プロカメラマン山田久美夫の2002 PMA フォトレポート 新規格&ミニラボ編

Exif PrintとKodakの新画像フォーマットを公開
~ミニラボ用プリンタも多数出品

2月24~27日(現地時間)開催




 米国最大の写真機材ショーである「PMA2002」。このイベントはもともとPMAという団体が開催したセミナーが発端となって製品展示型のイベントへと発展したもの。そのため、近年は新製品発表などが主体となっているが、それと同時に新規格の公開や、次期の展開をアピールする場という側面も持っている。

 そこで最終回は、デジタルフォトを中心とした新規格や新展開などについてレポートしよう。


●JEITA 、デジタルカメラの新フォーマット「Exif 2.2(Exif Print)」を公開

 電子情報技術産業協会(JEITA・旧 日本電子工業振興協会)は、今回のPMAで、デジタルカメラ用フォーマットの新規格「Exif 2.2」を正式公開した。これはデジタルカメラで記録する画像データフォーマット「Exif」の最新バージョンだ。

 本規格は「Exif Print」という愛称でも呼ばれており、従来の「Exif 2.1」に対して、プリント時により的確な処理がしやすいよう、さまざまな撮影情報やカメラの設定情報がタグに記録されているのが最大の特徴だ。

 プリントを重視した規格としては、昨年、セイコーエプソンが「Print Image Matching」(PIM)を提唱したわけだが、今回の「Exif2.2」はプリント画質の向上というPIMの考え方を取り入れてデータの標準化を図ったもの。もちろん、PIMとは内容や効果、方向性もやや異なるが、同社もその規格作りに参加している。

 この規格を簡単にいえば、撮影時のカメラの設定情報をJPEGのタグに共通規格として記録しておくことで、プリント時に、より撮影意図に近いきれいなプリントを作れるようにしたもの。

 たとえば、やや露出アンダー気味のデータをプリントするときを例に取るとわかりやすい。

 つまり、そのカットが、オートで撮影した結果としてアンダーになった(失敗)のか、それとも作者が意図的に露出補正機能を使ってアンダーにしたのかによって、プリント時に明るさを補正するべきか、補正しない方がいいのかという判断が分かれるわけだ。そのため、撮影時の設定情報(オートか、露出補正か)をタグに情報として記録しておくことで、プリンタがそれを参照し、判断しやすいようにしたものだ。

 基本的にその撮影情報をプリンタがどのように活用するのかはプリンタ側に委ねられており、その点がPIMとの大きな違いになるわけだが、一般に前者は自動補正、後者は明るさの補正をせずにプリントされるという。

 このExif 2.2は、今回の PMAで発表された日本メーカーの新製品の多くがすでに採用しており、今年発売される機種の大半が搭載する模様。また、対応プリンタも今後続々登場することが予想される。なお、対応機には「Exif Print」のロゴがパッケージやカタログなどに表示されることが多いので、今後はそれを参考にカメラやプリンタを選ぶといいだろう。

 なお、この「Exif2.2」の細かな仕様については英文ながらもPDFファイル( http://tsc.jeita.or.jp/avs/data/cp3451.pdf )で公開されているので、そちらをご参照いただきたい。


●DIMA、「Point and shoot」の結果を公開

クラス メーカー名・モデル名 価格
$100以下 ZORAN CamMini $100以下
$100~199 東芝 PDR-M11 $199
$200~299 富士フイルム FinePix2600Z $249
$300~499 コダック DX4900 $399
$500~699 エプソン PhotoPC 3100Z $599
$700~899 ミノルタ DiMAGE 5 $899
$900~1,299 ソニー DSC-F707 $999
$1,300~2,499 ミノルタ DiMAGE 7 $1,299

 PMAのデジタルイメージング分科会ともいえる「DIMA」は、毎年恒例となったデジタルカメラの撮り比べである「Point and Shoot」を実施。PMA会場内でその結果を公開していた。これは、同じ被写体を同価格帯のデジタルカメラで撮影しプリントしたものを比較し、DIMA会員による投票により各クラスでのトップを表彰するというもの。

 撮影はスタジオ内でライトを使ったモデル撮影1種類のみで、撮影時の表情もまちまちなのだが、主催者側がこのような撮り比べをするあたりは、自由の国アメリカらしいところ。

 各価格帯別のトップは表の通りだが、必ずしも、現行全機種がノミネートされているわけではない。また、高価格帯のモデルでは、2、3機種のみがノミネートされているので、ひとつの参考としてご覧いただきたい。


●Kodak、高画質指向の独自JPEG規格とミニラボ用インクジェットプリントを発表

 Kodakは前夜レポートでお知らせした、399ドルの400万画素2倍ズーム機「DX4900」のほか、いわゆるプロ用分野で目新しい展開を図っていた。

 なかでも注目されるのが、JPEGの便利さとRAWデータの高画質との両立を図った新フォーマット「ERI-JPEG」といえる。

 通常のデジタルカメラはJPEGフォーマットがメインになっているが、デジタル一眼レフなどで、より高画質を得たい場合には、「RAWデータ」と呼ばれるCCDの生データを保存できるモデルも多い。しかし、RAWデータはJPEGファイルに比べて、画像のクォリティや後処理時の自由度も格段に高い。だが、保存時のデータ容量が大きいうえ、専用のビュワーソフトがないため、画像を確認できないという不便さもある。

 画質重視なので仕方ない部分もあるが、JPEGデータよりもハンドリングが悪く、同じ容量のカードに記録できる枚数が少ないうえ、撮影後の書き込み時間も長くなり、バッテリーも消耗するなど、欠点も多い。

 そこでKodakは今回、「ERI-JPEG」という新フォーマットを提唱した。これはRAWデータの画質と、JPEGのハンドリングのよさやデータ容量の小ささの両立を図ったものといえる。

 構造的には、撮影画像のJPEGファイルのヘッダに、RAWデータとの差分データを付加したもので、拡張子も「.jpg」となる。そのため、通常のソフトウエアではJPEGデータとして画像を開くことができるうえ、データ容量はRAWデータの1/4程度まで小さくできるというもの。

 さらに専用のPhotoshopプラグインを使うことで、36bitのRAWデータとして扱うことができるため、露出オーバーやアンダーのカットはもちろん、撮影時にきちんとホワイトバランスが取れていない画像データでも、後処理で適切なカラーバランスが得られるなど、きわめてメリットが多い。

 しかも、Kodakの現行デジタル一眼レフやデジタルバックについては、ファームウエアのアップグレードだけで、この「EPI-JPEG」を利用できるようになるという。

 残念ながら、このフォーマットは同社独自のもので、他社に公開する予定はないという。とはいえ、今後、デジタル一眼レフの普及にともない、現行のJPEGでは扱えないような24bitを越えるデータを軽快にハンドリングしたいという需要が高まった際に注目される新フォーマットといえそうだ。

 また、PMA初日に日本国内でも発表された、1,600万画素のデジタルバック「DCSプロバック645」。これは645判の中型一眼レフに装着し、超高精細な画像を撮影できる、デジタルバックだ。

 対応機種は「DCSプロバック645M」が「マミヤ 645AF-D」「同645AF」、「DCSプロバック645C」は「京セラ CONTAX 645」となっている。

 同社では以前から、1,600万画素のデジタルバックを発売していたが、バッテリーが外付け式だったため、機動性に欠ける部分があった。だが、今回のモデルは、バッテリーをバック下部に装着することで、スタンドアローンでの撮影を実現している点が大きな特徴といえる。価格は169万円ときわめて高価だが、その画質には目を見張るものがある。


●KodakとHewlett-Packard、インクジェット式ミニラボ機を開発

 一方、今回のPMAではプリント分野でも、さまざまな新展開が見られた。

 KodakとHewlett-Packardの合弁会社「Phogenix Imaging」は、高品位で高耐久性を備えた感熱式インクジェット方式採用のデジタルミニラボシステム「DFX」を発表。これは、インクジェットプリンタをベースにした、ミニラボ用の量産型プリンタ。Kodakのペーパーやラミネート技術と、HPのインクジェット技術とを融合して、普通のカラー印画紙に匹敵する画質や耐久性を実現しているという。

 会場ではプリントのデモも行なわれていた。インクジェット式で懸念される耐久性向上のため、本システムでは自動的にラミネート加工が施される、それもあって、プリントは光沢感や紙の厚みも印画紙に近く、なんら違和感のないものに仕上がっている。画質面でも、通常用途では、十分なクォリティーを実現しており、これならインクジェット式でもいいなあ~と思わせるほどのレベルだった。

 現在は各社とも、ミニラボでのデジタルプリントでも、普通のカラー印画紙を使う銀塩方式が主流。だが、銀塩方式は処理液などの関係で設置できる場所も限られており、ショッピングセンターやコンビニなどに設置するには、インクジェット方式のほうが圧倒的に有利。しかも、銀塩方式のような廃液がでないこともあって、環境に優しいという点も大きなポイントといえる。

 時代の流れとはいえ、世界最大の感材メーカーであるKodakが、Hewlett-Packardと協力し、自らインクジェット方式の開発に踏み切った点は大英断であり、今後の展開が注目される。


●コニカ、業務用の顔料系インクジェットプリンタを参考出品

 コニカは参考出品ながらも、業務用のインクジェットプリンタを開発発表していた。

 こちらは、KodakとHewlett-Packardのようにミニラボ用といった具体的な展開ではなく、さまざまな業務用途に使える汎用タイプとして開発されたという。

 インクは耐光性を考慮し、顔料系インクを採用しており、ラミネート加工は施されていない。そこで懸念されるのが、光沢感や保存性だが、プリントを見る限り、カラー印画紙ほどではないが、結構光沢があり、さほど違和感のないレベルに仕上がっているのに感心した。もちろん、耐光性や耐水性の面でも十分な実力という。

 もともとコニカは、パーソナル向けインクジェット用のQPペーパーを販売しており、超大型の高速インクジェットプリンタも販売している。このような技術が今回の業務用機にも生かされているわけだ。

 しかし、日米の大手フィルムメーカーが期せずして、同時にラボ処理に利用できる、本格的なインクジェットプリンタを発表したのは、決して偶然ではない。

 実際、一昨年秋のフォトキナでは、ラボ機器大手のグレタグが先行し、エプソンのインクジェット技術をベースにした量産型のインクジェット式ミニラボシステムを先行して発表しており、今回の発表はそれに触発された部分もあるのだろう。


●富士フイルム、感熱型カラープリントを「PrintPix」ブランドで新展開

 富士フイルムは今回、デジタルカメラからのプリントに力を入れたブース展開を図っていた。

 なかでも、これまで「TA方式」と呼ばれていた同社独自の感熱式カラープリントシステムを、さらにグレードアップし、「PrintPix」という新ブランドで本格展開を始めた点は注目すべきところ。

 今回出展されたものは、カメラ店など業務用のセルフサービスで、デジタルカメラからのプリントが容易にできる新システムだ。

 正直なところ、これまでのTA方式は、他の方式に比べ、画質や紙質などの点で若干見劣りする部分があった。だが、最新の「PrintPix」ではいずれの点も向上し、色再現性や白の冴えも増しており、不満のないレベルに成長していた。また、プリント時間も高速化されており、ファーストプリント(1枚目)が出てくるまでは、40秒前後かかるが、そのあとは次々にプリントがでてくる感じで、さほどストレスを感じることはない。

 もっとも、まだ普通のカラー印画紙に比べると、やや紙が薄手であり、この点さえ改良されれば、より普通のカラープリント感覚で扱えるようになりそう。

 富士フイルムは今回の「PrintPix」を、デジタルカメラからのプリントがどこでもできる、設置場所を選ばない、環境に優しいシステムとしてアピールしていたのが印象的だった。

 また同社は、35mmサイズの1,100万画素CCDを搭載した、大型カメラ用デジタルバックも出展。ただ、これは富士フイルムの製品ではなく、米国富士フイルムが独自に扱うもの。そのため、日本国内での展開は予定していないという。


●ポラロイド、2分で24枚のプリントができるセルフ端末を発表

 ポラロイドは、同社のインスタントフィルム技術を活用し、デジタルカメラのメモリーカードから、2分で24枚ものプリントができる、超高速のセルフサービス型プリンタを出品した。

 2分で24枚というと、5秒に1枚プリントできることになる。現在、高速な昇華型プリンタでも、12秒に1枚程度が主流であることを考えると、この速さは大きな魅力。とくに、コンビニなどで待っている間にプリントしたいといった用途には、これくらいのスピードが必須となりそう。

 実際にプリントデモを見ると、このスピードはかなり軽快なもの。これなら現在の店頭端末のようにストレスを感じることもない。

 もちろん、主要なメモリーカードが利用でき、操作もタッチパネル式の簡単なもの。画質はポラロイドフィルム独特のもので、若干クリアさに欠けるきらいはあるが、必要十分なクォリティー。日本国内での展開は未定だが、問題はランニングコストといえそうだ。



□2002 PMAのホームページ
http://pma2002.pmai.org/

(2002年3月11日)

[Reported by 山田久美夫]


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