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これはPhoenixか?最新Ryzen PRO搭載と思しき「ThinkPad Z」登場

亜麻繊維の外装を採用したThinkPad Z13 Gen 2。Phoenixと見られるRyzen PROを搭載

 Lenovoは2月27日(現地時間)、ThinkPad Zシリーズの第2世代製品として、13型の「ThinkPad Z13 Gen 2」と16型の「ThinkPad Z16 Gen 2」を発表した。注目ポイントはいずれもAMDの開発コードネーム「Phoenix」の新チップが採用されている可能性が高いこと。

 このほかにも、Classic ThinkPadと総称されるThinkPad X/T/L/Eシリーズの各製品の2023年モデルを発表し、MWCで展示した。

AMD Ryzen PROを採用。フラグシップで展開するThinkPad Zシリーズ

システム上ではCPUがAMD Eng Sampleと表示。Dragon Range、Phoenix、Rembrant-R、Barcelo-Rのうち、この時点でES(Engineering Sample)であるのはPhoenixだけと考えられるので、Phoenixを採用していることでほぼ間違いないだろう、論理CPUコアは16個あったので、8コア/16スレッドというスペックである可能性が高い

 ThinkPad Zは、昨年のCESに合わせて発表された新しいシリーズで、ThinkPad X1シリーズと並列のフラグシップ製品として投入された。

 ThinkPad X1シリーズが、従来ユーザー向けのフラグシップ製品であるのに対して、ThinkPad ZシリーズはZ世代と呼ばれる若い世代向けのフラグシップ製品となる。

 違うのはターゲット層だけでなくCPUもだ。今年のCESで発表された2023年モデルのThinkPad X1シリーズの3製品(ThinkPad X1 Carbon Gen 11/Yoga Gen 8/Nano Gen 3)がいずれも第13世代Coreを採用しているのに対して、ThinkPad Zシリーズは昨年の第1世代も、今回発表された第2世代もRyzenを搭載していることが大きな違いとなる。

 現行のThinkPad Z13 Gen 1、ThinkPad Z16 Gen 1にはいずれもモバイル向けのRyzen 6000シリーズが採用されていた。特にThinkPad Z13 Gen 1に関しては、Ryzen 7 PRO 6860Zというやや高クロック動作の特別版(有り体に言えば選別品)がLenovo限定として提供されており、より高性能を必要とするユーザーにとっては注目の存在になっていた。

 今回のThinkPad Z13/16 Gen 2でもCPUはAMDになっており、モバイル向けの「Ryzen 7000シリーズ」が搭載される。

 ただ、Lenovoが公開した資料にはCPUとして、「Latest generation AMD Ryzen 7000 series Mobile Processors」(原文ママ、日本語にすると最新AMD Ryzen 7000シリーズ・モバイルプロセッサ)となっており、すでに発表されたCPUにしては非常に微妙な表現になっている。

 要するに「最新CPUを搭載しているけど、どれを搭載しているかはまだCPUメーカーが発表していないので言えません」という時のメーカーの常套句的な表現になる。

 では、この“最新”Ryzen 7000モバイルの正体はなんなのかと言えば、今後AMDが発表するRyzen 7000モバイルのPRO版(Intelで言えばvProに相当するビジネス向けの管理機能などを追加したバージョンのこと)である可能性が高い。

 というのも、Gen1のThinkPad Z13/16はいずれもPRO版のRyzen 6000モバイルを採用していたからだ。ビジネスユーザー向けのThinkPadという位置付けを考えれば、その確度は高いと言えるだろう。

 今年1月のCESの時点では、AMDはPRO版のRyzen 7000モバイルを発表しておらず、本年のどこかのタイミングで発表するとしていた。それが、ThinkPad Z13/16 Gen 2に搭載されることになったが、AMDはまだ発表していないため、こうした微妙な表現になっていると思われる。

 また、Lenovoの関係者は明確には言わなかったが、今回のThinkPad Z13/16に搭載されているRyzen 7000モバイルは、開発コードネーム「Phoenix」で知られるバージョンになりそうだ。

 Ryzen 7000モバイルには、開発コードネームで言うとDragon Range、Phoenix、Rembrant-R、Barcelo-Rなどがあるのだが、Rembrant-R、Barcelo-RはRefreshを意味するRが付いていることから分かるように、リフレッシュ版でブランド変更の製品となる。

 Dragon RangeはIntelのCore HXと同じように、デスクトップPCのチップをデスクトップ・リプレースメント向けとしてパッケージをBGAにして投入する製品になるので、純粋な意味での新設計のノートPC向け製品は「Phoenix」だけになる。

 なお、AMDはPhoenixのUシリーズ版(TDP 28W~15W)は存在だけは明らかにしているが、PRO向けではない一般消費者向けのSKUもまだ未発表だ。

 このため、今後PhoenixのUシリーズ版、そしてそのPRO版が発表され、その時にThinkPad Z13 Gen 2にどのSKUが採用されているのかが明らかになるのではないだろうか。

外装はビーガンレザーからバイオベース素材の亜麻繊維に

ThinkPad Z13 Gen 2、PCとしての骨骼はキープコンセプトでポートなどの配置に変更はない

 ThinkPad Z13 Gen 2は外装にも手が加えられている。ThinkPad Z13 Gen 1は、ビーガンレザーというスペシャルなAカバー(ディスプレイ天板)が用意されていたが、今回は「亜麻繊維」(Flax Fiber)と呼ばれる亜麻(麻の一種)から作られた繊維を外装とするAカバーが用意されているのだ。

 これは外装もできるだけ自然に容易に戻すことができる素材を使いたいというLenovoの意向で採用されたもので、バイオベース素材を利用することで、持続可能なPC産業を実現したいという想いを具現化したものになる。

ThinkPad Z13 Gen 2の「亜麻繊維ブロンズアルミ」カラーの外装
亜麻繊維素材を採用している。植物由来の素材を採用することで持続可能なPC産業を目指す
強度にも配慮されており、内側にはアルミニウムが利用されている

 ただし、亜麻繊維だけでは強度の課題をクリアにするのが難しいということもあり、内側にはアルミニウムの素材を使って、亜麻繊維とアルミニウムの2層構造になっている。このため、Aカバーの強度は十分確保されている。

 それ以外の部分は基本的にはThinkPad Z13 Gen 1を踏襲。外形なども同様で、トラックポイントを押すとメニューを表示する機能や、タッチパッドの一部がトラックポイントのボタンを兼ねていて、広くタッチパッドを使える点など変わらない。また、セルラー通信も5Gには非対応で、LTEのみのといった点まで同じになっている。

カメラモジュールは昨年モデルと同じUSB接続のカメラに

 なお、非常に細かな点だが、AMDのPhoenixでは新しくISP(Image Signal Processor)を内蔵しており、それを利用してカメラをMIPI CSI-2でCPUに直結して、より高画質な静止画、動画の処理を行なえるようになっていることがCESで明らかにされている。

 しかし、今回のThinkPad Z13では、カメラは従来通りUSB接続のカメラのみとなっており、MIPI CSI-2接続のカメラは用意されていないようだ。

 AMDは当初のパッケージではソケットの都合でMIPI CSI-2をサポートしないが、後にリリースする新しいパッケージではサポートするとしており、後半のモデルでの実装を期待したい。

ThinkPad Z16 Gen 2
ThinkPad Z16 Gen 2のCPUもPhoenixベースのRyzen PRO 7000シリーズになる可能性が高い、ただし、こちらはGPUドライバーの表記にはHXと表示されていた。PhoniexであればHSのはずだが、そこはベータドライバーだからかもしれない。dGPUとしてRadeon RX 6500Mを搭載

ThinkPad X13 Gen 4などのClassic ThinkPadシリーズも発表

ThinkPad X13 Gen 4(左)とThinkPad X13 Yoga Gen 4(右)

 ほかにも「ThinkPad X13 Gen 4」、「ThinkPad X13 Yoga Gen 4」などの日本で人気のXシリーズの最新製品や、「ThinkPad T14 Gen 4」、「ThinkPad L」シリーズ、「ThinkPad E」シリーズなどの、いわゆる「Classic ThinkPad」と呼ばれるメインストリーム向けも発表されている。

 こちらはIntelから第13世代Coreなどが発表されたことを受けての新製品で、多くの製品は従来モデルのCPUを第13世代Coreに更新したものとなる。それぞれの詳しいスペックなどは別記事をご参照いただき、ここでは写真で紹介していきたい。

 なお、多くの製品で第13世代CoreはvPro対応版も選べるとのことだが、現時点でIntelからvPro対応版の第13世代Coreは発表されていない。

ThinkPad X13 Gen 4

ThinkPad X13 Gen 4。右がディープブラック、左がストームグレー

 13.3型16:10比のディスプレイを採用しているThinkPad X13シリーズ。Gen 3からの大きな進化点はCPUが第13世代Core、Ryzen 7000モバイルになったことで以外は基本仕様は変わらない。ディープブラックとストームグレーの2色展開になっている。重量は1.14kg~。

本体左側面
本体右側面
英語キーボード

ThinkPad X13 Yoga Gen 4

ThinkPad X13 Yoga Gen 4のストームグレー

 13.3型16:10比のディスプレイを採用しているThinkPad X13 Yogaシリーズ。こちらもGen 3からの大きな進化点はCPUが第13世代Coreになったことで、X13との違いは360度回転ヒンジを持っている2in1デバイスであること、CPUにAMDの選択肢がないことになる。ディープブラックとストームグレーの2色展開。重量は1.2kg~。

テントモード

ThinkPad T14 Gen 4

ThinkPad T14 Gen 4

 14型16:10比のディスプレイを採用しているThinkPad T14シリーズの最新製品。Gen 3からの大きな進化点はCPUが第13世代CoreないしはRyzen 7000モバイルに強化されたこと。従来モデルと同じようにNVIDIAのdGPU(MX550 4GB)をオプションで選択可能。重量は1.32kg~。

ThinkPad T16 Gen 2

ThinkPad T16 Gen 2

 16型16:10比のディスプレイを採用しているThinkPad T16シリーズの最新製品、Gen 3からの大きな進化点はCPUが第13世代CoreないしはRyzen 7000モバイルに強化されたこと。従来モデルと同じようにNVIDIAのdGPU(MX550 4GB)をオプションで選択可能。重量は1.67kg。

そのほか

 ほかにも、ThinkPad Lシリーズ、ThinkPad Eシリーズ、そしてAlder LakeのEコアだけで構成されるIntel N200/N100を搭載した着脱式2in1デバイス「IdeaPad Duet 3i」などが展示された。

ThinkPad L13 Gen 4
ThinkPad L16 Gen 4
ThinkPad E14 Gen 5
ThinkPad E16 Gen 1
IdeaPad Duet 3i