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Baniasのダイ面積は100平方mm程度、SRAMが半分を占める


●キャッシュSRAMばかりのBanias

 Baniasのダイサイズ(半導体本体の面積)がほぼ判明した。Intelは、すでにBaniasのA1ステップのサンプルチップを、配布している。それを入手したある情報筋によると、Baniasのダイは100平方mm前後だいう。ダイ自体は長方形のようだ。

 これが本当だとするとBaniasのダイは、同じ0.13μmプロセスのモバイルPentium 4-M(Northwood:ノースウッド)のダイサイズ(131.4平方mm)より25%ほど小さい。これは、Baniasのロジック回路+L1キャッシュの面積が、Northwoodの40%程度しかない、非常にコンパクトなCPUであることを示している可能性が高い。

 どうしてかというと、BaniasのL2キャッシュサイズが、Northwood(512KB)の2倍の1MBだからだ。現在のNorthwoodコアでは、512KBのL2キャッシュがダイの20数%、30平方mm弱程度を占めている。つまり、L2以外の面積は100平方mm程度ということになる。

 BaniasとNorthwoodのSRAMセルサイズが同じだとすると、BaniasのL2キャッシュの面積は55~60平方mm程度となる。とすると、Baniasの場合はダイの55~60%がL2キャッシュSRAMで占められることになり、L2以外の部分の面積は40~45平方mm程度になる。つまり、Baniasは、ダイ面積の半分以上をSRAMが占めるCPUということになる。

 というわけで、Baniasのロジック回路+L1キャッシュ部分のトランジスタ数は、Northwoodと比べると、かなり少ないと見られる。情報のダイサイズが正しいとすると、L2キャッシュを除くコア部分の面積はNorthwoodの40~45%程度、つまり半分以下しかないと推測される。もっとも、Baniasは「Special Sizing Techniques」と呼ぶテクノロジでCPU設計を回路レベルから縮小している。そのため、面積は少ない割りにトランジスタ数は比較的多いと思われる。

 Northwoodのコア部分のトランジスタ数は2,300~2,500万程度と見られるため、Baniasのトランジスタ数は1,200~1,800万のあたりのどこかと推測される。Pentium IIIよりは多いがPentium 4よりはかなり少ないトランジスタ数のコア、おそらく、それがBaniasだ。CPU内部で、動作時の熱の主な発生源はロジック回路部分なので、これはモバイル向けには理にかなった設計だ。

●電力密度はNorthwoodとほぼ同等か

 Baniasの1MBというL2キャッシュサイズは、電力密度(Power Density)から逆算して設定された可能性が高い。なぜかというと、BaniasとPentium 4-Mでは、ダイサイズや消費電力が異なるにも関わらず、電力密度がほぼ同じになるからだ。

 電力密度、つまり単位面積当たりのCPUの発熱量は、消費電力をダイサイズで割ることで算出できる。TDPを、現在推定されるダイサイズで割ると次のようになる。

 TDPダイ電力密度
Northwood35W131.4平方mm約26W/平方cm
Banias24.5W100平方mm約24.5W/平方cm

 電力密度はPCの放熱機構を設計する場合に、非常に重要になる要素だ。もし、Baniasの電力密度がNorthwoodとほぼ同じだとすると、それは意図的なものと考えるべきだろう。SRAMは、ロジック回路と比べると“クール”、つまり消費電力が少ないため、SRAMを増やして熱密度を下げたものと推測される。

 90nm版Baniasである「Dothan(ドーサン)」のL2キャッシュが2MBへとさらに倍増するのも、同様の理由からと推測される。つまり、CPUコアが小さくなる分、よりSRAMを増やして、熱を分散させる必要があるわけだ。L2キャッシュSRAMは、ラジエータ的な役割を果たすと考えてもいいかもしれない。

●Banias 1.6GHzはNorthwood 2.4GHzと同性能?

 IntelはBaniasの性能も明らかにし始めた。IntelがOEMに行なっている説明によると、MobileMark2002でバッテリ駆動モード時の性能を比較した場合、Banias 1.6GHzの方がPentium 4-M 2.4GHzより18%程度性能が高かったという。また、MobileMark2002でのバッテリ駆動時間(8セル)では、Pentium 4-M 2.4GHzが3時間超程度であるのに対してBanias 1.6GHzは5時間を達成できるという。これは、A0ステップBaniasでの実測性能だとIntelは説明しているらしい。

 ここでミソはAC電源時のパフォーマンスはあえて言っていない点。Baniasはモバイル利用なら、性能も駆動時間もPentium 4-M以上になるとうたっているわけだ。ちなみに、バッテリ駆動時はPentium 4-Mは2.4GHzと1.2GHzの間で2段階に周波数が切り替わり、Baniasは1.6GHzと600MHzの間で多段階に周波数が切り替わると見られる。

 いずれせにせよ、Baniasと現状のNorthwoodでは、パフォーマンス/クロックはBaniasの方が高いのは確からしい。より効率の高いアーキテクチャというわけだ。Baniasのトランジスタ数が推測の通りだとすると、これはメチャクチャにトランジスタ効率の高いアーキテクチャということになる。

 また、そのことは、IntelのメインストリームのCPUアーキテクチャのあり方に疑問もつきつけることになる。というのは、デスクトップCPUの系列は、ひたすらトランジスタ数を増やすことで性能向上を図ってきたからだ。より少ないトランジスタ数で、消費電力も抑えながら性能を上げられるとすれば、その方がアーキテクチャ的によいという話になりかねない。

●Baniasのピン数はPentium 4-Mと同じ

 Baniasの現在のサンプルのパッケージはμFCPGAで、パッケージサイズはPentium 4-Mと同じ、ピン数も同じ478ピンで、Pentium 4-Mのソケットにそのまま挿せてしまいそうだ。ただし、ピンの欠き位置はPentium 4-Mとは2ピンだけ異なる。また各ピンの信号定義も異なるため、両用ソケットはできないらしい。

 ちなみに、Baniasは通常電圧版はμFCPGAと、より薄型のμFCBGA(479ボール)で提供される。Baniasの低電圧(LV)版と超低電圧(ULV)版は、μFCBGAオンリーとなる。このあたりはPentium III-Mと変わらない。

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(2002年8月20日)

[Reported by 後藤 弘茂]

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