Hothotレビュー
1万円高くなったが、上位譲りの最新AI機能で評価したい「Google Pixel 8a」
2024年5月13日 23:00
Googleから、スマートフォン「Pixel」シリーズのコストパフォーマンスモデル最新版「Pixel 8a」が登場した。短時間ながら、いち早く試用機に触れる機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。5月14日発売予定で、直販価格は7万2,600円。
Pixel 8シリーズに近い丸みを帯びたデザイン
Pixel 8aは、従来のPixel aシリーズ同様、昨年(2023年)登場した「Pixel 8」シリーズをベースとしつつ、価格を抑えたコストパフォーマンスモデルだ。主な仕様は、表にまとめたとおり。なお、グローバルモデルではストレージ容量が256GBのモデルも用意されるが、日本向けモデルのストレージ容量は128GBのみとなる。
Pixel 8aの本体デザインは、Pixel 8シリーズのデザインに近く、角のカーブが大きくなだらかになっていることが分かる。Pixel 7aと並べてみると、Pixel 8aのほうが丸みを帯びてイメージ的に柔らかい印象だ。
筐体は、従来モデルと同様にリサイクルアルミニウムのフレームと、ディスプレイ面にガラスを組み合わせている。ガラスは米国Corning製強化ガラス「Gorilla Glass 3」を採用。背面側には、左右側面まで伸びる帯状のPixelカメラバーが配置されている点も従来同様だ。
側面はなだらかにカーブしており、背面とほぼ段差なく接続されている。背面も側面付近がカーブしているので、手に持ってもゴツゴツとした印象は感じない。なお、ディスプレイ面は側面付近はカーブしておらず、側面フレームと直線的に接続されている。
本体色はAloe、Bay、Obsidian、Procelainの4色を用意。試用機はブルーを基調としたBayだったが、側面フレームはマット仕上げながら光沢感も残されており、光を反射して鮮やかに輝く点はなかなか好印象。それに対し背面は光沢感を抑えたマット仕上げで、指紋の痕が残りにくい点はうれしい。Pixel aシリーズはコストパフォーマンスモデルではあるが、質感的には上位モデルと遜色がなく、安っぽい印象は皆無だ。
なお、側面、背面とも非常になめらかに仕上げられているため、かなり滑りやすい。裸で持つ場合には滑り落とさないように注意が必要だろう。
サイズは72.7×152.1×8.9mm。0.1~0.2mmほどのごくわずかな違いはあるものの、Pixel 7aとほぼ同サイズと考えて差し支えない。実際に手に持ってみても違いは全く感じなかった。
重量は公称188g、実測で188.1g(SIM未装着時)だった。Pixel 7aから5.5g軽くなっているが、実際に手に持って比べても、ほぼ違いは分からなかった。
【表1】Pixel 8aの主な仕様 | |
---|---|
SoC | Google Tensor G3 |
メモリ/内蔵ストレージ | 8GB LPDDR5x/128GB UFS 3.1 |
セキュリティチップ | Titan M2 |
OS | Android 13 |
OSの更新 | OSアップデート:7年 セキュリティアップデート:7年 |
ディスプレイ | 6.1型有機EL、1,080×2,400ドット、アスペクト比20:9、HDR、リフレッシュレート最大120Hz |
背面カメラ | 超広角:F値2.2、画角120度、1,300万画素センサー(ピクセルピッチ1.12μm) 広角:F値1.89、画角80度、6,400万画素 1/1.73型Quad PDセンサー(ピクセルピッチ0.8μm)、光学式手ブレ補正 |
前面カメラ | F値2.2、画角96.5度、固定フォーカス、1,300万画素センサー(ピクセルピッチ1.12μm) |
モバイル通信 | 5G Sub-6:n1/2/3/5/7/8/12/20/28/38/40/41/66/76/77/78/79 4G LTE:B1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/21/28/38/39/40/41/42/66 3G:1/2/4/5/6/8/19 GSM:850/900/1,800/1,900MHz |
測位システム | GPS、GLONASS、Galileo、QZSS、BeiDou |
対応SIM | nanoSIM+eSIM |
無線LAN | IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6E) |
Bluetooth | Bluetooth v5.3 |
センサー | 近接センサー、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、磁力計、気圧計 |
おサイフケータイ | 対応 |
防水・防塵 | IP67 |
生体認証性能 | ディスプレイ埋め込み型指紋認証センサー、顔認証 |
セキュリティ | Google Open VPN |
外部ポート | USB 3.1 Type-C |
バッテリ容量 | 標準4,492mAh |
ワイヤレス充電 | 対応(Qi準拠) |
サイズ/重量 | 72.7×152.1×8.9mm/188g |
本体色 | Aloe、Bay、Obsidian、Procelain |
【14日12時50分訂正】記事初出時、背面にもガラスを採用しているとしておりましたが、これは誤りです。お詫びして訂正します。
120Hz表示対応の6.1型有機ELを採用
ディスプレイは、表示解像度が1,080×2,400ドット、サイズが6.1型の有機EL「Actua display」を採用。4辺狭額ベゼル仕様で、側面付近まで表示領域となっている点や、上部中央に前面カメラ用のパンチホールが開けられている点なども従来同様。
進化点としては、Pixel aシリーズとして初となる、リフレッシュレート最大120Hz対応という点がある。これにより、動画やゲームなどを、よりなめらかに表示できるようになった。従来までは、aシリーズではリフレッシュレートが落とされており、上位モデルと差別化されていたが、Pixel 8aでは上位モデルと同じリフレッシュレートとなったことはおおいに歓迎できる。
表示品質は、有機ELパネルということで、コントラスト比は100万:1以上、HDR表示にも対応しており、非常に鮮やかな発色かつメリハリのある表示が可能。鮮やかな写真や映像コンテンツなども、本来の色をしっかり表示できるだろう。
カメラはハードウェア的にはPixel 7aとほぼ同じ
Pixel 8aのカメラは、ハードウェア的には従来モデルのPixel 7aとほぼ同じものを搭載している。
背面カメラは、超広角レンズと広角レンズの2眼仕様。超広角レンズはF値2.2、画角120度で、1,300万画素センサー(ピクセルピッチ1.12μm)との組み合わせ。広角レンズはF値1.89、画角80度で光学式手ブレ補正機構を備え、6,400万画素 1/1.73型Quad PDセンサー(ピクセルピッチ0.8μm)との組み合わせ。これはPixel 7aと同じだ。
前面カメラはF値2.2、画角96.5度のパンフォーカスレンズに1,300万画素センサー(ピクセルピッチ1.12μm)の組み合わせ。こちらはPixel 7aと比べてレンズの画角が1.5度広くなっている。
以下の表に、Pixel 8aとPixel 7aのカメラ機能をまとめたが、Pixel 8aで赤字となっている部分が強化点となる。
Pixel 8a | Pixel 7a | |
---|---|---|
リアカメラ : 超広角レンズ | ||
レンズ画角 | 120度 | 120度 |
F値 | F2.2 | F2.2 |
センサー画素数 | 1,300万画素 | 1,300万画素 |
ピクセルピッチ | 1.12μm | 1.12μm |
リアカメラ : 広角レンズ | ||
レンズ画角 | 80度 | 80度 |
F値 | F1.89 | F1.89 |
デジタルズーム倍率 | 最大8倍 | 最大8倍 |
光学式手ブレ補正 | 対応 | 対応 |
センサー | Quad PDセンサー | Quad PDセンサー |
センサーサイズ | 1/1.73型 | 1/1.73型 |
センサー画素数 | 6,400万画素 | 6,400万画素 |
ピクセルピッチ | 0.8μm | 0.8μm |
フロントカメラ | ||
レンズ画角 | 96.5度 | 95度 |
F値 | F2.2 | F2.2 |
センサー画素数 | 1,300万画素 | 1,300万画素 |
ピクセルピッチ | 1.12μm | 1.12μm |
フォーカス | パンフォーカス | パンフォーカス |
Pixel 8a | Pixel 7a |
---|---|
夜景モード | 夜景モード |
長時間露光 | 長時間露光 |
リアルトーン | リアルトーン |
ボケ補正 | ボケ補正 |
顔フォーカス | 顔フォーカス |
消しゴムマジック | 消しゴムマジック |
パノラマ | パノラマ |
手動ホワイトバランス調整 | 手動ホワイトバランス調整 |
ロックされたフォルダ | ロックされたフォルダ |
トップショット | トップショット |
ポートレートモード | ポートレートモード |
ポートレートライト | ポートレートライト |
モーションオートフォーカス | モーションオートフォーカス |
よく撮影する人 | よく撮影する人 |
デュアル露出補正 | デュアル露出補正 |
Live HDR+ | Live HDR+ |
ウルトラHDR | - |
編集マジック | - |
ベストテイク | - |
Pixel 8a | Pixel 7a |
---|---|
4K(30FPS/60FPS)/1080p(30FPS/60FPS) | 4K(30FPS/60FPS)/1080p(30FPS/60FPS) |
シネマティック撮影 | シネマティック撮影 |
スローモーション動画に対応: 最大240FPS | スローモーション動画に対応: 最大240FPS |
4Kタイムラプスと手ぶれ補正 | 4Kタイムラプスと手ぶれ補正 |
天体写真のタイムラプス | 天体写真のタイムラプス |
光学式手ぶれ補正機能 | 光学式手ぶれ補正機能 |
動画手ぶれ補正 | 動画手ぶれ補正 |
4Kシネマティック撮影動画手ぶれ補正 | 4Kシネマティック撮影動画手ぶれ補正 |
4K動画手ぶれ補正(固定) | 4K動画手ぶれ補正(固定) |
1080p動画手ぶれ補正(アクティブ) | 1080p動画手ぶれ補正(アクティブ) |
デジタルズーム最大5倍 | デジタルズーム最大5倍 |
動画形式: HEVC(H.265)とAVC(H.264) | 動画形式: HEVC(H.265)とAVC(H.264) |
ステレオ録音 | ステレオ録音 |
音声拡張機能 | 音声拡張機能 |
ウィンドノイズ低減 | ウィンドノイズ低減 |
音声消しゴムマジック | - |
撮影機能も大きな違いは見られない。広角レンズでのデジタルズームは最大8倍まで対応。背面カメラでの動画撮影は4K/60fpsまで対応する。高速な夜景モードや長時間露光、トップショットなどの撮影機能も利用できる。上位モデルで利用可能な10bit HDR動画撮影など、Pixel 7a同様に省かれている機能も存在しているが、上位モデルと比べても遜色のない写真や動画が撮影できると考えていい。
以下に、いくつか作例を掲載するので、チェックしてみてもらいたい。
AI機能が大きく進化し編集マジックや音声消しゴムマジックも利用可能に
Pixel 8aでは、SoCにPixel 8シリーズと同じTensor G3を採用していることもあり、Pixel 7aと比べてAI関連機能が大きく進化している。
撮影した写真から写り込んだ人物などを削除する「消しゴムマジック」や、集合写真で全員がいい表情になるよう加工する「ベストテイク」、録音アプリでの自動文字起こしなどは引き続き搭載しているが、Pixel 8aでは、Pixel 8シリーズで搭載された「編集マジック」や「音声消しゴムマジック」などの写真、動画の編集機能、画面内の検索したい部分を指で丸くかこって検索する「かこって検索」なども利用可能となっている。
編集マジックでは、写真内の特定のオブジェクトを切り抜いてサイズを変更したり移動させたりできる。音声消しゴムマジックは、動画撮影時のバックグラウンドノイズや人の声などを削除できる。これら機能はPixel 8シリーズならではの特徴であるが、それがPixel 8aでも利用できるのはうれしい。
また、Googleの生成AI機能「Gemini」も標準で利用可能。たとえば、会議を欠席することを伝えるメールの文例を作成したり、指定したWeb記事の要約を作成したり、といったことが簡単に行なえる。Geminiは標準設定では電源ボタン長押しで呼び出せるので、たとえばWeb記事を見ている時に、記事を要約してもらいたければ、記事を開いた状態で電源ボタンを長押ししてGeminiを呼び出し、開いているWebページを添付した上で「要約して」と入力または音声入力するだけでいい。
Geminiの使い勝手や生成される文章などの結果は、まだまだ発展途上と思わされる場面も少なくないが、生成AIを活用して省力化したり、より便利にスマートフォンを活用したりできるようになるという意味では、標準で活用できるのはPixel 8aの魅力的な部分と言えるだろう。
ストレージ256GBモデルが日本で発売予定がないのは少々残念
Pixel 8aのスペックについては、冒頭の表にまとめた通り。SoCにはGoogle独自SoCの「Tensor G3」を採用し、RAMは8GB、内蔵ストレージは128GBとなる。グローバルモデルではストレージ容量256GBモデルも用意されるが、日本で発売予定がない点は残念だ。
セキュリティ機能としては、セキュリティチップ「Titan M2」を搭載しており、高度なセキュリティ機能を提供。また、生体認証機能は前面カメラを利用した顔認証と、ディスプレイ埋め込み型指紋認証に対応。こちらは従来通りではあるが、顔認証はPixel 8シリーズ同様に2Dカメラを使いつつもロック解除だけでなくアプリのサインインや決済認証にも利用可能となっており、利便性が高められている。
モバイル通信は5G Sub6に対応し、国内主要キャリアが利用している5G Sub6バンドに対応している。無線機能は、Wi-Fi 6E(802.11ax)準拠の無線LANと、Bluetooth 5.3に対応。
防水防塵性能は従来同様のIP67準拠と十分な仕様。FeliCaも搭載しており、おサイフケータイにも対応。センサー類は、近接センサー、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロメーター、磁力計、気圧計を搭載する。
OSはAndroid 14で、アップデートはOSアップデート、セキュリティアップデートともに7年を保証する。Pixel 7aはOSアップデートが3年、セキュリティアップデートが7年だっただけに、長期間安心して利用できる点も大きな魅力だ。
物理ボタンは、従来同様に右側面に電源ボタンとボリュームボタンを用意。ポートは、下部側面にUSB 3.1準拠のUSB Type-Cを用意するだけで、オーディオジャックは非搭載。SIMカードトレイは左側面にあり、Nano SIMを1枚装着可能。eSIMも利用可能で、Nano SIM+eSIM、またはeSIM+eSIMのDSDVに対応する。
内蔵バッテリ容量は4,492mAhで、Pixel 7aからわずかに増量。ただ、駆動時間は公称で24時間以上、スーパーバッテリーセーバーモード利用時に最大72時間と、こちらはPixel 7aと同じ。別売のGoogle 30W USB-C充電器などの対応する充電器を利用することで、最大18Wの急速充電が可能で、Qi準拠のワイヤレス充電にも引き続き対応している。
製品の付属品はインストラクションカード、USB 2.0 Type-Cケーブル、USB変換アダプタ、SIMピンで、ACアダプタは付属しない。
オプションとして、専用のケース「Pixel 8aケース」も用意される。こちらは本体のカラーと同じ4色に加えて、オレンジ系の「Coral」を加えた5色展開となる。Pixel 8aケースの直販価格は4,900円。
Pixel 7aから価格は上がったが、コスパは圧倒的
今回試用したPixel 8aは、発売前ということもありベンチマークテストは行なえず、試用できたのも短時間ではあったが、それでもその魅力は十分感じ取ることができた。
まず、Pixel 8と同じSoCのTensor G3を採用していることもあって、動作は非常にキビキビとしているし、120Hz表示対応の6.1型有機ELディスプレイは非常になめらかな映像表示が可能で、使い勝手はほぼ遜色がなかった。
機能面は、カメラ周りがPixel 7a相当ではあるが、こちらもAI処理によってその違いを感じさせないほどに美しい写真が撮影できる。そして、Tensor G3を活用したAI処理による写真や動画の編集機能はPixel 8シリーズとほぼ同じで、この点も非常にありがたい。
そのほか、Geminiを始めとする各種AI機能が利用可能な点も見逃せない。これも、SoCにTensor G3を採用しているからだが、コストパフォーマンスモデルでありながら、上位モデルと同等のAI機能が利用できるという点は、大きな魅力だ。
Pixel 7aは登場時の価格が6万2,700円だったので、Pixel 8aは1万100円高くなっている。このところの円高や物価高騰と考えると仕方のない部分ではあるが、Pixel 6aの頃と比べるとかなりの価格上昇で、ついに7万円台に到達してしまった。
価格だけを見ると、ちょっと高いなと感じるのも事実だが、それでも機能面を考えるとコストパフォーマンスは非常に優れている。上位モデルに匹敵する性能やAI関連機能を備えつつ、比較的安価に購入できるミドルレンジスマートフォンとして、本製品も注目の存在となりそうだ。