大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

最悪の赤字決算、ソーテックは復活できるか?


●4日連続の全面意見広告

 今年4月8日、全国紙に「社長 魂の叫び」という広告が掲載された。

 出稿主は、ソーテック。

 その広告には、社長から社員に対する厳しいメッセージが書かれていた。

 「一昨年ソーテックは念願の上場を果たしました。しかしながら、そのことが皆さんの気持ちに弛緩を生み出していないか、再度見つめ直してほしい。なんだか妙な形式主義、組織主義が生まれ出して、我が社は窮屈になりました。会議の時間は長くなり、ものごとひとつ決めるにも書類の枚数ばかりが増え、即断即決で動き回る幹部も見えなくなりました。(中略)おそれるな、やんちゃであれ、抜け駆けをせよ。(中略)奇抜なアイデアをどんどん形にして、また世の中をあっと言わせましょう。株式会社ソーテック 大邊創一」

 翌日9日には、「電話一台しかないんか!」、10日には「私たちは今年も失敗します」、11日には「百円でも精神に戻れ」のタイトルで、同様に全面広告を掲載した。「社長 魂の叫び」を含めて4日連続のメッセージ広告である。

 ソーテックの大邊創一社長は、「知人からは、とうとう頭がおかしくなったか、とか、社員に訴えるならば、わさわざ高い広告費用を支払わず、メールにすればいいだろう、などといわれた」と笑う。

 「だが、4月の新年度の気構えを発表すると同時に、あえてもう後戻りができない宣言をした」と、この広告が瀬戸際に追いつめられた同社の「不退転の決意」であることを明らかにする。

 今年6月の株主総会では、役員の一新を行ない、現任取締役で残るのは、大邊社長と田中耕一専務だけ。その田中専務も取締役への降格という図式になっている。執行役員制度の導入を前提とした移行措置という側面もあるようだが、それでも驚くべき刷新といえる。しかも、役員の任期は従来の2年間から1年に短縮、成果主義の側面を極めて明確にした。

 一方、これまで筆頭株主であるキョウデンが保有していた普通株式36,195株のうち20,000株を、アクティブ・インベストメント・パートナーズに譲渡、筆頭株主が同社へと移行、これにより経営体質の強化に乗り出す考えを示した。

 アクティブ・インベストメント・パートナーズは、三井物産などが参加する投資ファンドを運用する独立系投資会社で、カタログ販売大手のニッセンに投資、企業価値を1年で5倍にまで高めた経緯を持つ。その一方で、キョウデンは、TWO-TOPを運営するフリーウェイや、ナカヌキヤを運営する中川無線、ショップ99を運営する九九プラスといった流通分野への出資を強化しており、ソーテックへの投資が行なわれた4年前とは様相が大きく変化していた。

 「キョウデンの投資戦略は、ソーテックの取引各社と競合する企業への投資でもあり、昨年秋以降、その関係について聞かれることが増えてきた。今回、アクティブ・インベストメント・パートナーズが筆頭株主になることで、当社の透明度を高めることができる」と大邊社長は説明する。

 「製品デザインや製品企画に口を出すつもりはない」(アクティブ・インベストメント・パートナーズ)というように、企業価値の向上がアクティブ・インベストメント・パートナーズの基本的な役割だ。

4日連続の全面広告


●最終損失47億円の赤字決算

 ソーテックは、2002年3月期決算において、売上高で前年比48.2%減の436億6,100万円、営業損益でマイナス51億4,100万円、経常損益でマイナス43億4,700万円、当期純損益でマイナス47億2,000万円という最悪の決算内容に落ち込んだ。

 主力のデスクトップパソコンは、254,500台(前年比47.8%減)、309億4,200万円(同52.3%減)と大幅な落ち込みを見せた。ノートパソコンをあわせた合計でも、348,800台(同44.2%減)、430億2,900万円(同48.9%減)となっている。

 「最終損失はマイナス47億円となっているが、むしろ税金等調整前当期純損失がマイナス82億円に達していることを重視し、厳しく対処していきたい」(同社)との姿勢を見せている。

 同社では、こうした最悪ともいえる決算内容を、5つの要因が影響していると自己分析した。

 第1点目には、年初からの生産、出荷計画、販売計画、製品計画の見誤りである。これはソーテックに限らず、パソコンメーカー各社に共通したものであった。業界では当初、市場全体で2桁増の伸びを予測していたものが、結果としては2桁減のマイナス成長。これが、生産計画の見誤りとして各社の事業計画の下方修正につながった。

 ソーテックも例外ではない。いや、それどころか、アクセルを吹かしはじめたばかりの体制だっただけに、歯止めがきかなかったとさえいえるだろう。

 実際、昨年6月末時点での在庫金額は110億円規模まで膨れ上がり、2カ月分の在庫を抱える状態にまで陥ってしまったのだ。その段階で部材の仕入れを止め、在庫の販売に力を注ぐ状態に陥ったのも同社の経営状況の悪化につながっている。

 第2点目は、個人消費低迷を背景にしたパソコン販売不振による売り上げ低下である。Windows XP発売前のメモリアップキャンペーンの実施などのテコ入れ策を講じたものの、これで2億円の損失を計上するなど、販売不振およびその対策でマイナス8億円を計上したと分析している。

 第3点目には、売上高1,000億円体制を前提とした販売管理費、広告宣伝費などの出費および計画調整、修正の遅れがある。

 1,000億円体制に向けた人員体制の確立や積極的な広告宣伝を展開した結果、販売管理費は年間92億円に上昇したが、「売上高から見れば、販売管理費の許容範囲は72億円。約20億円が風呂敷を広げすぎた差額」と自己反省する。

 だが、これに関しては、すでに下期の段階で大幅な是正を実施しており、改善の方向に向かっているという。

 広告宣伝費は上期には17億円を投資したものの、下期は4億円と大幅に圧縮。人件費の削減や、本社フロアの縮小、分散していた事務所の統合などによる賃料の削減効果もあって、上期には売上高販管費比率が26%だったものを下期には16%台に圧縮、今年度は最悪でも14%弱にまで引き下げる計画だ。

 第4点目には、売上計画未達成による旧製品の在庫評価損。昨年6月末時点での110億円の在庫を、9月末には58億円にまで大幅に削減することに成功したが、これに伴い販売店に支払われる在庫補填費用、値引き対策など、評価損を含めた在庫に関わる部分だけで36億円のマイナスが出たと見ている。

 そして、5点目は、出資会社であるディスプレイ製造会社Korea Data Systems(KDS)の会社整理申請に基づく引当金の影響。有価証券の整理や貸し倒れなどの影響で18億円のマイナスになっている。最後の1点は、経営とは別の外部要因であるが、これも同社の経営悪化に大きくのしかかっている。


●10カ月ぶりにTV CMも復活

大邊創一社長
 では、ソーテックは、これだけの業績悪化の状態から復活できるのだろうか。

 それにはいくつかの解決すべき課題があるだろう。

 経営体質の改善という点については、「昨年の失敗に関しては、すでに問題点のブレイクダウンがすすんでおり、社内反省が行なわれている。これが社員の意識として浸透している」(アクティブ・インベストメント・パートナーズ)と、すでに一歩を踏み出していることを評価する声もある。これが数字にどうつながるかは、まずは上期の業績で判断することができるだろう。

 ソーテックでも、「前年並みとなる月3万台の出荷で推移したとしても、わずかではあるが利益が出せる体質にまで改善してきている」と、早くも体質改善の効果が出ていることを示す。そうした点では、体質改善が進みつつあるといえそうた。

 むしろ問題は別のところにある。

 ソーテックのパソコンには、かねてから、製品品質の悪さ、サポート体制の悪さが指摘されてきた。この改善が行なわれない限り、ソーテックのパソコン事業の成長には限界がある。

 この点に関して、大邊社長は次のように説明する。

 「製品品質については、初期不良率を大幅に改善させている。また、昨年、横浜サービスセンタを立ち上げ、サポート体制も充実した。サポート評価に関しては、まだ順位が低いが改善率では圧倒的なナンバーワンだと自負している。広告でサポート体制が改善したと宣言しても、ユーザーが納得していただけるところまできたことの自負の表れだと認識してもらっていい」。

 冒頭の4日連続の全面広告の2日目に、「電話一台しかないんか!」で始まる広告は、サポート体制の強化を示したものだ。

 「電話一台しかないんか!と怒鳴られたのは一昨年のことでした。(中略)百回かけて、一回つながるかどうか、という最悪の状況。(中略)サポート専門会社を立ち上げ、250人体制のコールセンタを運営し、一貫した修理体制を実現した横浜サポートセンタを設立するなど、数十億円の投資と努力が実って、今では業界でもトップクラスのサポート力を持つに至ったと自負しております。」

 この広告を掲載していながら、サポート体制が他社に比べて貧弱では、企業そのものの姿勢を疑われかねない。つまり、それだけの決意を持った広告だといえる。

 従来の出荷体制が戻ったときに、このサポート体制が維持できるかどうか、今後の課題といえるだろう。

 そして、最後にソーテックが、今後どんな製品を投入するかといった課題がある。

 大邊社長のコメントをまとめると、メインストリームとなる製品の基本的な考え方は、コストパフォーマンス路線。他社の同等性能の製品に比べて5万円以上安い価格の製品を投入する、あるいは同等価格で3〜5割スペックの高い製品を用意すると豪語する。そして、6月から7月にかけて、大手メーカーとタイアップした新たなコンセプトの製品も相次ぎ投入するという。

 同社では、今年度の事業目標を明確にはしていないが、「少なくとも50万台、できれば60万台を目指す」と話す。

 いよいよ25日(先週土曜日)からは、テレビCMも開始した。昨年7月以来のテレビCMである。

 「昨年下期の広告宣伝費は決して適切だとは思っていない。ユーザーに我々のメッセージを伝えるためにも、今後はテレビCMは積極化したい」と大邊社長は話す。

 復活第1弾のテレビCMは、「自信作ができました」で始まる。

 これが、自信をもった事業展開につながるのか。いよいよソーテックの巻き返しが始まった。

□ソーテックのホームページ
http://www.sotec.co.jp/
□平成14年3月期通期決算説明スライド(PDF)
http://www.sotec.co.jp/ir/data/20020527.pdf
□ソーテック、CMライブラリ
http://download.sotec.co.jp/download/cm/
□関連記事
【5月22日】ソーテック、出荷遅延の影響などで51億円の赤字
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0522/sotec.htm

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(2002年5月27日)

[Reported by 大河原 克行]


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