会場:Las Vegas Convention Center
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17日の「Comdex/Fall '99」基調講演でSun Microsystemsのスコット・マクニーリ会長は、ユーザーが求めているのはOSやソフトウェア自体ではなく「サービス」にあるので、ソフトウェアを販売するだけの企業は時代遅れになり、消え去る運命にあるという展望を語り、Microsoftを暗に批判した。また、広帯域のインターネット接続やホームネットワークの普及により、「コンピュータ業界は、中央に強力なサーバーを置く電話業界のモデルに近くなる」と語った。さらに、すべてがネットワークにつながれた環境を前提として設計された同社の軽量クライアントパソコン「Sun Ray」、オフィス向け統合ソフト「StarOffice」のASPバージョン「StarPortal」のデモを行なった。
●今年のMSジョークは「ベガス買収」!
スコット・マクニーリ会長を迎える豪華なステージと手品師のショー |
同氏は「私は別にPCを憎んでいるわけではない」としながらも、未来のコンピューティングの主役は、システムクラッシュの多いPCではなく、強力な中央サーバーにつながれた携帯電話やPDAなどの無数のインターネット情報家電になると語った。同氏は「すべてのデジタル機器は、インターネットにつながれることになる。『すべてのユーザー』ではなく、『すべてのデバイス』がネットにアクセスするのだ。これは最大のビジネスチャンスになる」と語った。
また、メインフレームに代表される「ビッグボックス」とPCに代表される「リトルボックス」に関しても、「リトルボックスは、本当に優れているだろうか? リライアブルでスケーラブルだろうか?」と疑問を投げかけ、強力な中央サーバーに支えられたネットワーク中心型システムの方が安定性があるとした。同氏は「人々は、ネットワーク中心型システムを新たな方向性だと考えているが、これは我々が18年前から提唱してきた『ネットワーク・イズ・コンピュータ』のコンセプトと同じものだ」と語った。
●「広帯域」が当たり前の時代に
マクニーリ氏は、将来はTVセットトップボックスを中心としたホームネットワークが構築され、皿洗い機や冷蔵庫などの家電もJavaベースのインターネット機器になり、電球までがネットワークにつながれると予測した。同氏は「現在、General Electronicsでは、Javaベースの電球を開発している。この電球は切れる前に、新しい電球を配達するよう知らせてくれる」と語る。また、欧州市場では、携帯電話をリモコン代わりにして自動販売機で飲み物を買うことができ、その金額を後でまとめて請求するサービスを一部提供し始めているという。
同氏は、これらの情報家電はシンプルであるべきとし、15日に行なわれたソニーの出井社長の基調講演の中で登場したミニディスクAVレコーダー「MD DISCAM」を紹介した。インターフェイスがPersonal Javaで書かれた同デバイスは、カメラ本体に多彩な再生・編集機能を搭載しているので、PCに接続しなくても本体だけで手軽に映像の編集・加工ができる。また、簡単にインターネットに接続できる。
同氏は「英国では、インターネットEO家電という言葉がある。EOとは、イージー・トゥ・オペレートのこと。ユーザーはスイッチを入れるだけでよく、残りはすべてISPがやってくれるようになる。Javaは、こうしたネットワーク環境に優れている」と語る。 また、広帯域の必要性を述べ、「アジアでは面白いことが起こっている。彼らは新たなビルを構築する際、あらかじめT1回線を敷設し、すべての部屋で広帯域アクセスができるようにしている。将来は、広帯域アクセスがない家は、現在で言えば電気も水道も、電話線も通っていない家と同じような過去の遺物になり、子供からは『えー、部屋に広帯域アクセスもなかったの? どうやって生活していたの?』と言われることになるだろう」と語った。
●ソフトウェア企業は消え去る運命に?
マクニーリ氏は、広帯域アクセスとホームネットワークにより、コンピュータ業界のビジネスモデルは大きく変わることになるとし、「信じられないかもしれないが、コンピュータ業界は電話業界のようになる。この業界は強力な中央システムがすべてを管理し、ユーザーはサービスを購入するだけだ」と語った。「この20年間というもの、すべてはOS業界、いや、(Microsoftという)OS企業1社に支配されてきた。しかし、自分の携帯電話に使われているOSを知っている人はいるだろうか? ソニーのカメラを購入するとき、OSのことを考えるだろうか? 誰も考えないし、考える必要もないのだ」と語った。
また「一番売れているアプリケーションの上位10位は何だろうか。後半の5タイトルは決まって、前半の5タイトルのソフトウェアで受けた損害を修復するソフトだ。皆さんは、Windows 2000に500ドルや800ドルを費やして、そのデバックを手伝いたいだろうか? これは、馬鹿げている」と語った。同氏は、家庭に置かれたPCの約半分が使用されていない状態にあるというGartner Groupの調査を引き合いに出し、コンシューマは操作が複雑で高価なPCを購入するよりも、サービスを購入する方が自然だと主張した。
同氏は「電話会社を見てみよう。キャッチホンのサービスを使うために、電話にソフトウェアをインストールするユーザーがいるだろうか? 電話会社に電話して、サービスを使いたいと言うだけで、その後は電話会社が面倒を見てくれる。このような状況になれば、ソフトウェアを買う必要はなく、ソフトウェアは無料になる」と語った。このトレンドは、シリコンバレーにも顕著に現れているとし、「毎月11億ドルがベンチャーキャピタルにつぎ込まれているシリコンバレーでは、投資を受ける企業の1社も純粋なOS企業、アプリケーション企業はない。どれもが、技術を使ってサービスを販売している企業だ」と語る。
●MSキラー:「StarPortal」と「SunRay」
StarPortalと軽量クライアントパソコン「SunRay」を使用したデモ |
同社は、このソフトウェアのASP(Application Service Provider)バージョン「StarPortal」も提供する予定。同氏は「ASPがサービスを有料化した場合には、Sunもロイヤリティを受け取る。しかし、無料サービスの場合はロイヤリティは一切受け取らない。公正だろう」と語った。また「ワープロが欲しい? サービスを注文するだけでよい。COMDEXの存在意義がなくなるほど、シンプルだ」と語り、会場を笑わせた。
ASPに懐疑的な意見に関しては「情報をISPに預けるのが不安だというユーザーは、『お金を銀行に預けたり、医療記録を医者に預けるのが不安なので、自分で保管します』と言っているのと同じだ。無料電子メールサービスを使ってみたまえ。自分のところでメールを管理するより、よほど安全だ」と語った。
OnStarデモ画面 |
その他、General Motors(GM)の社員が登場し、Javaベースのソフトウェア「OnStar」を使用した自動車デモを行なった。Cadillac Sevilleに乗りこんだGMの社員は、Onstarバーチャルアドバイザーを呼び出し、音声コマンドにより電子メールや日程、株価情報などを聴く。このほかにも車検やカーディーラーとのアポイントなども行なえるという。マクニーリ氏は「このコンセプトは、すべての情報家電と話すことができるというものだ。まさに、『ネットワーク・イズ・コンピュータ』だ」と語った。同氏は最後に「Y2Kより怖いものは? 答えはW2K(Windows 2000)とO2K(Office 2000)だ」というジョークで基調講演を締めくくったが、このジョークへの会場からの反応はいまひとつだった。
講演後、多くの観客に囲まれるマクニーリ会長 |
□COMDEX/Fall '99のホームページ(英文)
http://www.zdevents.com/comdex/fall99/
□関連記事
【11月16日】ソニー 出井伸之社長 基調講演レポート
「広帯域エンターテイメント企業としての道を確立する」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991116/comdex06.htm
【11月17日】COMDEX/Fall '99 レポートインデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991117/comdex_i.htm
('99年11月18日)
[Reported by HIROKO NAGANO,NV]