第188回
魅力的スペックとその実現のギャップ
~新型LaVie GタイプJレビュー



 今年初めの商戦期に向けて発表された各社ノートPC新製品のうち、個人的に注目しているのが、ソニー バイオシリーズ最新作となるV505シリーズ富士通LOOX SおよびTに搭載された新型CMS搭載Crusoeのパフォーマンス、それにNECの新型LaVie GタイプJである。

 前者2機種に関しては、まだ入手していないため詳しいコメントは控えるが、V505は新筐体の使い勝手と、いかに2GHzクラスのプロセッサを組み込みながら2スピンドル機としては最薄クラスを実現している点が注目。LOOXシリーズは起動速度のアップがどの程度のものなのかが興味深い。

バイオV505 LOOX T

 そしてもひとつの話題、新型LaVie GタイプJは新筐体を採用したフルモデルチェンジで、初のデュアルバンド無線LAN内蔵モデルが用意された。さらに電源供給付きUSBコネクタと専用DVD-ROM/CD-RWコンボドライブも添付。価格を低く抑えながらもキャッチーな機能やインターフェイス類をそろえた。

 今回は、新型LaVie Jの試作機をお借りすることができたので、実際の使い勝手などをお伝えすることにしたい。

●“こうあって欲しい”を具現化したスペック

LaVie GタイプJ
(写真はベースとなったLaVie J)

 新型LaVie GタイプJのスペックを簡単に紹介しておこう(以下はすべて評価機として試用した最上位モデルのスペック)。プロセッサは超低電圧版モバイルPentium III-M 933MHzで、オンボードメモリは256MB。1本のSO-DIMMスロット(PC133)に最大512MBを増設可能で、最大メモリ容量は768MB。ハードディスクは東芝製1.8インチ30GB、ビデオ機能はチップセット内蔵タイプ(Trident CyberALADDiN-T)、重量は1.15kgで4セルバッテリを背負い、公称で4時間のバッテリ駆動が可能。オプションの8セルバッテリを取り付ければ、8時間のバッテリ駆動も可能だ。

【お詫びと訂正】記事初出時、プロセッサの動作周波数を966MHzと表記しましたが、933MHzの誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。

 これらのスペックもそれなりに魅力的なものだが、本機の長所は(レガシーインターフェイスを除く)インターフェイス周りの充実であろう。

 3つのUSB 2.0ポートを備え、そのうちのひとつに隣接して専用の電源供給ポートが配置されている。この電源供給ポートは標準添付されているDVD-ROM/CD-RWコンボドライブを駆動するためのもので、1本のケーブルで外部光学ドライブを利用できる。バイオシリーズで採用されているIEEE 1394の4ピンコネクタと電源のコンビネーションコネクタと同様のものと言えばわかりやすいだろうか。

 このほかIEEE 1394(4ピン)、PCカード、Type 2 CF、標準サイズのVGA出力コネクタが本体に装備されており、さらに冒頭でも述べていたデュアルバンドの無線LANモジュールが内蔵されている。

 デュアルバンド無線LANモジュールは、現在ソニーなどから発売されているデュアルバンド無線LANカードに採用されているのと同じAtherosのチップセットを採用。アンテナは液晶パネル上部に配置されており、受信感度に関する問題は感じられなかった。アクセスポイントが隣の部屋にある場合でも、リンク速度は多少落ちるものの通信不能になることはなかった。試しにさらに隣の部屋に移動してみたが、なんとかリンクを維持できる。5GHz帯の無線LANとしては優秀な部類になるだろう。

 加えて先代モデルから引き継いだ幅270mm、奥行き222mmのフットプリントは12.1型クラスとしては小さく、筆者が普段使っているDynabook SS Sシリーズと比べると、かなり小さく見える。最薄部17mm(最厚部21.8mm)の薄さもスペック的に魅力を感じる人もいることだろう。

●電源不要のコンボドライブと専用インターフェイスの4-in-1

 これまで僕は、1スピンドルのPCでは主に安価なUSBバス給電で動作するTEAC製のCD-ROMドライブを外付けで使ってきた。CD-R/RWやDVD-ROMドライブを持っていないわけではないが、別途電源を取るのが面倒だったからだ。

専用給電コネクタ付きUSBコネクタ。左がTypeA、右がTypeB

 CD-R/RWやDVD-ROMドライブは消費電力が大きいため、バス給電では動作させることができない。この点を解決するため、ソニーはバイオC1やバイオノートSRにIEEE 1394+専用給電コネクタで対応していたわけだが、本機ではそれと同じ使い方をUSB 2.0でサポートしている。AC利用時だけでなく、PC本体のバッテリでドライブを駆動できる点も同じだ。

 たまたま米国東海岸への出張が重なったこともあり、本機と専用ドライブを機内に持ち込んでDVDを鑑賞してみたが、予想以上に楽しむことができた。もちろん接続の簡単さは言うまでもない。標準の4セルバッテリでは2時間程度しか再生できないため、標準的なハリウッド映画がギリギリ再生できる限界(他の目的でも使おうと思うと辛い)。しかし8セルの大容量バッテリを搭載すれば4時間分のDVD再生を楽しめる。道程では約3時間のロード・オブ・ザ・リングを再生させ、さらにトランジットでメール処理や原稿執筆などに使ったが、大容量バッテリを使い切ることはなかった。

 バッテリ駆動時間が短いのは、もちろん光学ドライブを動かしながらDVD再生の負荷を加え続けるからであり、通常の使用では長時間駆動が可能だ。テスト期間を取れなかったためおおよそではあるが、標準バッテリでは3時間15分程度、大容量バッテリではその2倍程度はバッテリで利用できる。無線LAN利用時は30~45分程度、そこから差し引いた駆動時間になると考えるといい。

 また本機にはSDメモリーカード、MMC、メモリースティック、スマートメディアをサポートする4-in-1アダプタが付属しており、PCカードに挿入することでメモリカードからデータを読み出すことができる。このアダプタは特殊な結線で内部のカードバスコントローラと直結されており、PCカードとしては認識されない。このため、本機付属の4-in-1アダプタを他のPCに装着しても利用できない。その代わりにI/Oモード動作時のPCカードよりも高速なデータ転送が可能となっている(ただしDynabook SS SシリーズのPCI接続されたSDカード専用スロットよりは遅い)。

●疑問残るレイアウトは薄さが影響?

 もっとも個人的な意見になってしまうが、改善して欲しいと感じる部分もある。それは主にコンポーネントのレイアウトに起因すると考えられる問題である(どんな製品も、良い面と悪い面が同居しているものだ)。

 たとえば本機のキーボードは、一般的な12.1型クラスと比べると奥行きのサイズが詰められている。これは手前にスクロールスイッチ付きのパッドを置き、背中に2列分のバッテリ配置スペースを残しつつ、奥行きサイズを最小限に切り詰めているためだ。

 バッテリの1列分をキーボード下に潜り込ませるレイアウトにすれば、キーボードの奥行きを増やせるはずだが、そうすると本体の厚みが増えてしまう。最薄部が17mmであることを考慮すると、今以上に後端部の厚みを増すとデザイン的なバランスが悪くなってしまうだろう。

 しかし縦方向を詰めたことで、通常のキーとは縦横比が大きく異なる結果となった。これには慣れるまでは強い違和感を感じる。もし縦方向のスペースを確保できないのであれば、数字としての横ピッチ(19mm)にこだわるのではなく、バランスの良い配置にした方が良かったのではないだろうか。同じことは先代モデルにも言えたが、新型ではキーボードも新調されタッチが改善されているだけに惜しまれる。

 また筐体横幅を切り詰めつつ、19mmピッチを実現するため、バックスペースやエンターキー、右シフトが削られ、一番手前の列も多数のキーが並ぶため頻繁に利用するAltやCtrlが小さくなってしまっている。必要なキーの取捨選択など、キーレイアウトの再考が必要かもしれない。標準的ではないレイアウトのキーボードも、慣れれば実用上の問題はないとも言えるが、余裕のあるレイアウトを採用した機種との差は残る。

 薄型筐体に関しても、17mmとスペック上の薄さは確保したものの、底面は凹凸が多く机に置いた時に凹凸が邪魔にならないように、最薄部に高めの足が取り付けられている。これではせっかくの薄型筐体も使い勝手が悪い。スペック上の数値を求めるのではなく、全体のフォルムを滑らかにするよう各コンポーネントの配置を再検討すれば、もう少しスマートなデザインになっただろう。

 数字上の薄さを追求しなければ、端子類の配置も楽になり、バッテリも横2本ではなく3本を並べられたはずだ。現在のレイアウトでは大容量バッテリ装着時、バッテリ2列分が背面から飛び出してしまうため、せっかくのコンパクトな筐体がスポイルされる。

キーボードとスクロール機能付きパッド 標準バッテリ(下)と大容量バッテリ(上)。試作品のため、本体とバッテリの色が違う

 NECによると本機に使われているコンポーネントは、同社のタブレットPCと共通部分が多いという。その結果、コンフィギュレーションの割に安価な価格設定が実現されているが、反面で設計上の制限になってしまったのかもしれない。

 LaVie GタイプJのスペック、機能は非常に魅力的なものだ。NECの気合いを十分に感じることはできる。少々辛口のインプレッションとなったが、ここで指摘したキーボードと筐体デザインが気にならないならば、価格的にも魅力的な選択肢と言える。ただ、ユーザーの手に触れる部分を大切にした、より魅力的な製品となるための変化も期待したい。NECにはその能力が十分以上に存在すると、僕は思うからである。

□関連記事
【1月17日】NEC、IEEE 802.11a/b対応のモバイルノート「LaVie J」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0117/nec1.htm
【1月16日】ソニー、コンボドライブを内蔵した新バイオノート505
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0116/sony1.htm
【1月15日】富士通、BIBLOシリーズを春モデルに一新
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0115/fujitsu2.htm

バックナンバー

(2003年1月29日)

[Text by 本田雅一]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.