インクジェットプリンターといえば、どうしても消耗品のインクの値段が気になってしまうもの。過去には、「インクを交換するよりプリンター本体を買い替えた方が安い」なんて噂話が、まことしやかにささやかれた頃もあった。言い換えると、それほどまでに「インクの寿命と値段」は、インクジェットプリンターを選ぶユーザーにとって気にかかるポイントとなっているのだろう。
オフィスと自宅にそれぞれプリンターを設置して活用している筆者も、やっぱり消耗品の値段は安いほどうれしい。ただ、最近では値段だけでなくインク交換が必要になったときの煩わしさもネックだと感じている。インク切れしそうになったらネットで注文して、もしくはお店に買いに走り、使い終わったインクカートリッジを取り出して新しいものに差し替え、古いインクを処分する……。そういった一連の作業自体もコストになっている気がするのだ。
金銭的なコストと手間のコスト、この2つをどちらも低コスト化するにはどうしたらいいのだろう。と、調べてみたら、どうやら近頃はプリンターメーカーが「インクの大容量化」という方法でこの低コスト化を実現しようとしているようだ。もともとビジネス向けプリンターなどで大容量インクカートリッジを採用し(※1)、ランニングコストを意識した製品作りに定評のあるブラザーも、低コスト化を一段と発展させてきている。
その急先鋒となるモデルと言えるのが、9月に販売を開始したインクジェットプリンター・複合機、PRIVIOシリーズの「DCP-J988N」だ。さまざまな面で低コストを実現する3つの特長をもっている。さっそく、その中身に迫ってみよう。
自動車・バイクの主に耐久レースでは、タイヤ交換などのためのピットストップと次のピットストップまでを“スティント”という単位で表現することがある。1スティントあたりのタイヤ消費などを長持ちさせ、サーキットを多く周回するほどライバルより優位に立つことができるのだ。ブラザーの新しい複合機であるDCP-J988Nの場合、インクカートリッジの交換から次の交換までの“スティント”が1年にわずか1回、つまり「1スティント1年間」を実現する。
ファーストタンクは、簡単に言ってしまえば「カートリッジ式のインクを超・大容量にして長持ちさせよう」というシンプルな発想だ。同社の標準モデル対応のインクカートリッジ(※2)に比べて、ブラックが約16倍、それ以外のシアン、マゼンタ、イエローの3色は約10倍の容量にまで拡大させている。印刷可能枚数にすると、モノクロで約6000枚、カラーで約5000枚(それぞれA4サイズ時)だ(※3)。
イメージしにくいので、例えば紙を重ねた時の高さを考えてみよう。一般的なコピー用紙(上質紙)が1枚あたり0.08mm程度の厚さなので、それを5000~6000枚重ねると、40~48cmもの紙のタワーができあがることになる。ちょっとやそっとの期間でプリントできると思えない量ではないだろうか……。
そんな印刷枚数を実現する大容量インクカートリッジのおかげで、一定条件のもと1カ月間に300枚のペースでカラー印刷したとしても、1年間はインクカートリッジの交換は不要となる。単純計算で1日あたり10枚ずつプリントできることになるわけで、SOHOや小規模なオフィスであればビジネス用途でも十分まかなえる。ホームユースなら十分過ぎるほどだろう。
以前からブラザーのインクジェットプリンターは、インクカートリッジの交換に手間がかからず、誰でも簡単に行なえるのも特長。前面からカバーを開けて、ワンタッチでカートリッジを取り出し、新しいものを挿入するだけだ。交換前後に本体側で特別な操作をする必要はなく、インクで手や服を汚したりする心配も少なく交換できる仕組みになっている。DCP-J988Nでも、それはしっかり引き継がれている。
1年間交換する必要がないということは、替えのインクカートリッジを購入して、使い終わったものを取り出して交換し、処分する……という作業もせいぜい1年に1回こなせばいいだけ。例えばオフィスなら期末に、自宅なら年賀状シーズンの前に、といったタイミングが考えられる。そんな都合のいい時期にインク切れになるとは限らないけれど、いずれにしろ作業コストは間違いなく削減できるはずだ。
交換の手間という意味でのコストを下げられるのもうれしいけれど、DCP-J988Nでは、新たに「サブタンク」をプリンター本体に内蔵しており、これによって価格と作業の両面から低コスト化を可能にしている。
サブタンクは、装着したインクカートリッジの中身の一部を蓄えておく役割をもつ。ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色それぞれに独立したサブタンクが用意されていて、インクカートリッジが空になるまで常に一定量のインクがサブタンク内にある状態となる。
この仕組みの良いところは「完全に使い切れる」ことだ。従来機種でもカートリッジ内が空になるまできっちり使い切れていたものの、完全になくなるまで印刷しようとすると、途中でインクが足りなくなって印刷の最中に中断してしまう可能性があった。それを防ぐため、事前にインク切れを予告するアラートが表示されたら速やかに交換していた人もいるのではないだろうか。つまり、その時点ではカートリッジ内にインクがわずかに残っていて、無駄になっている可能性もあったのだ。
一方、DCP-J988Nのサブタンク方式なら、カートリッジ内が空になった瞬間にインク切れのアラートが表示されるものの、その後もサブタンク内のインクで約200枚は印刷できる(※4)。その間に新しいインクカートリッジに交換すればインク切れにはならないし、カートリッジ内もすでに完全に使い切っているので、インクを無駄にすることがない。印刷が中断されることもないわけだ。
インクカートリッジのケース自体が透明になっており、各インクの残量がどれくらいあるのか、本当に空になるまで使い切っているか、しっかり確認できるようになったのも便利だ。本体ディスプレイやPC用ユーティリティなどからインク残量を確認できるけれども、実際に目で見て交換タイミングを正しく判断できるのは精神的な意味でもメリットが大きい。
最後まで完全に使い切れることと、透明タンクで確実に交換タイミングを把握できること、といった無駄のないインク消費によるコスト削減の効果は、金額としては見えにくいかもしれない。けれど、「効率よくインクを使えているな」という実感が得やすい部分でもあり、体感的なコスト削減効果は決して小さくないのではないだろうか。
これまでのブラザーのインクジェットプリンターも、ランニングコストの安さには目を見張るものがあった。が、今回のDCP-J988Nはさらにコストダウンを進めている。
標準モデルのDCP-J978Nは、カラー印刷で約8.4円/枚、モノクロ印刷で約2.7円/枚(いずれもA4文書印刷時のインク代)。それに対して新しいDCP-J988Nは、カラー約3.7円/枚、モノクロ約0.7円/枚。数字だけを見ても、確実にランニングコストは安くなっている。印刷枚数が増えれば、当然この差がどんどん大きくなってくる。
たしかに、1つあたりのインクカートリッジ容量が大きくなったぶん、従来よりインクカートリッジ単体の価格は上がっている。けれども、大容量化でカートリッジの交換頻度が劇的に少なくなることもあり、印刷すればするほどコストダウンの効果が表れやすい。
従来の約10~16倍容量の「ファーストタンク」が「交換の手間」を削減し、大容量インクカートリッジと「サブタンク」による効率アップが「交換の手間+費用」の削減を可能にした。そして直接的なランニングコストまでをも削減することで、トータルで圧倒的なコストダウンを実現したのが新しいインクジェットプリンター・複合機「DCP-J988N」だ。
もちろんDCP-J988Nは複合機なので、プリンターとしての機能の他に、書類のコピーや写真のスキャン機能を備える。従来機種から受け継ぐオンラインストレージなどのクラウドサービスと連携したスキャンデータの保存に加えて、USBメモリやSDカード内のデータを直接印刷できる「ダイレクトプリント」機能もあるので、ビジネスではもちろんのこと、プライベート利用でも活躍の機会は多い。
大容量モデルなのにサイズが435×341×195mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトで、置き場所を選ばないのがどんな人にもおすすめしやすいポイントだ。
背面にある手差しトレイで、封筒や葉書などのプリントもOK
フラットベッド型のスキャナーで画像データとして読み込める
ADFに挿入することで自動両面コピーが可能。自動両面プリントにも対応する
USBストレージ、SDカード内のデータを印刷できるダイレクトプリント機能
それ以外にも、本体ディスプレイ上から、あらかじめ用意されたさまざまなテンプレートを選ぶだけで、凝ったデザインの年賀状を素早く、簡単に印刷できる機能も用意されている(※5)。
年末を迎えるこの時期、年賀状の作成をはじめとして各種行事が盛りだくさんであることを考えると、古いプリンターをリフレッシュする1つのタイミングでもある。また、最初のインクカートリッジで1年使え、その後もプリンターを数年は使い続けることになると考えれば、早めに導入しておくことで来年2019年10月1日の消費増税後のコストアップ対策にもなるはず。
小さいのに大容量でパワフルに使えるDCP-J988Nを、オフィスにも家庭にも使えるインクジェットプリンター・複合機として身近に1台置いてみてはいかがだろうか。
※1 「ビジネス向けプリンター」とはMFC-J6995CDW、MFC-J6980CDW、MFC-J6580CDW、MFC-J6973CDWです。その他の機種については各製品ページをご参照ください。
※2 LC3111BK/C/M/Y
※3 印刷コスト・印刷枚数算出に使用したインクカートリッジはLC3135BK/C/M/Yです。測定データ及び測定条件につきましてはブラザーホームページをご参照下さい
※4 ISO/IEC 24711準拠の目安枚数。使用状況により異なります
※5 インターネット接続環境が必要です
現在ファーストタンク対応モデルは、最大5000円お得なキャッシュバックキャンペーンを実施中だ(2018年10月1日~2019年1月6日までに対象製品を購入した人が対象)。
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