塩田紳二のPDAレポート

2003 International CESで見たPDA
~GarminのGPS内蔵Palm機や、Fossilの“腕Palm機”
などが展示される



●ハンディGPSの老舗が作ったPalm機

上部に見える板のようなものがGPSアンテナ。本体正面には4つのボタンと上下キーが並ぶ

 米国ラスベガスで開催されている2003 International CESにおいて、GarminはPalmOS 5搭載PDA「iQue 3600」を発表した。

 GarminはGPSデバイスで著名な企業だが、このiQue 3600は、GPSを内蔵した初めてのPDA。従来Palm機には、サードパーティ製品として、接続が可能なGPSデバイスはいくつかあったが、最初からGPSとGPS関連アプリケーションを内蔵しているのはこのiQue 3600が初めて。MP3プレーヤー機能とボイスレコーダー機能も装備されており、PDAとして見ても十分な機能を持っているようだ。

 出荷は、2003年の第2四半期、価格は589ドルで、米国、カナダのGarmin取り扱いディーラー経由で販売される。地域が限定されているのは、付属の地図や内蔵ソフトが英語版のみということからだという。

●いたって普通のPalm機……GPS以外は

 iQue 3600は、一見、普通のPalm機だが、背面にGPSアンテナが格納されており、これを引き起こしてGPS信号を受信する。外部アンテナ端子も装備されており、車などで外部アンテナを使ったナビゲーションも可能。GPS部分は12衛星同時受信可能で、同社のeTrekシリーズなどに採用されている受信モジュールと同等のものが使われていると思われる(ちなみに今回同時に、eTrekシリーズの後継として小型化されたGekoシリーズも発表されている)。

本体背面。GPSアンテナを格納したところ(左)と、開いたところ。アンテナは自由な角度で止まるようになっていて、これを空の開けた方向に向ける

 プロセッサには、150MHzのARM9コアを使ったDragonBall MXL(68000コアのDragonBallをベースに、コア部分をARMにしたもの)を採用。

 RAMは32MBを搭載している。RAMが16MBのCLIE PEG-NX70では、約5MBがシステムで使われてしまっていたことを考えると、32MBを装備したiQue3600では27MB程度がユーザーの利用可能な領域と思われる。iQue3600では地図データをPCから転送して利用するため、大容量のメモリを採用したと思われる。

 ディスプレイには、320×480ドット16bitカラー(65,536色)のTFT液晶を採用、白色LEDによるバックライトが装備されている。

 バッテリは、充電可能なリチウムイオン電池。気になる動作時間だが、GPSの受信状態などにより左右されるが、GPSを使っている状態で連続4時間程度だという(GPSを使わなければ普通のPalmのように使えるとか。ただ、まだ開発中なので最終スペックは未定とのこと)。サイズは、72.1×20.3×127mm(幅×奥行×高さ)と少し大きめ。重さは161.7gである。

 GPSアンテナ部分を除けばデザインはいたって普通。本体下部正面には、4つのハードウェアボタンと上下キーが装備され、グラフィティエリアはソフトウェアで表示されるタイプ。また、本体下には拡張のためのコネクタ(形状から見るにどうも独自のようである)があり、付属の液晶カバーはヒンジ部分が下になるように取り付けられる。

 本体側面には、シャトルキーと2つのボタン、本体上部には、SDカードスロット、IrDA受発光部、ヘッドホンジャック、GPS外部アンテナ端子などが装備されている。

本体底部の拡張コネクタ。形状からみるとどうも独自の構造で、他のPalm機とは違うようである。電源は、コネクタ左側の丸いジャックで接続するようである 本体背面と液晶カバー。GPSアンテナが上部に飛び出す関係で、液晶カバーは本体底部に取り付けるようになっている 側面の写真。シャトルキーと2つのボタンがある。写真右側の黒い部分は、液晶カバー

●豊富なGPS関連ソフトが付属

 Palm OS標準の予定表やアドレス帳、ToDo、メモ帳などに加え、以下のようなGPS関連ソフトウェアが搭載されている。

Que GPS
GPS受信状態などの管理ツール
Que MAP
マップ表示
Que Find
地名検索
Que Tracks
移動軌跡記録
Que Trip
ナビゲーション。経路の再探索や音声による案内が可能
Que Info
地域情報表示
Que Clock
GPSにより時刻修正の可能な時計

 さらに、PC上で動作する地図データ管理ソフトMapSourceが付属し、これを使って、iQue 3600へ転送する地図データを管理できるほか、iQue3600で記録したトラックデータ(移動軌跡)の表示などが、PC上でも可能になるという。

 地図データには、店舗や施設、道路などの情報(Point Of Interest:POI)や、地名なども含まれており、住所や電話番号、郵便番号などから地図検索が可能だという。なお、粗いおおまかな地図は本体に標準で組み込まれており、ダウンロードしていない場所であっても地図表示などは可能になるという。

ナビゲーション画面。ピンクの線がルートで、黒い三角が現在位置 ホーム画面。下のほうにある薄い青のアイコンが独自アプリケーション グラフィティエリアを起動したところ

□Garminのホームページ
http://www.garmin.com/
□製品情報
http://www.garmin.com/products/iQue3600/
□ニュースリリース
http://www.garmin.com/pressroom/mobile/010803b.html
□関連記事
【1月10日】Garmin社、GPS内蔵Palm ハンドヘルド発表(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/event/0,,12291,00.html

●Fossil WristPDA for PalmOSの動作モデルを展示

 昨年11月のCOMDEXで発表されたFossilのWristPDA for PalmOSだが、今回は動作しているモデルが展示されていた。

 説明員の話によると、アプリケーションを起動するホーム画面は、アイコンを拡大表示する専用のものを作ったという。これは、指でもアプリケーションを起動できるようにするためだという。また、この画面でバッテリの残量表示が常に充電状態になるのは、現バージョンのバグのためだという。

 また、USB端子や充電用の端子は本体の裏側に付くようである。そのほか、製品と同じデザインのモックアップ(2種)も展示されていた。

試作機で、標準のホーム画面と、WristPDA専用のホーム画面を動かしたところ。WristPDAでは、このようにアイコンを拡大して表示させ、指でもプログラムの起動を可能にする
2つのタイプのモックアップ。ビジネス向け/カジュアル向けでデザインが違うだけ

□Fossilのホームページ
http://www.fossil.com/
□Abacusのホームページ
http://www.abacuswatches.com/
□製品情報
http://www.fossil.com/Tech/Techpdapalminfo.asp?Tier1=Tech
□関連記事
【2002年11月28日】【塩田】COMDEXで見たFossilのWrist PDA with PalmOS
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1128/pda.htm

●続々登場する携帯電話機能付きPocket PC

 今回、Microsoftのブースには、いくつもの携帯電話機能内蔵のPDAが展示されていた。多くの機種は、携帯ネットワーク会社のロゴが入っており、各社が端末として携帯電話機能内蔵のPocket PCを用意しはじめたようである。

日立の携帯電話内蔵Pocket PC 2003 Phone Edition機。「Multimedia Communicator NT1」。Pocket PCには珍しいミニキーボード付きマシン Samsungのカメラ内蔵PocketPC 2003 Phone Edition機「i700」
東芝のPockt PC 2003 Phone Edition機「2032SP」 Royalが開発中のLinux搭載PDA。昨年のCESにも展示されていたが、今年の5月には出荷できるようになるという

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(2003年1月11日)

[Text by 塩田紳二]


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