笠原一輝のユビキタス情報局
“シン定番”となる?Goではなくなった廉価版の「Surface Laptop 13型」
2025年6月11日 06:12
日本マイクロソフトが6月10日より販売を開始した「Surface Laptop, 13インチ」(以下Surface Laptop 13型)は、従来は「Surface Laptop Go」として販売されていたSurface Laptopシリーズの廉価版という位置づけの製品で、今回は「Go」が取れて新しいモデルとして再出発することになった。
Surface Laptop Goでは12.5型1,536×1,024ドットの液晶ディスプレイを採用していたが、今回のSurface Laptop 13型では13型1,920×1,280ドットの液晶ディスプレイに強化されており、スタンダードを満たしたビジネス向けノートPCとして活用することが可能になっている。
もう「Go」ではない、普通に使える廉価版となったSurface Laptop 13型
2年前の5月に発表され、導入されたSurface Laptopシリーズの廉価版が、「Surface Laptop Go 3」だ。このモデルでは、メモリが8GB/16GBと16GBのモデルも選択できるようになったことで、普通のクラムシェル型PCとして利用できるようになりつつあったが、1つだけ残念だった点がある。それがディスプレイ解像度が1,536×1,024ドットと、最低基準といってもいいフルHD(1,920×1,080ドット)に達していなかったことだ。
Surface Laptop 13型では、解像度が13型1,920×1,280ドットと、フルHDクラスの解像度に強化されている。これにより、「最後のピース」がバチッとハマって、「何かを我慢しないと使えないノートPC」から「普通に使えるノートPC」にステップアップした。
ディスプレイは13型1,920×1,280ドットのIPS液晶となる。リフレッシュレートは60Hz固定で、ディスプレイの輝度は最大400cd/平方m、HDRには未対応となる。10点マルチタッチに対応しており、タッチ操作も可能だ。ディスプレイは明るく見やすいが、いわゆる非光沢表面処理ではないため、ガラスへの写りこみはやや気になるところ。もちろん、ディスプレイの輝度を上げれば対応可能だが、輝度を落として使いたいバッテリ駆動時にはやや気になるところではある。
上位モデルとなる「Surface Pro 7th Edition 13.8型」(当初はこの呼ばれ方をしていたが、Surface Laptop 13型が出たことで、「Surface Laptop, 13.8インチ」とも呼ばれるようになっている、以下Surface Laptop 13.8型と呼ぶ)との違いは以下の表のようになっている。
Surface Laptop 13.8型 | Surface Laptop 13型 | |
---|---|---|
SoC | Snapdragon X Elite(12コア/10コア) | Snapdragon X Plus 8-core(8コア) |
メモリ | 16/32/64GB(LPDDR5x-8448) | 16GB(LPDDR5x-8448) |
ストレージ | 256/512GB/1TB SSD(NVMe) | 256/512GB SSD(UFS) |
ディスプレイ | 13型 2,304×1,536ドット/120Hz(LCD)/タッチ | 13型 1,920×1,280ドット/90Hz(LCD)/タッチ |
ガラス | Corning Gorilla Glass 5 | 強化ガラス |
生体認証 | 顔認証 | 指紋認証 |
バッテリ容量 | 54Wh | 50Wh |
公称バッテリ駆動時間 | ビデオ再生20時間/Web13時間 | ビデオ再生23時間/Web16時間 |
前面カメラ | QHD(MIPI) | FHD(MIPI) |
USB Type-C | 2基 | 2基 |
USB Type-A | 1基 | 1基 |
Surface Connect | 対応 | ー |
サイズ | 301×220×17.5mm | 285.65×214.14×15.6mm |
本体重量 | 1.34kg~ | 1.22kg~ |
バンドルアプリ | Office Home & Business 2024(永続版) | Microsoft 365 Personal(2年分) |
カラバリ | サファイア、デューン、ブラック、プラチナ | オーシャン グリーン、バイオレット、プラチナ |
大きく言うと、ディスプレイの大きさと解像度、リフレッシュレート、SoC、メモリ、ストレージ、生体認証がSurface Laptop 13.8型は顔認証であるのに対しての指紋認証、ACアダプタやドックなどを接続できるSurface Connect端子の有無などが違いだ。
逆に、アルマイト加工のアルミニウムがA面、C面、D面に採用されていることに変更はない。つまり、上位モデルであるSurface Laptop 13.8譲りの素材で、手触りに優れており高級感あるデザインになっている。
今回オーシャングリーンという緑系のカラバリの筐体をレビューしたが、緑といっても自己主張が強い緑ではなく、濃いグリーンで角度や光のあたり方でシルバーに見えるなどの落ち着いた緑になる。ビジネスパーソンがビジネスカジュアルな装いで持っても自己主張が強い感じではないので、安心して選択できるのがポイントだ。
なお、カラバリは、オーシャングリーン以外に、Surfaceシリーズの基本色と言ってよいプラチナ、今回新しく導入されたバイオレットの3色展開だ。
Snapdragon X Plus 8-core、16GB/512GBというスペックでバッテリ駆動時間も長い
SoCは同時に発売されたSurface Pro 12型と同じSnapdragon X Plus 8-core(QualcommのSKU名称なし)になる。搭載されているSnapdragon X Plus 8-coreがどんなものだと考えられるかは、Surface Pro 12型の記事をご参照いただきたい。
Surface Pro 12型が吸気口も排気口もなく、ファンの音がしないことからファンレスであると考えられるのに対して、このSurface Laptop 13型に関してはファンが搭載されており、ヒンジ部分に排気口が用意されている(実際CPUに負荷をかけるとファンの音が確認できる)。同じSoCを搭載している製品ではあるが、熱設計が異なっておりより高いクロックで回せる時間が増えるため、性能で選ぶならSurface Laptop 13型だろう。
なお、Surface Laptop 13型は、Surface Laptop 13.8型に比べて搭載されているバッテリ容量は少なくなっている(13.8型は54Whに対して13型は50Wh)。しかし、バッテリ駆動時間はむしろ長くなっており、Web利用時の公称バッテリ駆動時間は、13.8型が13時間であるのに対して13型は16時間となっている。これはSoCの性能が抑えられていること、そしてディスプレイの解像度が低く、消費電力が少なくなっていることが影響していると考えられる。
メモリは16GB、ストレージは256GBないしは512GBのUFSストレージとなっている。搭載されているのは「KIOXIA THGJFMT2E46BATVB」という型番のストレージで、KIOXIAのWebサイトでは「THGJFMT2E46BATV」と書かれている型番の製品に相当すると考えられる。UFS 4.0に対応したストレージで、UFS 3.1ベースの製品に比較して95~100%近く性能が向上していると説明されている。
また、Wi-Fi 7やBluetooth 5.4に対応している。こうした廉価版のSoCを採用した製品ではWi-Fiが1世代前の規格という例が多いのだが、Snapdragon Xシリーズの場合にはWi-FiとBluetoothが標準で搭載され、選択肢はWi-Fi 7/Bluetooth 5.4しかないため、下位モデルでもWi-Fi 7が標準なのはうれしいところだ。
なお、I/Oポートに関してはSurface Laptop 13.8型では左側にUSB Type-Aが1つとUSB Type-Cが2つ、右側にSurface Connectという構成になっていたが、Surface Laptop 13型では左側にUSB Type-Aが1つ、右側にUSB Type-Cが2つという構成になっており、Surface Connect端子は用意されなくなった。
ドッキングステーションが必要な場合には、汎用のUSB Type-Cのドッキングステーションを購入するか、Thunderbolt 4のモードでは使えないが「Surface Thunderbolt 4 Dock」と組み合わせて利用するなどの活用方法になる。
キーボードは「A」、「あ」キーが用意されている新標準日本語配列を採用
キーボードは上位モデルとなるSurface Laptop 13.8型と同じ配列のキーボードになっている。キータッチはSurface Laptopの上位モデルと同じようなタ印象で、以前からSurface Laptopを使っているユーザーであれば違和感なく入力できるだろう。
日本向けの日本語キーボードでは、スペースキーの左右が「A」、「あ」となっている日本語キーボードが採用されている。「あ」を押すとIMEが有効になり日本語入力でき、「A」を押すとIMEが無効になり入力したアルファベットがそのまま入力できる。従来のように、左上の「半角/全角」を押す必要がないため、より操作が楽になる(もちろん従来通り半角/全角キーでIMEのオンオフも可能)。
タッチパッドはいわゆるプレシジョンタッチパッド(高精度タッチパッド)になっており、より繊細な操作が可能になっている。パッドのサイズは11.2×7.5mmとなっており、こうした製品としては比較的大型になっている。
キーボードバックライトも用意されており、F5キー(Fnキーを有効にしている場合にはFn+F5)で、消灯、3段階の点灯と4段階で変更できる。
なお、Surface Pro 12型では、ACアダプタはバンドルされていないが、Surface Laptop 13型では「Surface 45W USB-C 充電器」としてオプション販売されているACアダプタがバンドルされている。Surface Proよりも、よりこれからPCを買うようなユーザー層が買う製品でACアダプタのバンドルが必要と判断されたのだろう。
CPU性能ではファンレスで同じSoC採用のSurface Pro 12型を上回る
それでは、実際のベンチマークを利用してSurface Laptop 13型の性能に迫っていきたい。比較対象としたのは、Surface Pro 13型(Surface Pro 11th Edition)、Surface Pro 12型(Surface Pro, 12インチ)になる。
Surface Pro 13型にはSnapdragon X Eliteという上位版のSoCが搭載されており、Surface Pro 12型には本機と同じSnapdragon X Plus 8-coreが搭載され、熱設計がパッシブか、アクティブか、ということが違いになる。
ファンの有無の違いによる性能の違いをよく示しているのがCinebench 2024の結果だろう。同じSoCを搭載していながらファンレスのSurface Pro 12型よりも性能が高いことは見てとれる。つまり、単純に性能でSurface Pro 12型とSurface Laptop 13型のどちらかを選ぶのかと言われたら、断然後者だということだ。
一方グラフィックス周りの性能は、Surface Pro 12型とSurface Laptop 13型に顕著な差は見てとれない。GPUの方は、CPUほどはいわゆるターボモード(熱設計の仕様以上に回すことで瞬間的に性能を上げること)がさほど効かないからだと考えられる。
同じことはCrystalDiskMarkにもいえる。こちらも性能は、ディスク性能に依存することになるため、Surface Pro 12型とSurface Laptop 13型では誤差の範囲内の差で有意な差はないと言えるだろう。
Surfaceシリーズの「シン定番」となっていく可能性が高い
こうして見てくると、Surface Laptop 13型は、1,920×1,280ドットというフルHD級のディスプレイに変更されたことで、上位製品となるSurface Laptop 13.8型との差が急速に縮んだ印象で、より普通に使えるPCという製品に進化したと言える。
廉価版のSoCやUFSストレージといったコストダウンになるコンポーネントを採用していることで性能に関してはかなわないのは事実だが、逆にバッテリ駆動時間が長くなっているなどのメリットもある。
もちろん、この製品のCPUはArmアーキテクチャになるので、ソフトウェア互換性問題には注意を払う必要がある。それは、既に以前の記事で現状などをまとめているので参照していただきたいが、Microsoftのビジネスアプリケーション(Officeアプリなど)とWebブラウザを使うのがメインのユーザーであれば特に大きな問題がなくなってきているというのが現状だ。
価格に関しては、あたり前だが上位版に比べて安価に設定されている。同じメモリ/ストレージ容量の上位版のSurface Laptop 13.8型との価格の違いは以下のようになっている(いずれもマイクロソフトストア価格)。
16GB/256GB版 | 16GB/512GB版 | ||
---|---|---|---|
Surface Laptop 13.8型 | Surface Laptop 13型 | Surface Laptop 13.8型 | Surface Laptop 13型 |
20万7,680円 | 16万4,780円 | 24万680円 | 17万9,080円 |
16GB/256GBモデルの価格差は4万2,900円、16GB/512GBモデルの価格差は6万1,600円となる。16GB/512GBモデルの方がより価格差が大きく、Surface Laptop 13型のお買い得度が増す価格設定だ。
なお、Surface Laptop 12型の記事でも指摘した通り、従来のSurfaceでは、バンドルされているアプリは永続版の「Office Home & Business 2024」になっていた。しかし、今回のSurface Proからサブスク型のMicrosoft 365 Personal/2年分に変更されている。永続版ライセンスでは2年以上使えるというメリットはあるが、OneDrive 1TBなどは別途契約する必要がある。そう考えると、1年分が2万1,300円、2年分で4万2,600円相当になるMicrosoft 365 Personal/2年分がバンドルされていることは大きなメリットだと言える。既にMicrosoft 365 Personalを使っているユーザーであれば、お買い得度はさらに増すことになる。
そうした意味で、今回Surface Laptop 13型は、人気だった定番製品であるSurface Laptopに、より廉価な価格帯の選択肢を提供する製品だ。これからノートPCを買い換えるユーザーなどで、やはりMicrosoft純正が安心できるというところに魅力を感じるのであれば、Surface Laptop 13型は“シン定番”になっていくのではないだろうか。