今、1.7GHzが登場することの意味は小さくない
 Intelは、同社の最新CPUであるPentium 4に、最高ラインナップとなる1.7GHz動作モデルを追加した。Pentium 4としては、昨年秋に1.5GHzを投入して以来、初の上位クロックモデル投入となる。
 Pentium 4は、Pentium Pro以降のIntel製CPUで採用されていた「P6」アーキテクチャに続く、次世代のマイクロアーキテクチャである「NetBurst」を採用しており、CPUの仕様が大幅に変更されている。よって、単純にクロックだけでPentium IIIやAMD Athlonと比較することはできない。
 NetBurstアーキテクチャの最大の特徴は、20ステージにまで細分化されたパイプライン構造である「ハイパーパイプライン」が採用されているという点だ。Pentium IIIなどP6アーキテクチャのCPUでは、10ステージのパイプラインが用意されていたので、Pentium 4ではパイプラインがP6の2倍に増加されていることになる。そして、このハイパーパイプラインとそれに付随するさまざまな技術の採用によって、CPUの動作クロックを従来よりも容易に高めることが可能になっただけでなく、CPUの処理能力の向上も実現されているのだ。
 また、Pentium IIIで100MHzまたは133MHzだったシステムクロックがPentium 4では400MHzとなり、L2キャッシュがコアクロックで動作する256bitの専用バスで接続されているなどの特徴からも、Pentium IIIから仕様が大きく変更されていることがよく分かるだろう。
 そしてもう一つ、Pentium 4において忘れてはならないのが「ストリーミングSIMD拡張命令2(SSE2)」の存在だ。Pentium IIIではマルチメディア処理を効率よく行なう命令セットである「ストリーミングSIMD拡張命令(SSE)」が採用されていたが、Pentium 4のSSE2では、SSEに新たに144個の命令セットが加えられている。これによって、マルチメディア処理能力が大幅に向上しており、SSE2に対応したアプリケーションであれば、フォトレタッチや3Dレンダリング、オーディオデータやビデオデータのエンコード処理などを高速に実行できるようになっている。
 ただ、これまでの最高クロックであったPentium 4 1.5GHzでは、ベンチマークテストなどの結果が、AMD Athlon 1.33GHzやPentium III 1GHzを大きく上回るというようなことはなく、場合によってはPentium 4のほうが劣ってしまうこともあった。加えて、Pentium 4対応チップセットが、高価なメモリであるDirect RDRAM(DRDRAM)のみに対応するIntel 850しか存在しないことなどもあり、これまでPentium 4搭載マシンはあまり普及するにいたらなかった。
 しかし今回、動作クロックが1.7GHz、つまり1.5GHzから200MHz引き上げられたことによって、現時点で明らかにトップレベルと呼べるパフォーマンスを得ることができるようになってきた。その点において、今回のラインナップ追加は非常に大きな意味を持つ。真にパフォーマンスを求める者にとって、Pentium 4は確実に選択肢の中に入れるべき存在になったと言えるはずだ。
 もちろん、SSE2対応のアプリケーションを利用した場合には、圧倒的なパフォーマンスが発揮されることも確認されている。そのため、映像処理や音声処理などSSE2が得意とする処理を多く利用するならば、Pentium 4 1.7GHz搭載マシンを選択する意味は大きい。
 次のページからは、早くも各社から登場したPentium 4 1.7GHz搭載マシンを紹介している。エントリーマシンとなり得るものから、ハイエンドマシンまでさまざまだが、すでにIntelはデスクトップPC用CPUのメインストリームをPentium IIIからPentium 4へと移行させていくとしており、その点から考えれば、Pentium 4搭載マシンを選択するのも時代を先取りするようで悪くない。自分に合った1台を見付ける参考にしていただければ幸いだ。