元麻布春男の週刊PCホットライン

意外なことで必要になったUSB-シリアル変換アダプタ


●最新ノートで使えなかったTimexのデータリンク時計

 以前、このコラムで書いたように、筆者は昨年の夏、新しいノートPC、東芝アメリカのSatellite 3005-S303を購入した。その特徴の1つは、3つのUSBポートとIEEE 1394ポートを備える代わりに、シリアルポートを持たないこと。パラレルポートは備えているため、レガシーフリーというわけではないが、今さらシリアルやパラレルを使うことはあるまいと思い、全く気にしていなかった。むしろ、レガシーポートが少ない方がいいや、とさえ考えていたかもしれない。日本に帰って、日本語版のOS(Windows 2000 Professional)をインストールした後も、こうしたレガシーポートの欠如に気をとめることはなかった。ところが、ある時、自分がシリアルポートを必要としていることに気づいたのである。

 フリーランスのライターという職業上、毎日会社に通勤するということをしない筆者は、日常携帯するようなサブノートPCとか、PDAをあまり必要としない。PDAは買ったことはある(それもずいぶん前の話だが)ものの、日常的に使う必然性に乏しく、1~2週間も使うと飽きて、ほっぽり出すという有様だった。そんな中で唯一、PDAに近い種類のデバイスとして利用しているのが、Microsoft/TimexのData Link時計だ。

 写真1に示したのが、筆者が現在使っているData Link Model 150という時計。最初についてきた純正のベルトは、肌がかぶれるという問題が生じたため、筆者の方で交換した。筆者は、のべ3個のData Link時計を購入しているのだが、これは2代目。3代目の方が先に壊れてしまったので、また引っ張り出して使っている。

 このData Link時計、初めて登場してきた時には、秋葉原等のショップでも販売されたし、ちょっとした話題になったものの、すぐに「一時の流行りモノ」として、あまり見かけなくなった。その最大の理由は、日本語表示ができないことによる実用性の問題と、そもそも英語版にしてからが、あまり多機能でないことだと思われる。Data Link時計は、基本的にアルファベット表示可能なデータ(それもたいした量ではない)を持ち出して、随時表示することができるだけで、外出先で入力する、といったことはできない。表示可能なデータは、電話番号、簡単な備忘録、OutLookのスケジュールデータ(ただし英語版)、といったところで、たとえばhtml文書の表示なんてことは全くできない。

写真1 画面1
Mircosoft/Timex
Data Link Model 150
Data Link Software画面

 それでもこの時計を使っているのは、価格の安さ(日本円にして1万円未満)、携帯時に邪魔にならないことに加えて、何より筆者がこの種のデバイスに対して、大きな期待を持っていないことが理由だと思われる。すでに述べたように、筆者は毎日通勤する仕事形態ではないし、日常的に誰かに会う、というわけでもない。この時計に期待する最も重要な役割は、単に何件かの電話番号を記憶しておくことと、日本とアメリカ(要は海外取材先)の時刻をワンタッチで切り替えること程度なのである。

 もう1つ、このData Link時計が廃れてしまった理由は、付属のアプリケーション(Data Link Software)の制約だろう。Data Link時計の最大の特徴は、PCに蓄えたデータを時計に転送する(一方通行)方法にある。PCからData Link時計へのデータ転送は、付属のアプリケーション(画面1)により、CRT画面でバーコード状のパターンをフラッシュさせることで行うため、ケーブルで接続したり、ドッキングステーションを用意したりする必要がない。これはなかなか素晴らしいアイデアなのだが、対応がCRTディスプレイとWindows 9x系のOSに限られる、という問題がある。日本では、液晶ディスプレイが普及していることに加え、Windows NT系のOSが好まれることも、Data Link時計を時代遅れのものにしたのかもしれない。

 ただし実際には、液晶ディスプレイやWindows NT系のOSでData Link時計を使う方法がある。それは写真2に示したノートブックPCアダプタを使うことだ。このアダプタは、写真の赤いポッチがチカチカと点滅することで、データを時計に転送してくれるのである。これさえあれば、たとえWindows XPがインストールされたノートPCでもData Link時計を使うことが可能だ。アナハイムのOffice MaxでこのノートブックPCアダプタを購入して以来、筆者はData Link時計の母艦としてノートPC上にデータを置いてきた。その方が、海外取材時の取材の約束を時計に転送することができるなど、便利だと考えたからだ。そういうわけで、このアダプタはコンセントアダプタや、モデムケーブルなどといっしょに、旅行セットの中に加えられてきた。

写真2 写真3
Data Link用ノートブックPCアダプタ ラトックシステム REX-USB60

●USBシリアルアダプタでなんとか解決

 筆者が忘れていたのは、このノートブックPCアダプタを使うのにシリアルポートが不可欠である、ということだ。筆者の仕事マシン(デスクトップPC)には、シリアルポートはついているが、海外で使えないとなると機動性が損なわれる。できれば、Satellite 3005-S303でもData Link Softwareを使いたい。

 というわけで、購入したのが写真3のUSBシリアルコンバータ。ラトックシステムのREX-USB60という製品である。Data Link Softwareがコンバータの先にあるアダプタを見つけてくれるのか、最初は不安もあったのだが、接続してみるとREX-USB60が提供するCOM4ポートの先のアダプタで、問題なくデータの転送が可能だった。これで、新しいノートPCでも、これまで通りの利用が可能だ。問題といえば、ノートブックPCアダプタが約30ドル、このUSBシリアルコンバータが5,000円弱で、合計金額が時計そのものに匹敵することだが、これは止むを得ないところだ。

 シリアルポートというと、過去に最も使われてきたのはマウスやモデムだった。しかし、マウスはPS/2ポート、そしてUSBへと移行し、シリアルポートに接続していた外付けモデムはほとんど廃れてしまった。わが国では、アナログモデムそのものが、ISDN、あるいはADSLによってマイナーなものになりつつあるし、まだアナログモデムが不可欠(旅行先での利用等)なノートPCでは標準的に内蔵されるようになっている。最後までシリアルポートが必要なのは、Data Link時計などのガジェット系、ということなのだろう。

□Timexのホームページ(英文)
http://www.timex.com/
□ラトックシステム REX-USB60製品情報
http://www.ratocsystems.com/products/subpage/usb60.html
□関連記事
【9月19日】【元麻布】理想のノートPCを求めて~米国ノートPC選び顛末記2
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010919/hot165.htm

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(2002年1月17日)

[Text by 元麻布春男]


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