元麻布春男の週刊PCホットライン

479ピンになるモバイルPentium 4


●Northwoodこと0.13μmプロセス版Pentium 4登場

 年明けの8日、Intelはかねてよりウワサされていた0.13μmプロセスによるPentium 4プロセッサを発表した。Northwoodという開発コード名で知られてきたこの新しいPentium 4は、これまでの0.18μmプロセスによるPentium 4(開発コード名Willamette)に比べ、2倍にあたる512KBのL2キャッシュを内蔵している。

 L2キャッシュ容量を倍増できたのは、いうまでもなく0.13μmプロセスのおかげだが、プロセスルールの縮小によるメリットはそれだけではない。プロセッサあたりの消費電力の削減という形でも、0.13μmプロセスの恩恵は現れており、同じ動作クロック2GHzであっても、TDP(熱設計電力)はWillametteの71.8Wから52.4Wへと減少している(今回新たに追加された省スペースデスクトップPC向けPentium 4ならさらにTDPは低く44.6Wとなるが、価格プレミアも設定される)。

 消費電力の低減に伴って実現されるのが、ノートPC向けのモバイルプロセッサである。これまでPentium 4は、もっぱらデスクトップPC向けだったが、いよいよモバイル向けにも利用可能になる。8日の発表にはモバイルPentium 4は含まれていないが、春にはPentium 4を搭載したノートPCが登場するだろう。上記の省スペースデスクトップPC向け(データシート上では「intended for sub-45W TDP designs」と表記されている)Pentium 4は、そのさきがけといえるかもしれない。


■モバイルPentium 4とPentium 4の大きな違い

 だが、モバイルPentium 4プロセッサには、省スペースデスクトップPC向けPentium 4(や通常のPentium 4)と決定的に異なる部分が1つある。それは、「パッケージが変わる」ということであり、それに伴い「ソケットが変わる」ということだ。

 現在、デスクトップPC向けのPentium 4に使われているのは、478ピンのFlip-Chip Pin Grid ArrayパッケージでFC-PGA2と略記される。このプロセッサのためのソケットが478-Pin micro PGAソケットであり、mPGA478Bソケットと略記される。このパッケージとソケットは、WillametteコアとNorthwoodコアに共通で用いられる(もちろんWillametteには、最初に提供された423ピンのパッケージも存在する)。

 モバイルPentium 4のパッケージが明確に異なるのは、ピン数が1ピン増えて、479ピンになることである。この479ピンのパッケージに対応したソケットの存在については、すでに公開されている省スペースPC向けPentium 4のデータシート(Intelの文書番号298639-001)の57ページに、チラリと触れられている(と同時にここには476ピンに対応したソケットの存在まで触れられている)。

写真1 写真2
モバイルPentium 4向けのmPGA479Mソケット。右上隅のキーが1ピン分減少しているほかは、ほぼmPGA478Bソケットに等しい デスクトップPC向けのPentium 4向けのmPGA478Bソケット。誤挿入防止に右上隅で2ピン分の穴が省略されている

 試しにIntelのWebサイトでmPGA479Mというキーワードで検索をかけると、「Intel Mobile Processor Micro-FCPGA Socket (mPGA479M) Design Guidelines」というアプリケーションノートが見つかる( http://www.intel.com/design/mobile/applnots/298520.htm )。この文書は、mPGA479Mソケットに関する電気特性や物理特性について定義したものであり、モバイルPentium 4を明言したような記述は一切ない。しかし、省スペースデスクトップPC向けPentium 4のデータシートの記述から、容易にこれがモバイルPentium 4に対応したソケットであることが分かる。そもそも、2001年11月にRevision 1.0のソケット仕様が公開される、新しいIntelのモバイルプロセッサで、モバイルPentium 4以外あり得るだろうか。

 もう1つ、何よりの証拠は、この新しいソケットのスペックだ。大きさ、ピン間のピッチなど、すべて現行のmPGA478Bと同じなのである。写真1が、モバイルPentium 4向けに提供されるmPGA479Mソケットだ。写真では、大きさ等がピンとこないかもしれないが、要はmPGA478Bのキー(写真2で右上隅で2ピン分、穴がなく、誤挿入を防いでいる部分)を1ピン分減らしたもの、と考えればよい。実際、478ピンのPentium 4を、このmPGA479Mソケットに挿すことが可能だ。

 が、その逆、モバイルPentium 4をデスクトップPC用のmPGA478Bソケットに挿すことはできないハズである(そうでなければ、キーを変えた意味がなくなる)。通常、こうしたソケットの変更を行なう理由は、誤挿入によりプロセッサが不可逆的な破壊に至る可能性があり、それを防止するためだ。モバイルPentium 4は、動作電圧が低く、デスクトップPC用マザーボードに誤ってインストールすると、壊れてしまう可能性があるのだろう(逆に、デスクトップPC用のプロセッサをノートPC用のマザーボードに挿しても、単に動作しないだけで、壊れることはない、ということなのだろう)。


■小型ノートへの採用は難しいモバイルPentium 4

 モバイルPentium 4のソケットが、このようにデスクトップPC向けのソケットに酷似しているということが示すのは、おそらくプロセッサ自身にも同じことが言える、ということだ。上記のアプリケーションノートは、ソケットに関する事柄のみ記述したもので、ユーザーに面白い情報はほとんどないのだが、唯一Appendix Z.1に、モバイルPentium 4のメカニカル仕様が掲載されている。これによると、モバイルPentium 4のパッケージは、デスクトップPC向けのPentium 4からIHS(Integrated Heat Spreader)を取り除いたようなもので、大差ないことが分かる。

 もちろん、モバイルPentium 4にFC-PGA以外のパッケージ、たとえばBGAパッケージのものが提供される可能性が全くないとはいえない。また、上述のように動作電圧が引き下げられる可能性が強く、それによる消費電力の低下も期待される。とはいえ、劇的な低下とはならないだろう。現在、P6コアのモバイルプロセッサは、通常版、低電圧版、超低電圧版の3種類が提供されているが、モバイルPentium 4はこのうちの通常版しか置き換えられないのではないか、と思われる。だからこそ、消費電力の低い、モバイルPC専用のプロセッサとしてBaniasが必要になるのだろう。Pentium 4の次の世代では、デスクトップPCとモバイルPCでは、全く異なるコアが使われることになるかもしれない。

□Intel Pentium 4 Processors - Datasheets(英文)
http://developer.intel.com/design/pentium4/datashts/
□関連記事
【1月8日】Intel、Pentium 4 2.2/2.0A GHzを正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0108/intel.htm

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(2002年1月9日)

[Text by 元麻布春男]


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