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プロカメラマン山田久美夫の特別レポート

デジタルカメラの時代を変える!? 「スーパーCCDハニカム」発表



●画期的なCCDが富士フイルムから発表

 八角形のハニカム構造を採用した画期的なCCD「スーパーCCDハニカム」が、富士フイルムの子会社である富士フイルム マイクロデバイスから発表された。人間の網膜の原理を応用することで、同じ画素数でも、従来型CCDの約1.6倍もの解像度があり、この新CCDの130万画素タイプで、従来型の200万画素CCDに相当する画質が得られるという。

 「信じられない」といった印象が先に立つほど、その内容は衝撃的。これが本当なら、これまでのカテゴリー分けで使われてきた画素数という概念が変わってしまう上、130万画素クラスの普及機で、200万画素クラスの画質なら、コストパフォーマンスの点では申し分ない製品が登場するに違いない。どうりで最近の富士フイルムは、130~150万画素機のラインナップを充実させているわけだ……。


●高解像度と高感度を両立

 富士フイルムからのリリースを要約すると、以下のようになる。

1. ハニカム画素配列により、受光部面積効率が向上。同一画素数でも従来型CCDに比べ、高感度化、ノイズ低減、広ダイナミックレンジを実現。受光面積比では、1/2インチ200万画素ハニカム型CCDで、従来型の約1.6倍。1/2インチ300万画素では約2.3倍になる。

2. ハニカム画素配列は、自然界の画像データの空間周波数分布や人間の視覚の特性にマッチし、同一画素数でも従来型CCDに比べ約1.6倍の実効画素数を得られる。200万画素ハニカム型CCDで、従来型300万画素CCD以上の解像度を実現。

3. ハニカム画素配列とオーバーサンプリング信号処理技術により、画質劣化が少ないデジタルズームを実現。

4. ハニカム画素配列により、画質劣化の無い間引き読み出しができ、高画質の動画モニター画像を実現。

5. 電子シャッターだけのスチルカメラを実現できる。

6. 少ない画素数で高解像度が実現できるので、省電力化が図れる。

 日本国内での発表だけではわかりにくいため、米国での発表をもとにちょっと補足する。まず、自然界の映像(画像)や人間の網膜は、垂直・水平方向にその成分が多く分布している。だが、従来型のCCDは斜め方向がもっとも解像度が高かった。それをCCD自体の組成を45度傾けることで、垂直・水平方向に対する解像度を高めた。

 さらに、八角形のハニカムパターンを採用することで、単位面積あたりの画素の充填効率を高め、1画素あたりのサイズを大型化することに成功。それにより、従来型CCDより遙かに大きな有効受光面積を達成している。そのため、実効感度が向上し、ノイズが減り、S/N比が高まるわけだ。

 また、画像データの読み出し方式が従来型と異なり、プログレッシブ方式より効率が良く、電子シャッターだけでの撮影が可能になる(ただし、スミア特性については言及されていない)。また、間引き読み出しが容易になることで、従来型では困難だった高画素CCDでの、高解像度でスムーズなモニター表示や動画撮影が可能になる。しかも、より少ない画素数のCCDで高画質が得られるため、結果的に省電力化まで可能になるという。これらを見る限り、にわかに信じがたい、ほぼ理想的なデバイスといえる。


●次世代のデジタルカメラに大きな影響!?

 これらの特徴が額面通りに実現され、従来製品とコスト的に変わらないとすれば、これまでのデジタルカメラの常識が一気に変わってしまう。

 まず、200万画素ハニカムCCDで従来型の300万画素CCD以上、130万画素で200万画素相当の画質が得られるのであれば、その性能を高画質化にも、ハイコストパフォーマンス化にも振り分けることができる。

 つまり、リリースにはないが、このハニカムCCDで300万画素タイプを作れば、実質的にその1.6倍の解像度である480万画素相当の超高解像度モデルが実現できてしまう。しかも、1/2インチ300万画素タイプでも、画素サイズは従来型の2.3倍もあるので、高画素・高密度化にともなう実効感度の低化やノイズの増大といった欠点も克服できそうだ。

 さらに、130万画素ハニカムCCDで200万画素相当の実力なら、通常のスナップは130万画素ハニカムモデルで十分であり、現行の「FinePix1200」や「同1500」「同1700」系のモデルの実用性が高まる。そうなれば、来年には、通常のコンパクトカメラと同レベルの価格帯で、十分な画質のデジタルカメラが手に入る。

 高解像度をフルに活かせば、2倍程度のデジタルズームでも十分実用になる可能性が高く、単焦点レンズ+デジタルズームによる、小型で手頃な価格のデジタル2倍ズーム機が登場する可能性もある。また、プリントサイズをサービス判と割り切ってしまえば、35万画素+α程度の超小型CCD(1/5インチ以下)を使ったローコストの“デジタル写ルンです”などの展開も、決して夢ではない。

 本日、都内でこの「スーパーCCDハニカム」の技術説明会が開かれる。その会場ではより細かな特徴や技術的な根拠について紹介されることが予想される。そこでの最新情報についても、追ってお届けしたい。

□富士フイルムのホームページ
http://www.fujifilm.co.jp/express/
□ニュースリリース
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj520.html

('99年10月21日)

[Text by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp