LinuxWorld Conference & Expo/New York 2002

塩田紳二の
Linux搭載PDAレポート



 1月29日から2月1日まで、米国ニューヨーク市で「LinuxWorld Conference & Expo/New York 2002」が開催されている。最近は組み込み用途でLinuxが使われる例が増え、特にPDAにLinuxを採用する傾向が出てきた。かつてLinuxWorldExpoレポートで紹介し、国内でも入手可能になった「Agenda VR3」以来、いくつかのメーカーがLinux搭載PDAを発表している。

 また、Windows CE機にLinuxをポーティングする例などもあり、1つの傾向として定着してきたようである。ここでは、会場に展示されていたPDA関係の製品などを紹介する。

●独自のJavaエンジンを搭載したHPのLinux PDA

 まず、最も話題になっていたのは、Hewlett-Packardが試作したLinux+JavaのPDA試作機である。試作機であるにもかかわらず、同社のフィオリーナCEOがキーノートスピーチで紹介するほど、力が入っている。

 というのも、搭載されたJavaエンジンが、Hewlett-Packardの独自開発によるものだからだ。組み込み向けのJavaではHewlett-PackardとSun Microsystemsが対立しているため、Hewlett-Packardが独自開発を開始したのだ。このJavaエンジンは「Chai-LX」と名付けられている。「Chai」はお茶の一種で、コーヒー系飲料にちなんだ名前が付いているJavaに対抗しているわけだ。Chaiに続く“LX”は、Hewlett-Packardのハンドヘルドコンピュータ「95/100/200LX」を想像させる。

 試作機は、円形のカーソルキーと4つのボタンを持つシンプルなもの。CPUには、流行りのStrongARMを採用している。RAMは32MBで、LinuxカーネルやChai-LXはROM上に搭載されているという。

 その能力だが、JavaでMP3プレーヤーが動かせるという。どこまでハードウェアでサポートしているかわからないが、そこそこの性能がJavaで出ているようである。さわってみたところ、プログラム起動などわりとキビキビと動く(もっとも、スケジューラーなどのデータなどが入っていないので、実用的な性能かどうかは不明なところもある)。少なくとも、素の状態で動作が遅いというものではないようだ。

HPのChai-LXを搭載したPDA試作機。StrongARMを採用しOSはLinux。アプリケーションはJavaで記述し、Chai-LXで実行する。発売が期待される一品 正面サイズはPalmのm500あたりとあまり変わらないが、結構厚みがある。ただしPalmと違ってCFスロットを装備している

●米国版ZaurusはStrongARM+Linux

 もう1つの人気者は、シャープが展示していた米国版Zaurus。外見は日本国内で販売されている「MI-E21」にそっくりだが、中身はまったく違っている。たとえば、日本版はCPUに日立のSHを採用しているが、米国版ではStrongARMだ。

 Hewlett-PackardのPDAが試作機で製品化なども未定であるのに対し、Zaurusはすでに製品化が発表されており、現在、開発者向けのバージョン「SL-5000D」(製品版はSL-5500となる)が先行販売されている。日本のZaurus用に用意された豊富な周辺装置や、サードパーティのCFサイズEthernetカードなどが使えるのも魅力だ。会場では、開発者向けに販売も行なわれていた。

 Zaurusは、Java環境としてINSIGNIA( http://www.insignia.com/java_enabled.htm )のJavaバーチャルマシンである「Jeode」を搭載しているが、標準はLinuxネイティブコードのアプリケーション。こちらはTrollTechのQt/Embedded( http://www.trolltech.com/products/embedded/index.html )がベース。

シャープが米国で出荷中の「開発者向けZaurus」であるSL-5000D。見た目は日本版と同じだが、中身はまったく違っている SLシリーズで利用可能な周辺機器。写真左側手前に見えるのはSLシリーズに装着して携帯電話にするモジュール

●iPAQと式神も人気を集める

 あいかわらず多いのは、CompaqのiPAQ Pocket PC。最初から Linuxを動かす環境があったのが大きい(旧DECでハンドヘルド機でLinuxを動かす研究をしており、それがiPAQ用として公開された)。会場では、Linuxの大手ディストリビューターであるRedhatがやはり組み込み版Redhat Linuxのデモを行なっていた。

 また、日本からは、AXEの式神( http://www.sikigami.com/ )が出展。日本Linux協会のブースながら人を集めていた。

Redhatの組み込み版Linuxを搭載したCompaqのiPAQ。組み込み用Linuxのデモ機として手軽なので、このところLinux関係のイベントでよく見かける Royalが開発中のLinux PDAのモックアップ。CESでも展示されていたが、まだ開発中でモックアップのみの展示。これも登場が期待される製品
AXEの式神。X WindowのGNOME上で動くGUI環境で、PDAの小さな画面を想定して作られている。iPAQやNECのMobileGearシリーズなどにインストールされたLinux上で動作している


□LinuxWorld Conference & Expo/New York 2002のホームページ
http://www.linuxworldexpo.com/
□関連記事
【2001年3月26日】「CeBIT 2001」レポート・その20
LinuxベースのPDA「Agenda VR3」(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/news/2001/03/26/cebit20.htm
【2000年8月18日】塩田紳二のSan Jose LinuxWorld Conference & Expoレポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000818/linux2.htm

(2002年2月1日)

[Reported by 塩田紳二]


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