やじうまミニレビュー

176層TLC NANDを採用したSeagateのハイエンドSSD「FireCuda 530」レビュー

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Seagate 「FireCuda 530」 2TBモデル

 Seagateから、ハイエンドゲーマーおよびクリエイターをターゲットとするハイエンドSSD新モデル「FireCuda 530」が登場した。FireCudaシリーズSSDとしては、従来モデルの「FireCuda 520」に続くPCI Express 4.0 x4接続対応モデルとなり、アクセス速度がさらに高められている。今回、FireCuda 530の2TBモデルを試用する機会を得たので、特徴を紹介するとともに、ベンチマークテストをとおして性能をチェックしていく。

 500GB/1TBモデルは8月6日に発売済み、2TB/4TBモデルは9月10日発売予定。価格は500GBが15,460円、1TBが26,470円、2TBが54,380円、4TBが110,910円。

リード/ライトともに高速化され、シーケンシャルリードは7,000MB/s越えを実現

 FireCuda 530の主な仕様はこちらの記事にまとめられているが、あらためて簡単に紹介する。

 FireCuda 530はPCI Express 4.0 x4接続対応のSSDで、シーゲート製SSDとしては、従来モデルとなるFireCuda 520の上位に位置付けられるハイエンドモデルとなる。主な仕様は以下の表にまとめたとおりで、Phisonと共同開発した最新コントローラ「E18」と、Micron製の176層3D TLC NANDを採用することにより、従来モデルを大きく上回るアクセス速度を実現しつつ、優れた耐久性も兼ね備えている点が特徴だ。

 容量は、500GB/1TB/2TB/4TBをラインナップ。昨今のゲームデータ大容量化の流れを受け、4TBモデルも追加したという。

【表1】FireCuda 530の主な仕様
容量500GB1TB2TB4TB
フォームファクタM.2 2280
インターフェイスPCI Express 4.0 x4
プロトコルNVMe 1.4
NANDフラッシュメモリMicron 176層3D TLC NAND
コントローラE18(Phison共同開発)
DRAMキャッシュ容量非公開
SLCキャッシュ容量可変型「ダイナミックSLCキャッシュ」搭載(容量非公開)
シーケンシャルリード(128KB)7,000MB/s7,300MB/s
シーケンシャルライト(128KB)3,000MB/s6,000MB/s6,900MB/s
ランダムリード(4KB/QD32)400,000IOPS800,000IOPS1,000,000IOPS
ランダムライト(4KB/QD32)700,000IOPS1,000,000IOPS
総書き込み容量(TBW)640TB1,275TB2,550TB5,100TB
平均故障間隔(MTBF)180万時間
Rescueデータ・リカバリ・サービス3年
保証期間5年

 アクセス速度は容量によってやや違いが見られるものの、最も高速となる2TB/4TBモデルでは、シーケンシャルリードが最大7,300MB/s、シーケンシャルライトが最大6,900MB/sに達している。従来モデルのFireCuda 520では、シーケンシャルリードが最大5,000MB/s、シーケンシャルライトが最大4,400MB/sだったため、リード、ライトともに大幅な速度向上を実現。また、ランダムリード、ランダムライトも最大100万IOPSと、こちらも従来モデルから大きく向上。まさしくハイエンドSSDらしい高性能モデルとなっている。

 フォームファクタはM.2 2280で、500GBと1TBモデルは片面実装、2TBと4TBモデルは両面実装となる。いずれもDRAMキャッシュは搭載しているが、容量は非公開。なお、今回試用した2TBモデルで確認したところ、SKhynixの8Gbit(1GB)DDR4-2666チップ「H5AN8G6NCJ-RVKC」が基板の表裏に1チップずつ搭載されていた。このことから、2TBモデルではDRAMキャッシュを2GB搭載すると考えていいだろう。

シーゲートのハイエンドSSD新モデル「FireCuda 530」。フォームファクタはM.2 2280、接続インターフェイスはPCI Express 4.0 x4、プロトコルはNVMe 1.4
今回試用した2TBモデルでは、裏面にもチップを搭載。4TBモデルも両面実装だが、500GB/1TBモデルは片面実装となる
Phisonと共同開発した最新コントローラ「E18」を採用
NANDフラッシュメモリにはMicron製の176層3D TLC NANDを採用
試用した2TBモデルで確認したところ、SKhynixの8Gbit(1GB)DDR4-2666チップ「H5AN8G6NCJ-RVKC」を基板の表裏に1チップずつ搭載していた
基板表。中央にE18コントローラとキャッシュ用DRAMチップ、4個のNANDフラッシュメモリチップを搭載している
基板裏。こちらにはキャッシュ用DRAMチップと、4個のNANDフラッシュメモリチップを搭載

 また、NANDフラッシュメモリ内の一部をSLCキャッシュとして利用し書き込み速度の遅さを改善する「ダイナミックSLCキャッシュ」機能も搭載。SLCキャッシュ領域は固定領域と容量可変領域を備え、アクセス状況に応じてSLCキャッシュ容量を自動的に増減させる仕組みとなっているそうだが、こちらも容量は非公開となっている。

 耐久性は、平均故障間隔が180万時間、保証期間は5年間と、従来モデル同様の優れた耐久性を実現。ただ、総書き込み容量に関しては、従来モデルからやや少なくなっている。例えば2TBモデルで比較すると、従来モデルでは3,600TBだったのに対し、FireCuda 530では2,550TBとなっている。

 ただ総書き込み容量が2,550TBということは、1日あたり約1.4TBの書き込みを行なったとしても5年間利用できる計算。また1TBモデルでも1日あたり700GB書き込んでも5年利用可能。そのため、通常利用の範囲内であれば耐久性の不安はまったくないだろう。

 このほか、シーゲートが提供しているデータ復旧サービス「Rescue データ・リカバリ・サービス」も3年間付帯する。このデータ復旧サービスはシーゲートの技術者によるデータ復旧サービスで、95%と高い成功率を誇るという。もし万が一トラブルが発生したとしても、3年間はこのデータ復旧サービスが利用できるため、この点でも安心して利用できるだろう。

リード7,000MB/sの高速アクセス速度を確認

 では、簡単にベンチマークテストをとおして速度をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、「CrystaDiskMark 8.0.2」と「ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2」の2種類。また、今回はFireCuda 520の1TBモデルも試用できたため、そちらの結果も掲載する。テスト環境は以下にまとめたとおりで、テスト時にはSSDにマザーボード付属のヒートシンクを装着するとともに、空冷ファンの風がしっかり届くようにエアフローも考慮した状態で計測を行っている。

テスト環境
マザーボード:ASRock Z590 Steel Legend WiFi 6E
CPU:Core i5-11400
メモリ:DDR4-3200 32GB
システム用ストレージ:Samsung SSD 950 PRO 256GB
OS:Windows 10 Pro

 まずはCrystaDiskMarkの結果だ。こちらは設定を「NVMe SSD」にしたうえで、データサイズ1GiBと64GiBで計測している。

 結果を見ると、シーケンシャルリード、シーケンシャルライトはわずかに公称に届いていないものの、リードは7,000MB/s超を確認。また、ランダムアクセス速度も非常に高速となっている。そして、いずれのスコアもFireCuda 520 1TBを大きく凌駕しており、ハイエンドSSDとして申し分ない速度が発揮されている。

 同様に、ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果もリード、ライトともに公称に届いていないものの、安定して6,000MB/sを上回る速度が確認できる。もう少しという印象もあるが、ハイエンドSSDとしてこちらも申し分ない結果だ。

 今回は、Intel Z590マザーボードにCore i5-11400の組み合わせと、ハイエンドPCとはいえない環境だったことが、速度が公称に届かなかった原因とも考えられる。とはいえ、この速度でもハイエンドゲーマーやクリエイターにとって十分満足できることは間違いないだろう。

CrystaDiskMark 8.0.2の結果

FireCuda 530 2TB
データサイズ1GiB
データサイズ64GiB
FireCuda 520 1TB
データサイズ1GiB
データサイズ64GiB

ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果

FireCuda 530 2TB
FireCuda 520 1TB

 続いて、発熱もチェックしてみた。こちらでは、FireCuda 530にヒートシンクを装着して空冷ファンの風がきちんと届く状態と、ヒートシンクを外して空冷ファンの風も届かない状態で検証。温度やアクセス速度の推移は、ATTO Disk Benchmarkを実行しつつ、ハードウェア情報調査ツール「HWiNFO64」を利用して計測した。

 まず、ヒートシンクを装着してエアフローも確保した状態での温度とアクセス速度の推移だ。これを見ると、SSDの温度上昇は緩やかで最大でも41℃までとなり、速度も安定していることがよくわかる。

ヒートシンクを装着しエアフローを確保している状態。温度は最も高いところで41℃に抑えられ、速度も安定している

 それに対し、ヒートシンクを外してエアフローのない状態。こちらはテストが進むにつれて温度が上昇し、最終的には70度付近に達している。そして、温度が60℃を超えるあたりからリード、ライトともに速度が低下している。特にライトは顕著で、70℃付近になると2,000MB/sを切るほどにまで速度が低下した。

ヒートシンクを外しエアフローもない状態。温度は最も高いところで70度に届き、60度以上では速度も大きく低下している

 このことから、FireCuda 530で最大限の速度を引き出すには、しっかりとした冷却が不可欠といえる。とはいえ、通常ハイエンドSSDでは発熱への対処が不可欠で、ヒートシンクの装着や空冷ファンによる冷却がほぼ必須であり、これが欠点とはならないだろう。

ハイエンドSSDの新たな選択肢としてお勧め

 FireCuda 530は、ハイエンドゲーマーやクリエイターをターゲットとして投入されたシーゲートのハイエンドSSDだが、今回のテストでその名に恥じない申し分ない性能が確認できた。従来モデルと比べても大きく速度が向上しており、ハイエンドSSDとしての魅力は大きく高まっている。速度的にはPCI Express 4.0 x4対応SSDとしてもトップクラスであり、ストレージ速度を極めたいというユーザーにとって新たな選択肢として大きな魅力があるだろう。

 なお、今回はヒートシンク非装着モデルのみの発表となっているが、今後ヒートシンク装着モデルの投入も計画している(発売時期は未定)とのことだ。

【8月20日訂正】Seagateにより、2TBモデルの発売日が「8月27日」から「9月10日」に変更となりました。これにともない、該当箇所を訂正しました。