1月17日
韓国Samsung Electronicsは17日、韓国 水原(スウォン)市の同社水原工場を日本の報道関係者向けに公開した。ここでは同工場内のSamsung広報館とノートPCの生産ラインをレポートする。 ●敷地面積172万平方mの広大な工場は「Samsung村」 水原工場のある水原市は、ソウル市の南40kmにある京畿道(キョンギド)の道庁所在地。人口は約95万人、面積は121.2平方kmで、昨年はFIFA World Cupの開催都市にもなった。また、Kリーグのプロサッカーチーム「スウォン・サムスン」を擁することでも知られている。 ここに約172万平方mの広大な敷地を構えるのがSamsung 水原工場だ。Samsungグループは韓国に6つの工場を持つが、水原工場はその中でもっとも規模が大きく、従業員は2万人を超える。工場敷地内には大小取り混ぜて30を超える建物があるが、その中には工場だけでなく、事務練、広報館、従業員宿舎、サッカー場(ここは以前スウォン・サムスンの練習場だった)なども含まれ、さながら「Samsung村」の様相を呈している。敷地内には4つの食堂があり、1日に5トンの米を消費するという。 水原工場にはPCやディスプレイ製品など、PC関連製品やデジタル家電の組み立て施設がある。Samsungグループでは半導体や液晶パネルなどの主要コンポーネント、携帯電話などの通信機器、白物家電なども生産しているが、これらは韓国内の別な工場で生産される。半導体を担当する器興(キフン)工場は、従業員18,500人と水原工場に次ぐ規模を誇る。
●日本未投入の魅力的な同社製品が並ぶ広報館
水原工場はソウルのSamsung本社からもっとも近い工場のためか、敷地内にグループの電子・電機製品を展示した広報館が設けられている。ライン見学の前に、こちらを見学させていただいた。 広報館は2つの区画からなっており、1つは現在のSamsung製品を、もう1つではSamsungの歴史を展示している。 現在の製品には、メモリやノートPC、DVDプレーヤーやビデオデッキのような日本でもおなじみの製品もあるが、大半は日本に投入されていない製品で、デスクトップPCや携帯電話、AV機器、白物家電など、広範な製品が多数展示されている。 中でも興味深かったのは米国で発売中の「インターネット冷蔵庫」。冷蔵庫とワイヤレス接続されたタブレット型の端末が付属しており、WWWブラウザやメールによるインターネット利用はもちろん、テレビやDVDの視聴、付属CCDによるデジタル画像撮影、宅内照明や電気製品のコントロールができる。 広報館の説明では、価格は日本円で80万円としており、ベースとなった通常の冷蔵庫が18万円程度であることを考えるとかなり割高な商品だが、ホームネットワーク端末の1つの形態として、可能性を感じさせる部分もある。韓国国内でも5月から発売されるという。 このほかにも魅力的な製品が数多く展示されている。とくに韓国で70%の市場占有率を誇る携帯電話は、日本に投入されてもそれなりのシェアを確保できそうな仕上がりだ。日本では“安物”のイメージが先行する同社AV製品も、ハイエンド製品が多数展示されていて興味深い。さらに、マルチメディア機能を強化したデスクトップPCも、シンプルなデザインにまとめられており、日本市場でも十分な競争力がありそうに見える。 独創性はやや乏しい印象だが、既存のジャンルに属する製品としてはなかなか魅力的なものが多い。これらについては写真を中心にレポートする。 ●主役はライン。セルは少数派
広報館を後にして、ラインを公開していただくコンピュータシステム事業部を伺った。工場へ入るには、日本のPC工場同様にシューズカバーを着用しなければならない。 見せていただいたのはノートPC用のラインだ。ここ水原工場では、他の工場からやってきたメモリ、HDD、マザーボードなどを集め、PCとして組み立て、出荷している。したがってボディシェルにマザーボードを取り付けるところから、ラインは始まる。取材時はOEM向け製品がラインを流れていたため、写真撮影は許可されなかった。 日本のPC工場では、多品種少量生産やBTO対応、人件費削減のため、ラインを廃止してセルに切り替えた例がよく見られる。が、Samsungの工場ではラインが主役を張っている。カスタマイズモデルのためにセルも設けられているが、設置面積や生産量はラインがまぎれもなくこの工場の主役だ。 ラインは2本あり、1本あたりのラインは1日に1,000台のPCを生産できる。工場全体でのフルキャパシティは1日4,000台とのことだ。 ラインを出た完成品は、Samsung独自のテストプログラムにより、全機能をチェックされ、梱包され、出荷される。
●好調な実績が支える強気な姿勢 ライン見学前に受けたブリーフィングによれば、コンピュータシステム事業部は’93年に設立、手がける製品はデスクトップPC、ノートPC、サーバー、インターネットアプライアンスとなっている。製品は自社ブランドだけでなくOEMとして供給される。OEM先は公開されなかったが、かつてのゲートウェイ、現在ではDell Computerの製品がそれと推察される。 2001年の売上げは19億ドル。2002年の売上げ額は公表されていないが、出荷量が2001年の180万台から、2002年は250万台と大幅に伸びていることから、売り上げも伸びていると思われる。 また、韓国市場にはLG、Daewo、Hyundaiのほか海外のPCベンダー数社が参入しているが、2002年の韓国内におけるSamsungのノートPCのシェアは60%、デスクトップPCが46%と、いずれもトップシェアを誇る。 同事業部の強みは、メモリ、LCDパネル、HDD、光学ドライブなどの主要コンポーネントをSamsungグループ内で調達できることだという。これにより、必要なコンポーネントを必要なだけ、市況に左右されずに調達し、顧客のニーズに迅速にこたえられるとした。さらに、グループ内他事業部との連携により、強い開発力も維持できるとした。 2007年までの売上げ計画では、年間30%弱の成長を見込むという、強気な姿勢を明らかにした。とくにノートPCとサーバーは2003年にそれぞれ約13億ドル、約3億7千ドルの売上げを見込むのに対し、2007年にはそれぞれ約41億ドル、約7億ドルと大幅な成長を計画しているという。
「日本ではコスト削減のためにラインを廃止し、セルを導入する例がほとんどだが?」と聞いてみたところ、コスト削減策は’97年の韓国金融危機の時にほぼ取り終えたのだという。 金融危機当時の金大中政権は、国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐと同時に、財閥再編ほかの対策を進めた。Samsungグループもこのとき、自動車事業を手放すなどの改革を行ない、電機・電子とその関連産業に資源を集中して現在に至っている。危機を乗り越え、成長に転じたSamsungグループの勢いを感じさせるライン見学だった。 □Samsung Electronicsのホームページ(英文)http://www.samsungelectronics.com/ □サムスンのホームページ http://www.samsung.co.jp/ □関連記事 【1月20日】Samsung、2003年前半に発売予定の液晶ディスプレイ3製品を公開 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0120/samsung1.htm (2003年1月20日) [Reported by tanak-sh@impress.co.jp]
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