VGA液晶を装備し、クラムシェル型でキーボードを装備したシャープのSL-C700の出荷が開始された。今回は、発売直後のSL-C700のファーストインプレッションレポートをお届けする。なお、ソフトウェアや使い勝手など、細かい点についてはまた別途レポートする予定。 SL-C700を入手すべく、新宿近辺のカメラ系量販店で予約しようしたのだが、先週火曜日の時点ではどこも「予約では発売日の入手は無理」と言われた。かなり前評判はいいようである。ただ、秋葉原へ行ったところ、予約で発売日に入手可能だった。 実売価格はどこも59,800円(消費税含まず)となっており、差は無い。このクラスの価格帯の商品は、ポイント還元率の高い店舗で買うユーザーが増えているのだと思われる。 なお予約で購入したたため、プレゼントの「プレミアムCD-ROM」も入手した。これには、地図ソフト「プロアトラス2002リミテッドエディション」とザウルス文庫の書籍3冊分が含まれている。 ●XScaleとVGA液晶を装備 SL-C700は、OSにLinuxを採用し、プロセッサにはIntel PXA250(XScale) 400MHz、シャープの開発したCGシリコン液晶(周辺回路をLCDと同じガラス基板上に集積した液晶)ディスプレイを搭載している。解像度は640×480ドット(VGA)で、PDAとしては「超高解像度」ともいえる。 ボディは銀色をベースに、液晶やキーボードまわりに黒を使っており、まあまあの質感。大きさはほぼ手帳サイズだが、色のせいか、実際に手に取るとちょっと重みを感じる。 液晶部分が回転するようになっており、ノートPCのように液晶を内側にして閉じることができる(シャープではこれを「インプットスタイル」と呼んでいる)ほか、液晶面を表にして2つ折りにする(ビュースタイル)こともできる。
液晶部分の回転に合わせ、表示は縦型、横型を切り替えることができる。切り替えの検出は、キーボード側に付いているスイッチと、液晶側にある突起で行なっているようだ。キーボード側には、ヒンジ内側とキーボードのそばに1つずつスイッチがあり、液晶部分を内向きにして閉じると両方のスイッチが入り、液晶部分を外向きにして閉じるとヒンジ側のスイッチのみがオンになるようになっている。これにより、現在の状態を判別し、表示の縦横を切り替えるわけだ。なお、切り替え自体はソフトウェアで行なうようになっており、筐体の状態とは別にメニューから切り替えを指示することも可能。 この回転部分だが、同様な仕組みを持つクリエPEG-NX70Vなど同様、回転途中ではちょっと不安を感じるものの、通常の状態ではぐらぐらすることもなく、実際の利用では問題はなさそうだ。 キーボードは、シートタイプだが、キートップ部分が盛り上がっており、クリック感もある。サイズ的には、両手で持って親指などで操作するとちょうどいい感じになる。フルキーボードのように指全部を使って打鍵することも不可能ではないが、配列が少し特殊で、ホームポジジョンがかなり右に寄っていることと、キーピッチがあまり大きくないことから、快適な打鍵というわけにはいかない。やはり使い方としては、両手で持って親指で打鍵か、机などに置いて人差し指で打鍵ということになるだろう。
キー配列は、QWERTYキーボードで言えば、Q~Pまでの間に必要なキーを配置したものとなっており、フルキーボードで言えば右側のEnterキーの内側にある記号類に相当するキーがなく、特殊キー(FNキー)を併用して入力するようになっている。また手前側には、アプリケーション起動、カーソル、Cancel、OKキーなどの特殊キーが配置されている。文字入力以外の大方の操作は、この部分の特殊キーで行なえる。なお、ビュースタイルでは、ソフトウェアキーボードや手書き文字認識により入力することができる。 ●ビュースタイル用のスイッチも装備 また、本体の後ろ側(ノートPCなどではコネクタが配置されている部分)には、スクロールやカーソル上下移動のためのシャトルキーと、OK、Cancelボタン、電源ボタンがある。こちらは、ビュースタイルでの利用を想定しているようである。また、この面には、SDカードスロット、IrDAの受発光部などが装備されている。 液晶部分の右側には、5つのシンボルがあり、ここをタッチすることでアプリケーションの起動などが行なえる。同様のボタンがキーボード側にもあるが、こちらは、電源オフの状態からでも利用できる。本体上面のヒンジ部分には、バッテリの充電状態とメール着信を表示するLEDインジケーターがあり、ここはキーボードを閉じた状態でも見ることができる。 本体上部には、CFカードスロット、ステレオヘッドホンジャック(マイク端子兼用)とスタイラスの格納部分がある。CFカードスロットはType 2対応で、無線LANカードやPHS通信カードなどを利用できる。また、ザウルス用にすでに発売されているCFタイプのカメラカードを使うこともできる。
ヘッドホンジャックは、通常のヘッドホンが直接接続できる3.5φのもの(先に発売されたSL-A300は、携帯電話など同じ2.5φのタイプを採用していた)。ここにオプションのマイクなどを装着すると、会議録音なども可能になる。 本体下部には、PCと接続するためのI/Oポートがあり、カバーが付けられている。この部分には、付属のUSBケーブルを装着してPCと通信を行なう。また、このUSBケーブルを使うと同時にACアダプタの接続も可能(別途、後面にもACアダプタジャックは用意されている)。これは、PCと接続しつつ充電するのにも便利。なお、SL-C700には、クレードルは用意されないようである。
バッテリは、取り外し可能なリチウムイオン充電池で、本体背面のフタを開けてセットする。フタはロックできるようになっていて、このロックスイッチがリセットを兼用する。 シャープの情報によれば、フル充電で、連続4時間50分の動作が可能だという。また、液晶をオフにしてMP3ファイルを再生する場合には7時間30分の動作が可能。PDAとして見るとちょっと短い方になる。利用頻度が高い場合には、オプションの充電池を併用する必要があるかもしれない。 ●付属ソフト SL-C700には、CD-ROMが付属する。これにはSL-A300でも採用されていたザウルスショット、ザウルスドライブの機能が含まれている。ザウルスショットは、PC側で画面をキャプチャしSL-C700に自動で転送する機能。ザウルスドライブは、ザウルスをPCからネットワークドライブのように扱う機能。また、Outlookなどとの同期用にPuma TechのIntellisyncが同梱されている。 ザウルスショットは、画面キャプチャだけでなく、テキストやプリンタドライバを使ったアプリケーションからの出力などにも対応する。取り込んだ画像やテキストは、スケジュール画面から日付別にアクセスが可能。 ザウルスドライブは、本体内メモリ(ファイル領域)の特定フォルダ以下と装着したSD、CFカードなどをPC側からネットワークドライブしてアクセス可能にするもの。ドラッグ&ドロップでPC側から簡単にファイルを転送できる。 また、ザウルスのメモリ内容をPC側にバックアップする「バックアップ/リストア」機能もある。 英語版には、Linux版ザウルスが内蔵しているQtPalmtopのデスクトップアプリケーション(Windows上で動作)が付属していて、こちらとの同期ができたのだが、日本語版は、Intellisyncのみで、Windows上で動作するPIMソフトウェアは付属していない。なお、同期先としては、Outlook(97~2002)とPalm用のPalmDesktopが選択可能。 同期の開始は、PC側、ザウルス側のどちらからも可能だが、PC側から開始する場合には、接続を確認するダイアログが表示されるため、ザウルス側から起動したほうが手間が少ない。また、キーボードにあるCalendarキーを押し続けるとシンクロを開始することができる。 ●バッテリ寿命は短いが、Linuxパワーと高精細液晶が魅力 ざっと操作した感じでは、ハードウェアの出来は問題なさそうだ。ソフトウェア面では、アプリケーションの起動や切り替え、表示の縦横切り替えで少し待たされることがあり、PDAとして見るともう少しキビキビ動いてほしいところ。 一番の問題は、やはりバッテリ寿命だろう。CFタイプの無線LANを使っていたところ、1時間程度でバッテリが無くなってしまった。ホットスポットでの利用を考えているなら、オプションのバッテリや充電器を入手しておいたほうがいいだろう。 640×480ドットのVGA液晶は、さすがに細かい表示が可能。特にWWWブラウザ(NetFront)でのWebページの表示などでは、PCと同じようにページアクセスが可能だ。このあたりは、LinuxのパワーとVGA液晶の組合せの威力を感じる部分である。
□製品情報 (2002年12月16日)
[Text by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
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