San Jose Convention Center |
会場:San Jose Convention Center
展示会場では、Convention Centerの2階をフルに使い、さらに一部が廊下にはみ出すほど、出展者が増えている。
今回の展示の目玉は、ItaniumマシンとPDA上のLinuxだ。翌週にIDFを控えているためItanium搭載機を開発中で、Linux対応を行なうメーカーのほとんどが持ち込んでいる。ItaniumへLinuxを移植するTrillianプロジェクトが順調に動いているのも一因だろう。
Linux搭載PDAの急増は、MIPSやARM、SHなどのRISC系のCPUへLinuxが移植されたことによる。展示されているPDAは、Pocket PCなど既存のハードウェアでLinuxを動かしているものと、Linux搭載を前提として新たに設計されたものが混在している。
●ラックマウントなど、サーバーが中心のItaniumマシン
IBM、DELL、SGI、Compaq、HPなどの大手メーカーがItaniumマシンを出展している。展示機は、小さくてもフルタワー型で、多くはラックマウント形式の巨大なサーバー機である。Itaniumがターゲットとしているのはディスクアレイやマルチプロセッサなどが必要とされる、このような市場なのだ。
中でも目立ったのは、Turbo LinuxブースにおかれているNECのマルチプロセッサマシン。最大16個のCPUを搭載する「AzusA」である。内部には、4CPUを内蔵するユニットを最大4つ内蔵できるようになっており、各ユニットはそれぞれのメモリ(最大32GB)を持っている。このユニット間をクロスバースイッチで接続し、すべてのユニットのメモリを1つの連続したメモリ空間としてアクセスできるようにしてある。各CPUには、それぞれPCIスロットが8つあり、最大で128個(8×4×4)のPCIスロットを利用できる。なお、利用しているLinuxは、NECでIA-64用のカーネルを多少修正したものを使っている。
Itaniumに関しては、すでにHPから、IA-32(x86)マシン上のLinuxで動作するIA-64エミュレータが提供されており、実際の開発にとりかかることが可能。これは、Linux上でさらにIA-64版Linuxを動作させることができる開発環境で、コンパイルなどの作業は、IA-32上で行う。IA-64 Linux Developer's KitとしてHPのサイトから無償でダウンロードできる。この開発環境では、ターゲットプログラムのデバッグが可能で、レジスタを表示させつつ、ステップ実行などもできる。
Intelもブースを出しており、そこには、VA LINUXやPenguin Computing などが開発中のサーバーが展示されていた。そのうちの1つは、筐体が開いており内部をみることもできた。
今回の展示を見る限り、Itaniumの供給が始まれば、Linuxのサーバー市場はすぐにでも立ち上がりそうな気配である。
Intelブースにあった内部のみえるItaniumマシン。デュアルプロセッサが可能なもので、筐体底面に2つのプロセッサを収容できる。右はCPU部分だけを撮影したもの。手前の黒い部分がCPUのヒートシンク |
HPブースに展示されていたIA-64エミュレーター。CPUのレジスタなどをウィンドウに表示しつつ、IA-64プログラムのデバッグができる | SGIは、Itaniumマシンをクラスタにして展示 |
●CompaqのPocketPCでLinuxが
Compaqブースに展示されていたLinuxの動作するiPaq H3600。オプションのPCカードスロットやタッチパネルなどもデバイスとしてサポートされている |
Compaqのブースには、先頃販売されたPocket PCマシンであるiPaq H3600が展示されているが、このマシンでLinuxが動いている。これは、フラッシュROMにあるWindows CEを上書きしてLinuxにしてしまったもの。X-Window Systemが動き、狭いながらもちゃんとウィンドウが開き、タッチパネルも動作する。H3600はオプションでPCカードまたはCFのスロットを増設することができるのだが、これもちゃんとサポートされており、CFスロットにはIBMのMicrodriveがささっていた。
このiPaq用Linuxもここから無料で入手が可能。どうしてCompaqがやっているのかというと、Compaqに買収される前にDECがハンドヘルドマシンでLinuxを動かす研究をしていたからである。このときに使われたマシンは、StrongARMベースのものであった。このiPaq H3600もStrongARMを採用しており、この研究成果により、Linuxが動いているのである。なお、聞いた話によると、Linuxを入れてしまうと、WindowsCEに戻すことができないし、フラッシュの書き込みに失敗するとリカバリも不可能だという。
実際、このiPaq H3600は、人気商品で品不足が続いており、筆者も今回の米国取材の折り、1つ入手しようと思ってパソコンショップを数軒まわってみたが、どこも品切れでまだ入手できていない。店員の話だと、入荷するとすぐに売れてしまうのだそうだ。シリコンバレーという土地柄、みんなLinuxを入れているのかも!?
このLinux World Expoの期間中にAgenda Computingは、Linuxを標準搭載したPDA機Agenda VR3を発表した。これは、66MHzのMIPSプロセッサを搭載し160x240ドットのモノクロLCD、フラッシュメモリ2MB、RAM最大8MBのPDA。NECのMIPS互換CPUであるVrシリーズを対象にしたLinuxVRを使う。予定では今年10月から出荷され、メモリ2MBの機種は、149ドル程度になるという。
デモ機では、アプリケーション部分は未完成ながら、Linuxはちゃんと動作しており、簡単なデモをみることができた。オプションで、外部キーボードが用意されており、筐体にはカラーバリエーションもあるようだ。
Linuxを標準OSとして使うAgenda VR3。アプリケーション部分は未完成だが、Linuxは動いている | 起動直後のログイン画面。試作品なのでLinuxが生のまま見える |
オプションの外部キーボード。ポケットボードに感じが似ている。数字キーの上にあるコネクタでAgenda VR3と接続する | AgendaVR3にはカラーバリエーションも用意されるという |
これとは別に、PDA向けにLinuxとJavaを組み合わせたディストリビューションを提供しているのがPocketLinux。これは、CompaqのiPag H3600やVtechのHelioで動作する。
PocketLinuxの動作しているiPaq。GUI部分などはJavaを使っている | 同じくPocketLinuxの動くVtechのHelio | DEC(現Compaq)で作られたLinuxの動くハンドヘルドマシンのプロトタイプItsy。CompaqやPocketLinuxの実装のベースはこのマシン用に開発されたものがベースらしい |
また、IBMは、最近公開した腕時計型コンピュータを展示している。正面液晶部分はタッチパネルで、右側の部分にマイク、スピーカー、ジョグダイヤルがあり、その裏に拡張モジュールが装備できるようになっている。動作はしていなかったが、ここにBlueToothのモジュールが組み込まれていた。
液晶の裏側にはリチウムポリマー電池が内蔵されており、背面パネルに充電と通信用の端子がある。メモリは、8MBのフラッシュROMと同じく8MBのRAM。Linuxを搭載し、X11を動作させることもできる。
●SIMMサイズの組み込みLinuxボード
Linuxは、組み込み系でも使われており、リアルタイムのエクステンションなども作られている。その一つで、MMUを持たないCPU用に、Embedded Linux/Microcontroller ProjectのμClinuxというものもある。もともとは、Palm-Pilot(Dragon Ballを使っている)にLinuxを乗せるプロジェクトから始まったものだ。
Lineoは、組み込み系Linuxをサポートする会社で、SIMMサイズの基板の上にDragonBall CPU(68000のワンチップCPU)やイーサーネットのコントローラーを乗せたものを販売している。これにμClinuxを載せたネットワークアプライアンスなどを展示していた。
Intelブースでは、組み込み用途の実例として810チップセットを使った小型のコンピュータを展示。ここでもLinuxが動いている | こちらも組み込み用Linux(MontaVista SoftwareのHard Hat Linux)を使った製品であるKarbango Internet Radio。インターネット経由でストリーム番組を聞くための製品 |
●異なる文化の共存の道
ブースに座り込んでノートパソコンをアクセスする人たち。正面スクリーンでなにを見てるのかと思ったら、日本のアニメだった |
こういうラフなところと、大企業ブースのまじめなショウの部分の折り合いをどうつけていくのかが今後の課題だと感じた。
●HammerはItaniumよりも安くなるか
AMDのHammerについてインタビューというほどでもないが、Division Marketing ManagerのBob Mitton氏に少し話を聞くことができた。それによると、Hammerは、プレフィックスを使って64bit化を行なう。これは従来の命令セットの前に64bit動作であることを示すプレフィックスコードを置いて、命令を64bit化する。
これは、Intelが386でCPUを32bit化したのと同じ方法である。なお、64bitプログラムを実行するLong Modeのほかに、64bit OSを動かして、32bitアプリケーションを実行するCompatibility Modeや、32bitOSを動かすためのLegacy Modeもある。
Itaniumと比較すると、32bitコードの実行効率がよく、システムのハードウェアコストが安くなるというメリットがある。Linuxで使うメリットとしては、オープンソース系の多くのプロジェクトがユーザーベースであるため、ItaniumよりもHammerのほうがシステムを購入しやすいだろうということだった。
いずれにせよ、来年にかけて64bit Linuxサーバーの市場でも、IntelとAMDの争いははげしくなるだろう。
□LinuxWorldのホームページ(英文)
http://www.linuxworldexpo.com/
(2000年8月18日)
[Reported by 塩田紳二]