以前に比べて、ドライブやメディアの価格が下がり、値頃感が出てきたことで、DVD-R/RWドライブやDVD-RAM/Rドライブ、DVD+RW/+Rドライブなどの記録型DVDドライブが人気を集めている。ここ数カ月の間に、各社からより魅力的な新製品が登場したことで、記録型DVDドライブの市場はさらに広がりそうだ。 今回は、今年の秋冬商戦をターゲットに登場した記録型DVDドライブの中でも、注目すべき製品の1つであるパイオニアの「DVR-A05-J」を取り上げることにしたい。
パイオニアから登場したDVR-A05-Jは、DVR-A04-Jの後継となるDVD-R/RWドライブである。DVR-A05-Jの最大のウリは、DVR-A04-Jに比べて、DVD-RとDVD-RWへの書き込み速度がそれぞれ2倍に高速化され、DVD-Rへの4倍速書き込みとDVD-RWへの2倍速書き込みを実現したことだ。 DVD-Rへの4倍速書き込み規格「DVD-R for General Version 2.0 / 4X-SPEED DVD-R Revision 1.0」およびDVD-RWへの2倍速書き込み規格「DVD-RW Version 1.1 / 2X-SPEED DVD-RW Revision 1.0」は、2002年8月にDVDフォーラムで正式に承認された新しい規格であり、まだそれらの規格をサポートした製品は少ない。実際に店頭で販売された製品としては、ソニーの「DRU-500A」に続いて、DVR-A05-Jが2製品目となる。 最近は、日立LGデータストレージの「GMA-4020B」(個人向けに販売されているのはそのOEM向け製品)やソニーのDRU-500Aのように、1台で3種類以上の記録型DVDメディアに対応したDVDマルチドライブやDVDデュアルドライブが人気を集めているが、DVR-A05-Jがサポートする記録型DVDメディアは、従来と同じく、DVD-RとDVD-RWのみである(DVR-A04-Jと同様に、CD-RメディアとCD-RWメディアへの書き込みも可能)。 対応メディアが2種類しかないことは、一見不利に思われるが、3種類や4種類の記録型DVDメディアをサポートしていても、その全てのメディアを頻繁に使うというユーザーはそれほど多くはないと思われる。 自作DVD-Videoなどの配布用として再生互換性が高く、メディア価格も安いDVD-RメディアまたはDVD+Rメディアを利用し、データのバックアップ用などには、書き換え可能で使い勝手のよい、DVD-RWメディアまたはDVD-RAMメディア、DVD+RWメディアのどれかを利用するというのが、最も一般的な使われ方であろう。そう考えれば、DVR-A05-JがDVD-RメディアとDVD-RWメディアしかサポートしていないというのも、大きな問題というわけではない。 DVR-A05-Jには、記録・再生の信頼性を高めるために、さまざまな新技術が採用されている。中でも重要なのが、「液晶チルト機構」、「スマートレーザードライバ技術」、「DRA技術」の3点である。液晶チルト機構とは、ディスクの反りや厚みのバラツキによる記録・再生精度の低下を解消するための機構である。従来の製品では、物理的にディスクを微妙に傾けることで、そうしたバラツキに対処していたが(メカニカルチルト機構)、DVR-A05-Jでは、液晶収差補正素子を利用することで、物理的にディスクを動かすのではなく、光学的に反りや厚みのバラツキを補正している。 スマートレーザードライバ技術は、従来は本体基板上に搭載されていた記録回路を光ピックアップ上に搭載することで、記録時の信号精度を高める技術である。DRA技術は、ベースの上に金属板をゴムで固定することによって、ディスクの高速回転時の振動を吸収する技術である。DRA技術は、パイオニアのDVD-ROMドライブでは従来から採用されていたが、記録型DVDドライブでの採用は、DVR-A05-Jが初めてとなる。また、DVR-A05-Jでは、駆動回路の省電力化がはかられ、発熱が減っているため、冷却ファンが省略されていることも特筆できる。
DVR-A05-Jは、パッケージ内容も充実している。まず、アプリケーションソフトについては、クイックフォーマット対応の統合型ライティングソフト「インスタントCD+DVD LE」(VOB/プロトン製)やDVD-Videoの作成もサポートした統合型ライティングソフト「Drag'n Drop CD Plus DVD Edition(デジオン/イージーシステムズ製)をはじめ、DVDオーサリングソフト「DVDit! SE」(ソニック・ソルーションズ製)、DVDオーサリングソフト「MyDVD」(ソニック・ソルーションズ製)、動画編集ソフト「ShowBiz」(アークソフト製)、DVDプレイヤーソフト「PowerDVD XP」(サイバーリンク製)の合計6本ものソフトが付属している。 また、バンドル版のアプリケーションでは製本されたマニュアルは付属していないのが普通だが、DVR-A05-Jには、専用解説本「キミにもできる! DVD」(インプレス発行)が付属しているので、記録型DVDドライブを初めて購入するという人でも、すぐにDVDドライブを使いこなすことができるだろう。
DVR-A05-Jは、従来機の2倍の書き込み速度をサポートしていることが最大の魅力だ。そこで、DVD-Rメディアへの4倍速書き込みとDVD-RWメディアへの2倍速書き込みの性能を検証するために、アイ・オー・データ機器のDVR-ABH2やメルコのDVM-4222FB(サンプル品)をと同じテスト環境で、同じ合計4.17GBのファイル(フォルダ数1,299、ファイル数15,350)を書き込むのにかかる時間を計測した。 なお、DVD-Rメディアへの4倍速書き込みを行なうには、従来のDVD-Rメディアではなく、新たに規定されたDVD-R for General Version 2.0/4X-SPEED DVD-R Revison 1.0規格に準拠したDVD-Rメディアが必要になる。ライティングソフト側でメディアの種類を自動判別して書き込み速度を決めるので、基本的には従来のDVD-Rメディアに4倍速で書き込むことはできない。パイオニアでは、DVR-A05-Jの登場にあわせて、4倍速書き込み対応のDVD-Rメディア「DVS-RP470A」(データ用)の発売を開始している。そこで、DVS-RP470Aを利用して、書き込みにかかる時間を検証した。 また、DVD-RWメディアへの2倍速書き込みに関しても、従来のDVD-RWメディアではなく、DVD-RW Version 1.1/2X-SPEED DVD-RW Revision 1.1規格に準拠したDVD-RWメディアが必要になる。こちらもパイオニアから「DVS-RWP470A」というデータ用メディアが発売されている(今回の検証では、パイオニアのビデオ録画用2倍速対応DVD-RWメディアを利用した)。 ライティングソフトとして付属のインスタントCD+DVD LEを用い、オンザフライ方式で直接メディアに書き込みを行なった(シミュレーションも行なわない)。その結果は下の表にまとめたとおりだ。参考のために、DVR-ABH2やDVM-4222FBでの結果もあわせて載せている(ただし、DVR-ABH2とDVM-4222FBについては、ライティングソフトとしてB's Recorder GOLD5 BASICを用いている)。 結果を見ればわかるように、DVR-A05-Jの4倍速書き込みでは、4.17GBのデータの書き込みが15分16秒という短時間で完了している。同じ4倍速書き込みに対応したDVM-4222FBと比べても、書き込み時間は1分46秒短い(ライティングソフトが異なるので、その影響も考えられるが)。DVD-RWメディアへの2倍書き込みについても、DVR-A05-Jが好成績をおさめている。
DVR-A05-Jは、バンドルアプリケーションも充実しており、DVD-Videoの作成が可能なオーサリング機能を備えたソフトだけでも、Drag'n Drop CD Plus DVD Edition、DVDit! SE、MyDVDの3つが付属する。それらのソフトは、機能やユーザーインターフェースが異なるので、用途に応じて使い分けるのがよいだろう。ここでは、初心者でも簡単に使えるDrag'n Drop CD Plus DVD Edition(以下Drag'n Drop)を取り上げる。 Drag'n Dropは、デスクトップ上のボックスにファイルをドラッグ&ドロップするだけでファイルの書き込みが行なえるという、初心者にもわかりやすい統合型ライティングソフトで、DVD-Videoの作成機能も装備している。Drag'n Dropを使って、DVD-Videoを作成するには、「映像ファイルから作成する」「DVカメラからダイレクトに作成する」「Video Layout Windowを利用して作成する」の3種類の方法がある。 「映像ファイルから作成する」方法では、あらかじめ用意しておいた映像ファイルをVideoBOXにドラッグ&ドロップするだけで、自動的にDVD-Video形式でメディアに書き込んでくれるため、非常に簡単だ。 「DVカメラからダイレクトに作成する」方法も、同様に、DVカメラからキャプチャを行ない、自動的にシーンチェンジを検出してメニューを作成し、MPEG-2エンコード後、DVD-Video形式で書き込んでくれる。映像の不要な部分をカットすることなどはできないが、DVテープに記録されている素材をそのままDVD-Videoにして保存しておきたいという用途にはぴったりだ。録画モードは、ビットレート8Mbpsの高品質(約1時間の映像を記録可能)とビットレート4Mbpsの長時間(約2時間の映像を記録可能)を選べる。 Video Layout Windowを利用すると、動画だけでなく、静止画をDVD-Video形式で記録したり、映像から不要な部分をカット(トリミング)することも可能だ。メニューの背景を選択することや、BGMを流すこともできる。ただし、タイトルやチャプタータイトルの文字を入れる機能は用意されていない。 DVDit! SEを利用すれば、階層メニューの作成など、より本格的なDVDオーサリングを行なえるが、それほど凝るつもりがないのなら、Drag'n DropのVideo Layout Windowが手軽で便利だ。
DVR-A05-Jは、サポートしているメディアはDVD-RメディアとDVD-RWメディアのみだが、現時点でトップクラスの記録速度と高い信頼性、そして実売3万円を切るという手頃な価格を実現していることが大きな魅力だ。DVR-A05-Jの実売価格は、DVR-A04-Jの登場当初と比べてもかなり安く、コストパフォーマンスは非常に高い。また、バンドルアプリケーションも豊富で、解説本「キミにもできるDVD」が付属しているので、初めて記録型DVDドライブを購入するという人にもお勧めだ。特に、録りためたVHSテープやDVテープをDVD-Videoにして整理・保存しておきたいという用途には最適であろう。 □関連記事 (2002年11月15日)
[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]
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