東芝のノートPCは今後どうなる?自社生産で勝負をかける
新生dynabook Tシリーズ
東芝のPCと言えば、最近は撤退や他社との統合など、製品よりも事業そのものがどうなるのかという話題のほうが多かった。東芝のPCユーザーの中には、大丈夫だろうかと心配な人もいるだろう。だがその後、撤退や統合の話はなくなり、結果的にこれまでよりも本気で取り組むというポジティブな方向に進んでいる。
具体的には、法人向けPCなどを扱っていた東芝情報機器という子会社と合併し、東芝クライアントソリューション(以下、東芝)に社名を変え、一般向け・法人向けのPC関連製品を扱っていく。つまり、我々一般消費者にとっては、社名が変わっただけで、サポートも従来通り受けられる。
そんな中、東芝から「dynabook Tシリーズ」4製品が発表された。東芝では「新生Tシリーズ」(以下、Tシリーズ)と位置付けている。いずれも15.6型液晶を搭載するノートPCで、CPUやメモリや画面解像度などのスペックが異なる以外は、デザインなどの基本設計は同じだ。新生TシリーズとはいったいどんなPCなのか。メーカーから借りた「dynabook T75/A サテンゴールド」と共に見ていこう。
dynabook T85/A サテンゴールド
dynabook T75/A プレシャスブラック
dynabook T55/A リュクスホワイト
dynabook T45/A サテンゴールド
製品名 | dynabook T85/A | dynabook T75/A | dynabook T55/A | dynabook T45/A |
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OS | Windows 10 Home 64ビット | |||
画面サイズ | 15.6型ワイド | |||
画面解像度 | 1,920×1,080ドット | 1,366×768ドット | ||
CPU | インテル® Core™ i7-6500U プロセッサー | インテル® Core™ i3-6100U プロセッサー | インテル® Celeron® プロセッサー 3855U | |
クロック周波数 | 2.50GHz(最大3.10GHz) | 2.30GHz | 1.60GHz | |
コア数 | 2コア/4スレッド | 2コア/2スレッド | ||
ストレージ | SSHD 1TB | HDD 1TB | ||
メモリ | 16GB(8GB×2)/ 最大16GB | 8GB(8GB×1)/ 最大16GB | 4GB(4GB×1)/最大16GB | |
光学ドライブ | ブルーレイディスクドライブ | DVDスーパーマルチドライブ | ||
無線LAN | IEEE802.11a/b/g/n/ac | |||
駆動時間 | 約6.5時間 | 約7.0時間 | ||
重量 | 約2.4kg | |||
指紋センサー | 「Windows Hello」対応 指紋センサー | ― | ||
カラー | プレシャスブラック/ サテンゴールド | リュクスホワイト/プレシャスブラック/サテンゴールド |
高品質へのこだわり、2年間無償保証(※)を実現
Tシリーズは、ベースとなるモデルに法人向けの「Satellite Bシリーズ」を選択している。その理由として東芝は、法人向けノートPCに必要とされてきた「高品質」と「高性能」という2大特徴を一般向けノートPCにも採用し、「安心の強さ」×「使いやすさ」=「dynabook Quality」としてアピールするとしている。
そのdynabook Qualityをわかりやすい形で示したのが、Tシリーズに追加された「メーカー2年間無償保証(※)」だ。東芝によると、一般的にPCの買い替え理由の半数以上が故障によるものだという。そこで、法人向けPCで培ったノウハウを生かし、品質や堅牢性を高めることで一般向けPCでの2年間長期保証(※)を実現していく。
品質に自信があるからこその2年間長期保証(※)を実施
※dynabook Tシリーズのみ(一部のモデルは除く)。メーカー無償保証期間を2年とし、引取り修理・海外保証(制限付)が2年間となります
真の東芝製PCが誕生
東芝は、TシリーズよりODMでの生産から、自社生産に切り替え、設計も製造も中国の杭州市にある自社工場で行う。この工場は、法人向けモデルを生産していた工場だ。杭州市の周辺には部品メーカーなどの工場が数多くあり、それらのメーカーと協業することで高品質で効率の良い製造を行えるという。さらに、東芝が半導体で培った高度なプロセス制御技術をノートPC内部の基板製造に使用することで精度を高めている。
今後dynabookシリーズは、中国の杭州市にある自社工場で生産される
また、自社工場だからこそ品質管理がしやすく、ODMやOEMで製造するよりも高い品質を維持できる。さらに、連携も容易にでき、あらゆる問題をスピーディに解決できることも強みになる。そもそも、法人向けPCは従来からこの工場で設計製造を行ってきている。信頼性の高さは証明済みと言える。
このようにTシリーズは、ベースとなるモデルから設計製造にいたるまでのすべてが今までとは異なる、いわば東芝が本気を出したノートPCなのだ。
徹底したシミュレーションとテスト体制
品質や堅牢性は、設計段階から行われている徹底したシミュレーションと厳しい製品テストが保証している。その1つが、はんだ接合部の破損シミュレーションだ。
このシミュレーションでは、筐体部品からはんだ接合部まで詳細なモデリングを行うことではんだ接合部の破損を解析する。ほかにも、部品温度や熱伝導位置などをシミュレーションして放熱設計を行うことなどで、壊れにくさを実現している。
さらに製品テストでは、日本ではあまり耳慣れない、HALT(Highly Accelerated Life Test:高加速寿命試験)を行っていることも特徴となっている。HALTは、振動や温度変化などのストレステストを製品が壊れるまで行うことで、数年後に発生するかもしれない故障の可能性を見つけ出すというものだ。
面加圧テストの様子。液晶カバー全体に100kgfの圧力を加えても液晶パネルが割れないかを検証する
SSHDおよびHDDには3D加速度センサーを搭載。あらゆる方向からの衝撃を検出して、ヘッドとプラッターの破損を防止
そのほか、東芝独自のセキュリティ対策として、最大50桁のBIOSパスワード設定、パスワード総当たり攻撃に対する高い耐タンパ―性、BIOSの改ざんチェック・検出機能などを搭載するなど、ハードウェア以外の面でもトラブルを防ぐ仕組みを導入している。
衝撃吸収力の高いクッション材でHDDを保護。本体への衝撃がHDDに伝わりにくくなる
余計な装飾も機能も排除! 日本メーカーらしからぬシンプルさ
それでは、dynabook T75/Aの特徴をチェックする。ほかの製品も筐体は同じなので、Tシリーズ全体の特徴と考えていただいて大丈夫だ。
まず目に付いたのは天板の質感の良さだ。天板の金型に模様を印刷したフィルムをはさみ、フィルムの模様を天板の中に転写する「成形同時加飾転写工法(IMR)」で作られた天板だが、抜群の高級感を醸し出している。サテンゴールドは、サテンと言うだけありドレスの生地のように見える。遠くから見るとヘアライン加工のようにも見えるが、この質感はIMRならではのものだ。
成形同時加飾転写工法でドレスの生地のような質感を出している天板。光の加減で見え方が変わり、どの角度で見てもキレイだ。表面はツルツルしているが指紋は付きにくい
また、液晶のヒンジ部分だけが左右共に銀色の鏡面仕上げになっていて、デザイン上のアクセントになっている。質実剛健なデザインで、日本メーカーのゴテゴテしたノートPCに飽きてきた人にはかなり魅力的に見えるはずだ。
ヒンジは左右共に鏡面仕上げでデザイン上のアクセントになっている。表面処理の質が高く、文字通り鏡のように周囲のものが写り込むので、見る角度で印象が変わる
15.6型のノートPCとしてはスリムで、厚みは23.7mmしかない。ちょっと移動したいときや使用後に片付けたいときなどに、小脇に抱えて快適に持ち運びできる。質量は約2.4kgと一般的な重さだが、重量バランスがいいせいか実際には軽く感じる。
バッテリーは着脱式。最近はバッテリー内蔵のスリムノートPCが多いが、消耗品であるバッテリーはやはり自分で交換したいところ
法人向けのノウハウが生きる! 長時間の使用も問題ないキーボードまわり
続いて、実際に使ってみて気付いた点をあげていこう。まずはキーボード。筆者はキーボードのたわみが気になるタイプだが、dynabook T75/Aのキーボードはまったくたわまない。試しに、キーボードのほぼ中央に位置するJキーをかなり強く押してみたがたわまなかった。変な振動もないので、気持ち良く入力できる。
一般的な日本語キーボード。初めてでもすんなりと使える配列だ
たわまないのは、キーボードプレートの裏側に突起を付けていて、キーボードが沈まないようにしているからとのこと。キーボードの中央部と周辺部分の沈み方に違いがあると、長時間文章を入力する際に疲れやすくなるので、こういった仕組みはすべてのノートPCで採用してほしいほどだ。
かなり強めに押しているが、キーボードはまったくたわまない。最近のノートPCでは見られない剛性の高さを実現していて使いやすい
また、キートップが中央に向かってゆるやかに凹んでいるので、一般的な平らなキートップよりも打鍵感がいい。凹みは0.2mmだが、指で触るとハッキリわかる。主要キーのキーピッチはフルサイズの19mmで、キーストロークは1.5mmと見た目よりも深い。なお、キートップの幅が従来の11.95mmから、13.5mmに大型化。テンキーの使い勝手が向上している。
キートップは、キーの中央に向かって0.2mm凹んでいる。この0.2mmの凹みのおかげでキーが指先に馴染むのだ
従来よりもキートップの幅が広くなったテンキー。従来の11.95mmから13.5mmと、1.55mmも広くなっている
タッチパッドは1枚で構成されているにも関わらず、ボタン部分がクリックしやすい。1枚タイプのタッチパッドは、ボタンの押し込みが固く長時間の使用には向かないものが多いが、Tシリーズは押す際の負荷が軽く、疲れにくくなっている。ベースが法人向けモデルだけあり、使い勝手は本当に良くできている。
かまぼこのような形をした1枚タイプの大型タッチパッド。下半分はどこを押してもクリック感があり、ストロークが深いので使い心地は上々
そして最後に、言われてみればなるほどと感じたパームレストのエッジ部分の処理について触れておきたい。パームレスト部分が下に巻き込むようなデザインをしており、手を置いたときに、ゆるやかなやさしい感触になっている。これなら長時間使っても、手のひらが痛くなることはないだろう。
筐体に対してフタのようにかぶさっているパームレストのエッジ部分。言われなければ気付かないような細かい部分だが、これだけで手のひらへの負担が軽減している
音はオンキヨーがチューニング! 考え尽くされたインターフェースまわり
Tシリーズも従来同様、オーディオメーカーであるオンキヨーのスピーカーを搭載している。ただし、ロゴが「SPEAKERS INSTALLED ONKYO」から、「SOUND BY ONKYO」に変わった。これは、オンキヨー製のスピーカーを搭載していることに加え、オンキヨーが音質をチューニングしていることを証明するロゴだ。
SOUND BY ONKYOのロゴは、オンキヨーが音質をチューニングしている証
従来のオンキヨー製スピーカーに、リスニングポジションに合わせた音質チューニングを施すことで、より自然で広がりのある音が鳴るようになっている。ステレオスピーカーを本体裏面の前側左右に搭載しており、ノートPCにありがちな籠った感じがせず、抜けの良いクリアな音を実現している。
スピーカーは本体裏面の前側左右に搭載。抜けの良いクリアな音を実現している
スピーカーユニットは、素材にこだわり設計。低中域から高音域までダイナミックなサウンドを楽しめる
液晶は従来のTシリーズと同じく、低反射コーティングで映り込みを抑えたClear SuperView LED液晶を搭載。グレア液晶らしい鮮やかな表示と目の疲れにくさを両立している。解像度は1,920×1,080ドットだ。本体にはブルーレイディスクドライブも搭載しているので、オンキヨーのオーディオ機能と相まって、本製品は映画などの鑑賞にも向いている。
画面サイズは15.6型で、解像度は1,920×1,080ドット。鮮やかな発色のClear SuperView LED液晶を使用している
ブルーレイディスクドライブを本体左側に搭載。BDXLに対応しているので、1枚に128GBまでのデータの記録が可能だ
インターフェースは、本体左側に光学ドライブ、LANポート、USB 2.0を2ポート、右側にはUSB 3.0を2ポート、SDメモリーカードスロット、HDMI端子、電源端子をそれぞれ搭載している。このように、インターフェース類は使い勝手の良さを基準に配置されており、どれもストレスを感じることなくスムーズに使うことができる。
左側面のインターフェースは、光学ドライブのほか、奥にLANポート、手前にUSB 2.0を2ポート、一番手前にマイク/ヘッドホン兼用端子を搭載している
右側面のインターフェースは、写真の左からSDメモリーカードスロット、USB 3.0×2ポート、HDMI端子、電源端子となっている
ACアダプターの電源端子は右側面の一番奥にあり、これらも邪魔にならないよう配慮されている。電源プラグもL字型なので、横に出っ張ることなく最小限のスペースでノートPCの後ろにコードを回せるようになっている。
ACアダプターは小型で使いやすい。電源プラグの先がL字型になっていて、ケーブルの取り回しがしやすい
新生Tシリーズは格段に使いやすい! 使用者目線で作られたスタンダードノートPC
dynabook T75/Aを一通り使ってみて感じたのは、使用者目線で作られていることだ。最初に紹介した通り、スタンダードに徹したノートPCだ。そんなシンプルなノートPCに、日本メーカーらしいさまざまな気配りが施されている。なんでもっとこうしなかったのか? とか、もっとこうしてくれていたらさらに使いやすいのに、といった詰めの甘さのような部分がまったくない。使う人のことをかなり真剣に考えて完成させたのだろうなと感じられる、大変使いやすいスタンダードノートPCに仕上がっている。
このようにTシリーズは、実際の製品を見てみると、確実に前よりもよくなっている。法人向け製品のノウハウと方向性を一般向け製品に取り入れたことで、他社にはない東芝の独自性がハッキリと出ている。既存のユーザーも、これからノートPCを買おうと考えている人も、東芝のdynabookを安心して選んで大丈夫だ。
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