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Platform Conferenceで1.2GHz版Rambus「PC1200」がデモ


●RDRAMはニッチという見通しを示したRambus

 DRAM市場は、SDRAMを置き換えるDDRメモリが主流となり、RDRAMはニッチにとどまる。しかし、DRAM市場全体の10%程度、パフォーマンスセグメントは確保する。また、性能の向上は今後も続ける。コンピュータ向けは、32bitモジュール(コードネーム、Platte:プラット)に、RDRAMの高速版規格「PC1066(コードネーム、Hastings:ヘイスティングス)」を載せた「RIMM 4200」でパフォーマンスをさらに伸ばす。また、ロングタームではより高速な1.2GHzバスの「PC1200」と64bitモジュールでさらに帯域を引き上げる。

 Rambusは、Platform Conferenceでこんな強気なのか弱気なのかわからない姿勢を見せた。要約すると「DDRが主流になってしまうのは認めるものの、技術的な優位は揺るがない。決して後退はしない」というあたりになるだろうか。Intelが、最終的にDDRメモリを選択したことで、RambusがDRAMの主流、つまりコモディティDRAMになる望みは完全になくなった。だが、それでも高付加価値セグメントで10~12%シェアを確保できるなら十分生き残ることができるというのがシナリオだろう。

 Platform Conferenceでは、RambusはPC1200の実システムのデモも行なった。これは、Intel 850ベースのシステムで、128Mbitチップを8デバイス搭載したSamsungのRIMMを使った。RIMMは1枚で、チップはPC800からの選別品だという。Rambusによると、Pentium 4のシステムバスを600MHz(ベース150MHz)にアップして、メモリインターフェイスとシンクロさせたという。

 また、Rambusは、PC1066を使うRIMM 4200も、2月末の「Intel Developer Forum(IDF)」でデモするという。従来のRDRAMは、組み込み用のショートチャネルと、メインメモリ用のロングチャネルの2系列だった。高速品は、まずショートチャネルで登場し、プロセスが進むにつれてロングチャネルに移行するという流れだ。

 しかし、32bit RIMMでは、モジュール上にターミネーションを載せ、2枚のRIMMを向かい合わせに配置することで、実質的なチャネル長を短くしている。モジュールも2チャネルで2枚となるのでデバイス数も制約される。そのため、従来のショートチャネルとロングチャネルのちょうど中間のようになり、高速版RDRAMを実現しやすくなる。つまり、ロングチャネルのスペックはきついRDRAMデバイスでも、32bit RIMMなら1.066GHzや1.2GHzで駆動しやすいことになる。

32bit RIMM Rambusのシェアは保持される? RIMM 4200 Module

●突然活気づいたRDRAMチップセット

 また、ここへ来て、PC市場でのRDRAMを巡る状況にも若干の変化が見えてきた。それは、SiSのRDRAMサポートだ。SiSは、今年後半にリリースする予定のPentium 4向けチップセット「R658」で、デュアルチャネルRDRAMをサポート。PC1066と低コスト版RDRAM規格「4i(4インディペンデントバンク構成)」にも対応する。

 SiSの場合、製品が安定するまで時間がかかるため、本当に実用になるのがいつかを判断するのは難しい。しかし、Intel以外のPC向けチップセットベンダーが初めて動いたのは変化だ。SiSが本気だとすれば、IntelがRDRAMから後退してゆくのと入れ替わりにSiSがRDRAMニッチを支え続けることになる。また、ある業界関係者は、SiSのこうした動きに反応して、VIA TechnologiesもRDRAMへの関心を示し始めたと伝える。

 もっとも、SiSのサポートとIntelのサポートでは比較にならない。大手ベンダーがメインのラインナップで採用する可能性は低く、大勢に影響は出ない。PC市場でのRDRAMの延命につながるかどうかは微妙だ。

 もっとも、Intelも第2四半期に繰り出すi850改良版のRDRAMチップセット「Tehama-E(テハマE)」で、RDRAMサポートを拡大する。現在は必ず2つのRDRAMチャネルで構成しなければならなかったのが1チャネル構成も可能になり、PC1066のサポートも加わり、4iもサポートするらしい。そうすると、もともと次世代RDRAMチップセット「Tulloch(タラク)」で加えるはずだった仕様の多くを取り込むことになる。これに、RIMM 4200が加われば、理屈の上では強力な布陣となる。加えて、今年に入ってからSDRAM/DDRメモリ価格は反発しており、SDRAM/DDRメモリの価格面でのアドバンテージは薄れてきている。

 だが、すべては遅かった、という雰囲気がある。業界全体の流れはDDRに向かっており、RDRAMに技術的な優位があっても、今さら流れが変わりそうにない。PC市場にRDRAMを提供するベンダーも、Samsungとエルピーダメモリの2社になってしまった。Pentium 4の立ち上がり時期に、4iと32bit RIMMがあればそれでも変わったかもしれない。もっとも、その場合はRIMMは2枚までとなってしまうため、PCのメモリ搭載容量が制約されてしまう。Intelとしてはそうした選択はできなかったということらしい。実際、今のところ32bit RIMMに対応したIntelのマザーボードデザインガイドが出たという話は聞かない。

●ハイパフォーマンスへ向かわざるをえないRDRAM

 こうした状況で、RDRAMがメインメモリ市場で存在感を発揮し続けると見る関係者は少ない。ただし、それはRDRAMが消えてしまうことを意味しているわけではない。RDRAMが現在適用されていて、今後もRDRAMが望まれ続ける市場はある。ひとつはコミュニケーション機器で、極端な広帯域が求められるケースではRDRAMは選択肢であり続ける。もうひとつはデジタル家電で、メモリ容量は小さくてよいがチップ数を減らしてなおかつ広帯域が欲しいというニーズでは、RDRAMが最良のソリューションとなる。実際に、PlayStation 2はRDRAMを2チップ搭載している。だが現実には、家電の開発者にとって、RDRAMのボードデザインはハードルが高く、なかなか浸透できない状況が続いている。ユーザーサポートの態勢が大きく変わらない限り、急に伸びるとは思えない。

 とすると、RDRAMのニッチは、コミュニケーション機器と一部のハイエンドデジタル家電、そしてうまくすればPC/ワークステーションのハイエンドということになる。そうなると、ニーズはハイパフォーマンスに完全に振れることになる。そのため、今後RDRAMを供給するベンダーは、製品をPC1066、そしてPC1200へと引っ張っていく必要が出てくる。しかし、ある関係者によるとPC1066を効率よく取るには0.13μm以下のプロセスが必要だという。

 DRAMのプロセスは、現在が0.15μmへのシフト時期で、0.13μmはこれから立ち上がるというフェイズにある。つまり、DRAMベンダーは、最先端で最初は製造キャパシティが限られる0.13μmに、RDRAMを割り当てなければならない。総合的なキャパシティの大きなベンダーはともかく、キャパシティが限られるベンダーにとっては難しい選択となる。


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(2002年1月25日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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