【IDF】AMDがHammer、AMD-8000チップセットシリーズを初公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0227/idf04.htm

(2003年2月23日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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