元麻布春男の週刊PCホットライン

DVD-RAMユーザーには嬉しい「MTV1000アップグレードキット」


●大人気のキャプチャカードMTV1000の魅力

 昨年の後半、秋葉原などのショップでちょっとしたヒットになったのがカノープスのMTV1000だ。ハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載したTVチューナーカードであるMTV1000は、この種の製品としては比較的価格が高い部類に入る(希望標準小売価格49,800円)にもかかわらず、一時期は、入荷、即完売を続けるほどのヒットとなった。

MTV1000

 MTV1000がヒットした理由は、画質を含め、様々なことが考えられる。が、事前に評価する機会のあった筆者にとって購入の決め手になったこと、あるいは実際に購入した後で最も満足したことは、とにかくキチンと動く、ということだ。現在筆者は、古いPCにMTV1000をインストールし、TV録画専用機にしているが、システムをS3ステートのスタンバイに入れ、すべてのファンが停止した状態から、確実に復帰し予約録画が実行される。正直に言うと、Windows 2000の時代は時々復帰から失敗していた(原因はMTV1000以外の部分にあったと思っている)のだが、Windows XPになってからほぼ100%確実となった(Windows XPのメリットを実感する、数少ない? 出来事の1つ)。もちろん、予約録画後はちゃんとサスペンド状態に戻るし、リブートなしに1カ月以上使い続けても、特に問題はない。

 このような安定した動作は、民生機を考えれば当然のことかもしれない。が、PCベースのシステムでは、なかなか難しいことであり、特にその状態を長期間に渡って維持する、ということは非常に難しい。筆者の場合、MTV1000インストール機を録画専用機にしており、余分なソフトウェアなどを追加インストールしないことも、安定動作に寄与しているハズだ。それでも、筆者の手元に時々フリーズするビデオデッキやデジタルCSチューナーがあるなど、最近の民生機がだいぶ怪しくなっていることを考えれば、MTV1000を組み込んだシステムはかなり満足すべき結果が得られていると考えている。


●MTV1000アップグレードキットとは

 MTV1000の上位モデルとして、今年の1月に発表されたのがMTV2000だ。MTV1000に対し、デジタル部はそのままで、TBC(タイムベースコレクタ)、3次元YC分離、ゴーストキャンセラーなど、アナログ部を強化した上位モデルとなっている。発売予定は2月中旬となっているのだが、本稿執筆時点ではまだ発売されていない。このMTV2000の発表時に、MTV1000ユーザーへのちょっとしたプレゼント? として明らかになったのが、MTV1000アップグレードキットと呼ばれる新しいソフトウェアの提供だ(提供価格は、送料と消費税込みで4,515円)。このアップグレードキットが届いたので、これを取り上げてみたいと思う。

 MTV1000アップグレードキットは、MTV2000にバンドルされるDVD-MovieAlbum for Canopusと、それに対応したMEDIACRUISE(カノープス製のマルチメディアコントロールソフトウェア)で構成される。DVD-MovieAlbumというのは、何回かこのコラムでも取り上げた松下電器製のソフトウェア。DVD-RAMメディアにビデオレコーディング規格で、動画を書き込むアプリケーションである。このfor Canopus版では、MTV1000/MTV2000と組み合わせることで、TV番組のダイレクト録画と、TV番組のダイレクト予約録画が可能になる。MTV1000ユーザーは、このアップグレードキットを入手することで、TV番組を直接DVD-RAMメディアに、民生機とデータ互換で書き込めるようになるわけだ。

 つまり、このアップグレードキットを活用するにはDVD-RAMドライブ、それも松下電器製のDVD-RAMドライブが不可欠である(すべてのOEMドライブで動くかどうかは不明)。実は、手元にある東芝製のDVD-RAMドライブでも試してみたが、動作しなかった(カノープスは、アップグレードキットに松下製のDVD-RAMドライブを組み合わせたアップグレードキットIIの提供も行なっている)。なお、アップグレードキット、アップグレードキットIIとも、申し込むにはMTV1000のユーザー登録を行なわなければならない。

 このアップグレードキットは、2枚のCD-ROMから構成される。1枚にはアップデートされたMTV1000ドライバとMEDIACRUISEが収められており、もう1枚がDVD-MovieAlbum for Canopusだ。セットアップした状態では、従来と同じスキンが使用されているが、MTV2000にバンドルされている新しいスキンにも変更できる。

【お詫びと訂正】初出時にMTV2000と同様のスキンは提供されていないと記載されていましたが、誤りです。お詫びして訂正いたします。


●DVD-RAMユーザーは納得の新機能が追加される

 機能的には、キャプチャパラメータの設定ダイアローグに、「DVD-MovieAlbumインポート情報の出力」というチェックボックスが追加された点が目新しい(画面1)。このチェックボックスをチェックすると、MPEG-2ファイルに加え、MPEG-2ファイルをDVD-MovieAlbumに取り込む際に必要となるVR(ビデオレコーディング)認証ファイル(MTVファイル)が生成される。また、システムに常駐し、TVの予約録画などを管理するTV Recording Managerの「動作」オプションに「DVD-MovieAlbumで録画する」が加えられた点も、このアップグレードキットで目新しい点の1つだ(画面2)。これがなくては、DVD-RAMに直接予約録画ができない。

画面1 画面2

 そのDVD-MovieAlbumだが、見た目はこれまでDVD-RAMドライブやほかのキャプチャカードにバンドルされていたものと大きく変わるわけではない(画面3)。だが、再生モードから記録モードに切り替えると(切り替えには、UDF 2.0でフォーマットされたメディアがドライブにセットされている必要がある)、表示ウィンドウにMTV1000のTVチューナー出力が表示されると同時に、TVチューナーをコントロールする小さなアプレット(画面4)が現れる。標準のDVD-MovieAlbumには、こうした機能が一切無いため、こうした機能の追加は欠かせない。

画面3 画面4

 画面3の右上にある環境設定ボタンの内容も、for Canopus版では変更が加えられている。最も顕著な変更は入力先として「Tuner」が選べるようになったこと(画面5)で、これがなければ、MTV1000による直接録画はできない。また、記録モードの選択で高画質(XPモード)を選んだ際に、「DVD-Videoで使用」のチェックボックスがあるのは、MPEG-2エンコード時に、DVDit!などのDVDオーサリングソフトで扱える8Mbpsのビットレートを超えないようにするためのもの。ここでチェックを忘れても、DVD-MovieAlbumからMPEG-2ファイルを出力する際に、同様のリミッターをかけることはできる(画面6)が、この場合、元データのビットレートによっては、再エンコードが発生するため、時間がかかったり、画質が劣化する可能性がある(画面7)。

画面5 画面6 画面7

 実際に使ってみての感想だが、新しくなったMEDIACRUISE、DVD-MovieAlbumともに、動作は安定しており、使っていて不安に感じる部分はほとんどない。MTV1000に加え松下製のDVD-RAMドライブをすでに所有しているユーザー、あるいはこの機会に松下製DVD-RAMドライブの購入に踏み切るユーザーには、十二分に価格に見合ったアップグレードだと思う(逆に、DVD-RAMドライブがなければ、このアップグレードはほぼ無意味である)。


●やや不安に感じるDVD-RAM+VRフォーマットのサポート状況

 問題があるとすれば、新たにDVD-RAMドライブを購入してまで行なうアップグレードなのか、ということだろう。MTV1000、DVD-RAMドライブ、DVD-MovieAlbumの組合せの最大のメリットは、予約も含め、リアルタイムで民生機互換のフォーマットに動画を記録できることだが、DVD-RAM+ビデオレコーディングフォーマットの組合せと互換性がとれる民生機は、DVD-RAMレコーダーのほかは、ごく限られたDVDプレーヤーしかない。手元にある2002年1月付のPanasonic DVDプレーヤー総合カタログ中、DVD-RAMに対応した製品は据え置き型1機種、ポータブル型1機種の2機種のみで、価格も高い(据え置き型のDVD-RP91で本体希望小売価格79,800円)。このカタログで新製品扱いになっている薄型でスタイリッシュな低価格モデル(DVD-XP30およびDVD-XV10)は、新しいにもかかわらず、DVD-RAM対応は見送られており、民生フォーマットとしてのDVD-RAMの将来に若干の不安を感じる(もちろんこれは、カノープスに責任のある話では全く無い)。

 DVD-MovieAlbumを使えば、DVD-RメディアにDVD-Video互換で記録するためのソース(MPEG-2ファイル)を生成することが可能だが、わざわざそれをしなければならないようでは、DVD-MovieAlbumのメリットが薄くなる。パイオニアがDVD-RW+ビデオレコーディングフォーマットに対応したDVDプレーヤーを2万円台半ばから幅広く用意しているのに対し、民生機でのサポートという点で見劣りするのは間違いないところだ(逆にパイオニアサイドには、ビデオレコーディングフォーマットで書き込めるDVD-RW対応のライティングソフトが欠けているが)。

 松下電器は大所帯な分、社内での意思統一が難しいところもあるのかもしれないが、子会社を吸収し、松下電器に統合するリストラをきっかけに、全社的なコンセンサス(DVD-RAMを民生用として担ぐのかどうか)を具体的な製品の形で強く打ち出して欲しいところだ。

□アップグレードキット販売の案内
http://www.canopus.co.jp/catalog/mtv1000/mtvcanp.htm
□関連記事
【1月11日】カノープス、3D Y/C分離回路搭載のTVキャプチャカード「MTV2000」
~DVD-RAMへの直接記録が可能に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0111/canopus.htm
【2001年6月27日】【元麻布】カノープスMTV1000を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010627/hot152.htm

バックナンバー

(2002年2月13日)

[Text by 元麻布春男]


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