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プレイステーション2のDVDプレーヤー機能を検証
~ 画質は満足、操作性には難あり ~

 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)から3月4日に無事発売されたプレイステーション2。もちろん、メインの使い方は、プレイステーション2用の華麗なグラフィックを使ったゲームだろう。しかし、DVDプレーヤーとしての機能も備えていたからこそ、プレイステーション2が一般メディアにまで注目されたことは確かだ。

 まだDVDプレーヤーを持ってない人、持っている人でもゲーム機とDVDプレーヤーを統合して、スペースを確保したいという人は、DVDプレーヤーとしてのプレイステーション2の発売を期待していたことだろう。

 現在、DVDプレーヤーの入門機は標準価格で5万円程度、実売価格で2~3万円程度で販売されている。プレイステーション2は、ほとんど値引きされず(39,800円)販売されているので、DVDプレーヤーとしてだけ見れば安価とはいえなくなっている。しかし、元々プレイステーション、プレイステーション2ソフト用のゲーム機であることを考えれば、まだまだ割安感は残っているともいえる。

 今回は注目の、プレイステーション2のDVDプレーヤーとしての機能と、性能について検証した。


●画質:満足できるレベル

 まずは、最も気になる画質を見てみた。結果からいうと、プレイステーション2のDVDビデオの画質は、入門機として十分満足できるレベルにある。ただし、元情報をあまり加工せずに素直に出す設計をしているようで、全体的にさっぱりした画像になっている。また、シャープすぎて、ザラついた印象もある。

 プレイステーション2では、DVDプレーヤーの設定画面でNR(ノイズリダクション)2段階、輪郭強調±2段階の調節が用意されているが、これらの設定は劇的に効果があるというものではない。良くも悪くも、ナチュラルな絵作りをしているので、モニタ側で自分好みの画質を設定したほうがいいだろう。

 プレイステーション2の映像出力は、標準でコンポジットケーブルが付属する。加えて、オプションでS端子や、DVD専用機ではなじみの深いコンポーネント端子、ソニーのテレビ(モニタ)に搭載されているAVマルチ端子(アナログRGB)での接続も可能。出力に関しては、一般的なDVDプレーヤーと同等以上となっている。

 ここで、注意しなければいけないのは、コンポーネント出力と、RGB出力が排他使用になっていること。デフォルトはRGBになっているので、コンポーネント接続する場合は、事前に標準のコンポジットケーブルなどでモニタと接続して、設定をコンポーネント出力に変更する必要がある。


●音質:光出力で音飛びが発生

オーディオ設定画面。デフォルトでは、ドルビーデジタル、DTSともにOFFとなっている
 プレイステーション2の音声出力は、アナログステレオと、光デジタル出力の2系統を装備。ドルビーデジタル、DTSにも対応している。光デジタルに対応するAVセンター(アンプ)などを接続すれば、ドルビーデジタル、DTSの臨場感を楽しむことができる。

 また、5.1chのドルビーデジタルサウンドは、2chにダウンミックスされてアナログ出力もされる。しかし。DTSについてはダウンミックスできず、5.1ch DTSは、DTS対応アンプに光デジタル接続しないと、聞くことはできない。なお、これは「仕様」(SCEI)とのことだ。

 音質にこだわる人は、別途アンプに光デジタルで接続するだろうから、アナログの音質についての評価は避けるが、映画を普通に鑑賞するにはなんら問題はないとだけ付け加えておく。ただし、DVD再生時のアナログ音声出力が小さいため、ゲームをしているときよりテレビ(モニタ)の音量を大きくする必要がある。特にセリフ(センターチャンネル)の音量が小さく、かなり音量を大きくしないと、聞き取りづらい。

 あと、気になったのが音飛びだ。映画などでは無音部も多いのであまり気づかなかったのだが、サウンドテスト用のディスクを再生すると、明らかに一瞬音声が途切れることがある。ただ、これは編集部で検証した限りでは光出力にのみに見られる現象で、アナログ出力ではみられなかった。また、この現象は特定の場面で起こるわけではないので、どういった状況でそうなるのかは不明だ。そのため、すべてのプレイステーション2や、オーディオ環境で再現されるのかもわからない。

 なお、DVDプレーヤーのデフォルト設定は、ドルビーデジタル、DTSともにOFFとなっているので、対応する機器を接続する場合はONにする必要がある。


●操作性:専用機に負ける

DVDプレーヤーのヘルプ画面で、ショートカット一覧が表示される 画面設定のTVタイプで、表示サイズを設定できる
 DVDプレーヤーの機能については、音声、字幕切り替えや、視聴年齢制限、タイトル/チャプタジャンプなど、今現在のDVDプレーヤーで必要とされる機能はほとんど搭載している。

 これらの機能は、[SELECT]ボタンを押してメニューを表示させるか、コントローラに割り当てられたショーットカットによって操作できる。この割り当ては任意に設定することはできず、割り当てが図解された紙が一枚入っているほか、メニューからヘルプで一覧を表示したり、ユーティリティディスクのオンラインマニュアルの中にも掲載されている。

 また字幕や、音声の切り替えは1ボタンで順次切り替えできるのだが、切り替えできるリストが表示される形式ではない。これはチャプタジャンプでもいえることで、チャプタ番号を入力してみないことには、その番号が有効なものかわからない。

 さらに、納得がいかないのが、画面の種類(TVタイプ)の設定だ。一般的な「16:9」と、「レターボックス」に加え、「パンスキャン」も用意されているのだが、これが“完全”な停止状態でないと変更できないのだ。つまり、変更時には必ずディスクの先頭に戻ることになる。そのため、DVDディスクを入れて再生が始まったあと、停止を2回押して、メニューから呼び出さないといけない。それほど、頻繁に変更することはないだろうが、再生中(少なくとも一時停止中)に、どういった画面になるか確認しながら、変更できるようにしてほしいところだ。なお、このTVタイプの設定は、プレイステーション2の設定画面の「4:3」、「フル」、「16:9」とはまったく連動していない。

 DVDプレーヤーとしての全体的な操作感は、ハッキリいって専用機と比べて明らかに劣っている。根本的に有線のゲームパッドで操作するという時点で負けているのだが、特殊再生の速度がスローと、早送りの2種類しかない、操作への反応が遅いなど、細かく見ていくと「やはりDVDプレーヤーはおまけ機能なのか」と思わせる。

 DVDビデオを見る場合は、プレイステーション2からかなり離れてコントローラを操作する場合が多いと思う。このとき問題になるのが、プレイステーション2の電源がコントローラからON/OFFできないことだ。ゲーム機だから仕方ないといわれれば、それまでなのだが、DVDビデオを見終わった後、コントローラを置いて、本体まで行かないと電源が切れない。せっかく、主電源と電源スイッチを分離してソフトウェアスイッチにした意味がわからない。また、チャプタのプログラムも、音楽タイトルなどでは欲しくなる機能だ。

 以上のように操作性に関しては洗練されておらず、“もしかするとβ版?”という印象すら受ける。


●結論:アップデートに期待

現在のDVDプレーヤーのバージョンは1.00。なるべくはやく、このバージョンが上がることを期待
 これまで、プレイステーション2のDVD再生機能を検証してきたが、結論としては「週末に映画のDVDをレンタルしてきて見る」という人には必要十分、「映画のタイトルを特殊再生しながら見たい」とか、「現在、10万円クラス以上のDVD専用機を所有している」という人にとっては、満足できないというところだろうか。

 ただし、プレイステーション2の場合、DVDプレーヤー機能(ファームウェア)がメモリーカードに書き込まれているので、随時アップデートが可能だ。そのため、今まで述べてきた問題点が将来的に解決される可能性はかなり高い。

 実際に、SCEIではプログレッシブへの対応を予定しているほか、赤外線リモコンなどの発売も明らかにされている。できるだけ早く、赤外線リモコンの発売と、ファームウェアのアップデート(できれば無償で)がなされることを期待したい。

 なお、一部で、メモリーカードにゲームデータのセーブをすると、DVDが再生できくなるという現象が報告されているが、現在のところ編集部や、数人の編集スタッフ個人のプレイステーション2では、そういった現象は発生していない。

□SCEIのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□「プレイステーション2」のホームページ
http://www.scei.co.jp/ps2/index3.html
□関連記事
【3月4日】プレイステーション2試用レポート
~ビデオCDとMP3はやはりだめ、テクスチャ補間は効果あり
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000304/ps2_e2.htm

(2000年3月9日)

[Reported by furukawa@impress.co.jp]


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