IDF2002 Fallレポート

Hyper-Threading Technologyに対応したHTT Pentium 4 3.06GHz
〜マルチスレッドに対応したアプリで15〜22%の性能向上

オッテリーニ氏の基調講演でのHTテクノロジのデモ

会期:9月9日〜12日(現地時間)
会場:San Jose Convention Center



 IDF 2002 Fallの基調講演において、Intel社長兼COOのポール・オッテリーニ氏は、Hyper-Threading Technology(以下HTテクノロジ)に対応した、HTテクノロジ対応Intel Pentium 4プロセッサ(Intel Pentium 4 Processor with HT Technology、以下HTT Pentium 4)の3.06GHzを、第4四半期にリリースすることを明らかにした。

 HTテクノロジは、1つの物理的CPUを論理的には2つに見せかけることで、CPUリソースの実行効率を高め、CPUの処理能力を上げていくという手法だ。本レポートでは、IDFの会場で明らかになったHTT Pentium 4 3.06GHzの詳細と、情報筋から漏れ伝わってきたHTテクノロジのパフォーマンスに関するレポートをお届けする。

●複数のスレッドを同時に1つのCPUで実行できるようにするのがHTテクノロジ

 HTテクノロジは、とどのつまりPentium 4が使い切っていない演算ユニットなどのリソースを、骨までシャブリつくそうというアプローチだ。

 Pentium 4のマイクロアーキテクチャであるNetBurstマイクロアーキテクチャでは、20ステージにも細分化されたパイプライン構造をとっている。この20ステージ構成のパイプラインは、高クロックを実現するには有利なのだが、分岐予測が失敗した場合には大きなペナルティがあるし、キャッシュにミスヒットした場合には、同じくペナルティが大きくなる。たとえば、キャッシュがミスヒットした場合、パイプラインはそこで1度停止し、メモリからデータが読み込まれるまでストールすることになる。そうなると、パイプラインには処理が詰まっていない状況となり、つまり、CPUのリソースがあり余っている状況になる。

 そこで、HTテクノロジでは、論理的にCPUが2つあるように見せかけることで、この余っているリソースを有効利用しようとする。具体的には同時に2つのタスクを走らせて、1つのタスクが使っていないリソースをもう一方のタスクが利用し、演算ユニットなどリソースの利用率を高める。

HTテクノロジのメリットを説明するスライド

 たとえば左のスライドで説明すると、通常、シングルスレッドのCPUで、マルチタスクのOSを利用すると、図の中段のように、2つのスレッドが交互に実行されるイメージになる。これをHTテクノロジを導入すると、一方のスレッドが利用していないリソースを、他方のスレッドが利用することが可能になり、結果的に2つのスレッドを交互に処理する場合に比べて処理にかかる時間が短縮される(つまり処理能力が向上する)。

 ただし、これには条件がある。何よりもソフトウェア側がマルチスレッドで利用できなければ意味がない。最初の条件はOSがマルチスレッドをサポートしていることだ。これに関してはWindows XPがすでに対応している。このためWindows XP上で、複数のアプリケーションに同時に何らかの処理をさせた場合には、なんらかの性能向上が期待できるはずだ。2つ目はアプリケーションそれ自体が対応することだが、これに関しては若干のハードルがある。これまでマルチスレッドに対応してきたアプリケーションは、サーバー、ワークステーション向けがほとんどで、PC用でマルチスレッド処理に対応しているアプリケーションは非常に少なく、この点をどうクリアするかがHTテクノロジ普及の鍵となる。

●プラットフォーム側でも対応が必要、マザーボードはFMB2ガイドラインに準拠が条件

 HTT Pentium 4 3.06GHzは、情報筋によればPentium 4 2.80GHzと同じCステップのNorthwoodコアを利用して生産されることになるという。システムバスは533MHz(133MHzのQDR)、L2キャッシュは512Kバイト、L1キャッシュは12K Micro Ops+8KBデータキャッシュという構成となる。そういう意味では、HTテクノロジが有効になる以外は、これまでのPentium 4と大きな違いはない。

 だが、熱設計やマザーボードやケースの対応という点では注意が必要になる。もっとも大きな変更点として、HTT Pentium 4では、マザーボードがNorthwoodに対応したデザインガイド(FMB、Flexible MotherBoard)のうち、より厳しい仕様のFMB2に対応していることが条件となる。NorthwoodのFMBはFMB1(TDPが64W、Iccが60A、Tcaseが摂氏70度)と、FMB2(TDPが76W、Iccが70A、Tcaseが摂氏64度)があるが、HTT Pentium 4を利用する場合には後者に対応している必要がある。

 なぜかと言えば、HTT Pentium 4は、HTテクノロジによりリソースの利用効率があがるので、それだけトランジスタがこれまでよりも忙しく働くことになり、消費電力はHTテクノロジが無効な場合に比べて増えるからだ。このため、消費電力が増えれば、電流が増えるわけで、電流容量を示すIccはFMB1の60Aから70Aに増えている。

 OEMメーカーにとっては、FMB2を満たすマザーボードを使えばいいだけなので問題ではないが、自作ユーザーにとっては現在のマザーボードが使えないかもしれないのだから、気になるところだ。だが、マザーボードを見ただけではFMB1の仕様に従っているのか、FMB2なのかはわからないし、マザーボードメーカーも情報を公開していない。したげって、マザーボードメーカーが対応状況を明らかにするまでは、既存のマザーボードでHTT Pentium 4が利用できるかどうかは全くわからない状況だ。

 また、HTT Pentium 4ではケースも新しくする必要があるかもしれない。というのも、HTT Pentium 4の仕様では、TaないしはTairと呼ばれるケース内の温度が、従来の摂氏45度から摂氏42度へと下げられている。一般的に熱設計の指標とされている熱抵抗値は、Tc(CPUの温度)−Ta(ケース内の温度)÷TDPで求められる。熱抵抗値が低ければ低いほど熱設計は難しいので、熱設計の難易度を下げるには、分子であるTDPを下げるか、分母を大きくするためにTcをあげるか、Taを下げればよい。

 今回は、Taを下げるというアプローチがとられたのだが、この結果は、ケース内の温度はこれまでよりも摂氏3度下げた状態を維持しなければならなくなった。このため、ケースにより大型のファンを取り付ける、あるいは風の流れを研究して温度が下がるような風の通り道を確保するなどの配慮が必要になる。それでもケース内温度摂氏42度が実現できなければ、ケース自体を換えるしかない。

 このほか、HTT Pentium 4を利用するには、マザーボードのBIOSがHTテクノロジに対応している必要がある。第一にBIOSレベルで、HTテクノロジの有効・無効を選択することを可能にする必要がある。レガシーのOS(Windows 9xなど)を利用する場合や、HTテクノロジと非互換のアプリケーションを利用する場合には、そうしたオプションが必要となる場合があるからだ。また、ACPIやMPテーブルへの対応など、マルチスレッドをサポートすることで影響を受ける部分への対応などもBIOSレベルで行なう必要がある。これらは今後マザーボードベンダなどから提供されることになるだろう。

ケース内温度はこれまでの摂氏45度から摂氏42度へと下げられる、2003年の後半には摂氏38度というラインも検討されている Iccは60Aから70Aに引き上げられる。これは消費電力があがったのに対応するため HTテクノロジではBIOSの対応も必要になる

●マルチスレッドに対応したアプリケーションでは15〜22%程度の性能向上とOEMメーカーに対して説明

 さて、気になるHTテクノロジの効果だが、今回のIDFではオフィシャルには「最大25%の性能向上を期待することができる」(オッテリーニ氏)と説明されたことぐらいで、実際のアプリケーションでどの程度のパフォーマンスゲインがあるのかは説明されなかった。

 情報筋によれば、IntelはすでにOEMメーカーに対してHTテクノロジのパフォーマンスに関して説明しており、それによればAdobe After Effectsを利用した場合で15%程度、Windows XP Movie Makerで17%程度、Magix MP3 Makerで20%程度、XMPEG with DivXで22%程度の性能向上が認められると説明がなされている模様だ。このほかにも、2つのアプリケーションを同時に処理をさせてパフォーマンスを計測すると、より大きな効果が得られるという説明がなされているという。

 すでに述べたように、HTテクノロジの普及の鍵は、なんといってもマルチスレッドに対応したアプリケーションが増えることだ。確かに、複数のアプリケーションをマルチタスクで走らせればメリットはあるが、シングルタスクで利用することもまだまだ少なくない。だが、もともとHTテクノロジは2003年のPrescottで有効にされる予定だったので、ISV側の準備はまだ十分とはいえなず、マルチスレッド対応アプリケーションが増えたかといえばまだまだというのが現状だ。このあたりを今後どうするかが1つの鍵となるだろう。

 そして、もう1つ大事なことは、ベンチマークプログラムの存在だ。HTテクノロジのようにアプリケーション側が整わなければ性能向上が確認できない技術では、登場までにベンチマークプログラムがきちんと準備されているかも重要になる。Intelは、これで痛い目に遭ったことがある。たとえば、Intel820+Direct RDRAMの時だ。あの当時、RDRAMのメリットを発揮させるようなベンチマークはほとんどなく、メディアの評価もさんざんだった。そうした事態を繰り返さないためにも、HTT Pentium 4のリリースまでにベンチマークソフトベンダの準備が整うかどうかも、HTテクノロジの行方を左右することになるだろう。

□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2002/
□関連記事
【9月10日】Intel Developer Forum Conference Fall 2002 基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0910/idf02.htm

(2002年9月12日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング / Photo by DOS/V PowerReport編集部]


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