イベントレポート

従来の3分の1程度のサイズで、持ち運びが容易な小型ACアダプタ登場

~79~89ドル程度で今春にも出荷を開始

既存のACアダプタに比べると、3分の1~4分の1のサイズに小型化される

 2014年のCESで参考出展されていたFINsixの小型ACアダプタ「DART」が今夏の出荷を目指して、Sands Expo Convention CenterやShowStoppersの会場で展示されていた。

 開発元のFINsixは、マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトしたスタートアップ企業。基幹となる技術はMITで開発された超高周波スイッチング技術で、この技術をもとにACアダプタの小型化を進めている。具体的には、一般的な電源アダプタが利用するkHz単位というスイッチング周波数から、MHz単位まで周波数を上げて、より小刻みに電流を処理している。これによりキャパシタなどの部品点数を削減し、電源回路全体サイズの小型化を実現した。理論的にはAC電源回路全体では現在の10倍の密度にすることが可能としている。

 同じ出力であればより小型に、同じサイズであればより大出力を取り出すことができる。部品点数の削減は製造の低コスト化や故障率の低減にもつながり、メリットも大きい。

2014年のCESでは参考出展だったが、2015年5月頃の出荷を目指して準備が始まった

 FINsixでは最初の製品として、65W出力のユニバーサルACアダプタを2015年5月にも出荷する予定で、現在予約を受け付けている。予価は89ドル。

 65WまでのACアダプタを利用する各社のPCで利用できる。各社ごとに異なるコネクタ部分はケーブルの先端にチップと呼ぶアダプタを付けて対応する。対応可能な主なメーカーは、Acer、ASUS、Dell、富士通、HP、SONY(VAIO)、Lenovo、MSI、 Panasonic、Toshiba、NECなど。

 60Wクラスでは、例えばAppleのACアダプタとの比較で、体積比にして1:4、重量比にして1:6という小型軽量化を実現している。Appleのアダプタの形状はユーザーへの認知度も高いため、積極的に比較対象として展示している。

 ユニバーサルACアダプタであるため、もちろん60WクラスのApple製品でも利用可能なわけだが(MacBook Airや13インチMacBook Pro Retinaなど)、コネクタ部分のMagSafeがライセンスを課題としてサードパーティでは利用できない。この点については、継続してApple側に利用の許諾を求めていくという姿勢は昨年(2014年)と変わっていない。会場では、デモンストレーション限定で、独自に加工したケーブルを使って、MacBookの稼働デモも行なわれている。

 なお、この技術のライセンス供与も検討するとしており、将来的にはユニバーサルタイプだけでなく、メーカー純正品として採用される可能性もある。

240Vにも対応するので、ヨーロッパ圏などへの旅行でも利用できる
つまめるサイズの大きさで65Wの出力に対応する
ケーブルの途中にUSBのポートが用意されており、ここから2.1Aの充電も行なえる
ケーブルの先端に付けるチップ。標準で7つ付いているほか、写真のLenovo用チップも用意される見通し
対応予定のメーカー。15型以上の大型ノートPCでは65W以上のアダプタを使っているケースが多いが、13型クラスまでならほぼ対応が可能
Mac向けのMagSafeアダプタは昨年に続いて「交渉中」の段階。デモンストレーションでは独自に改造したケーブルで動作状況を見せていた

 小型ACアダプタは、同じくスタートアップ企業のZoltからも発表されている。社名と同じ製品「Zolt」も、前述のDARTと同様に電流のスイッチング技術を従来製品から一新することで小型化を実現したとしている。技術の中には複数の特許も含まれているとのこと。

 合計70Wの出力を、より小型のACアダプタから取り出せるのがセールスポイントで、こちらも現在は先行予約を受付中。今春以降の出荷を予定している。出荷後の価格は99.99ドルだが、先行予約期間は79.99ドルで予約を受け付ける。

小型のACアダプタで、1台のノートPCを含む計3台のデバイスを充電可能

 ZoltもDARTと同様にケーブルの先端にチップを取り付けることで各社で異なるACコネクタの形状に対応する。DARTとの大きな違いはACアダプタケーブルの接続にUSB形状のポートが使われている点だ。Zolt本体には3つのUSBポートがあり、1つはノートPC専用で高出力に対応。残りの2つはスマートフォンやタブレットの充電に利用できる。

 USBのBタイプのコネクタを持つ専用ケーブルが付属しており、ノートブックの接続はこのケーブルの反対側に各社のチップを付けて利用する。Apple社のMagSafeに関しては現在交渉中とコメントしており、製品出荷後に専用ケーブルを別途提供したいとしている。

 本体は八角柱の形状をとっており、使用しないときにはケーブルを巻き付けても滑らない工夫がされている。通電時には天面のLEDが点灯するほか、コンセント部分を折り畳んで収納できるなど、運用時、運搬時の工夫もなされている。

乱暴な比較だが、ノートPC、iPad、iPhoneで占有してしまうテーブルタップも1つのコンセントでスマートに利用できる
六角柱のデザインなため、ケーブルを巻き付けてもスリップしにくい
Zoltの本体。出力ポートはUSB形状の3ポート。1つはノートPC向けに高出力
コンセント部分は折りたたみが可能
通電時は天面のLEDが点灯する仕組み
専用ケーブルのPC側に取り付けて利用するチップ。各メーカー対応のものが揃っている

 USB充電器をスマート化した「Powerslayer blu」が、velvetwireから出展されている。同社によるとUSB充電器のなかにマイクロプロセッサとBluetoothを搭載することで、より効率的かつ安全な充電環境を提供するとしている。

 iPhoneとAndroidスマートフォン向けに専用アプリケーションを提供することで、デバイスの満充電までに必要な時間をアプリケーション上で表示するほか、急速充電や通常充電の設定を行なうことで、より省電力な充電方法を選択することができるという。満充電になれば給電を遮断し、過充電におけるバッテリの劣化を予防する。

velvetwireの出展した「Powerslayer blu」

 Bluetooth機能では、デバイス間連携によって、例えばiPhoneをPowerslayer bluで充電していてその場を離れても、他の指定したスマートフォン宛てにプッシュ通知で充電終了などを伝えることができるという。そのほか、近くにあるPowerslayer bluをアプリケーションから探す機能などもある。

 販売価格は89ドル。効率的な充電のために利用するケーブルもシールド性の高いものを推奨している。

USB充電器にBluetooth機能を内蔵するスマート充電器
充電までの残り時間を表示するほか、満充電の時間をターゲットとすることで急速充電を抑えて効率よく指定時間までに満充電する機能も装備
シールド性の高いケーブルを利用することで効率が増すとして、セットパッケージにはプレミアムケーブルも付属する。Micro USB版とLightning版を用意

(矢作 晃)