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900MHzの銅配線Athlonプロセッサのサンプル製造に成功!
~ AMDがドイツドレスデンのFab30開所式を開催 ~

期日:10月20日(現地時間)
会場:ドイツ ザクセン州ドレスデン AMD Fab30



 CPUメーカーのAMDは、ドイツ ザクセン州ドレスデンにおいて、同社の最新工場であるFab30の完成記念式典を開催した。その中で同社の会長兼CEOのW.J.サンダース氏が、既に銅配線Athlonプロセッサの初期サンプルの製造に成功したことなどを明らかにした。こうしたことから今回のことは、来年以降の銅配線技術を利用した0.18μmプロセスAthlonへの準備が整っていることなどを印象づけた。

●地元ザクセン州やドレスデン市に大歓迎されているFab30

 ドレスデンはチェコとの国境にほど近い旧東ドイツに位置するドイツの地方都市で、街の中心部には中世の建物がそのまま保存されていた。日本で言えば奈良や京都といったような観光都市で、一見するととても最先端のCPUを作る工場があるとは思えないような街だ。しかし、このドレスデン市の中心街から車で走ること20分、豊かな田園地帯に突然不釣り合いで近代的なファクトリーであるAMDのFab30が現れる。今回のイベントはこのFab30の敷地内にテントを張って行なわれた。

 今回のランチイベントには当事者であるAMDの関係者はもちろんのこと、ドレスデンがあるザクセン州の関係者やドレスデン市の関係者などが多数招待された。ザクセン州の首相であるKurt Biedenkopf教授やドレスデン市の市長であるHerbert Wagner博士など地域の首長も壇上にあがりお祝いの式辞を述べるなど、今回のFab30の開所が地域の経済にとって大きな出来事であることを伺わせた。

豊かな田園風景の中に突然近代的な建物が! AMDの新工場Fab30の全景 AMDのFab30の受付。当然これより中は撮影禁止


●「2つの夢物語」でFab30の意義を語ったサンダース会長

AMDのW.J.サンダース会長兼CEO
 一番最後に壇上に上ったAMDのW.J.サンダース会長兼CEOは「A TALE OF TWO DREAMS(2つの夢物語)」と名付けられた講演を行なった。その中でサンダース会長は「我々には2つの夢があり、1つは地域の発展であり、もう1つはAMD自体の発展だ」と述べ、今回のFab30建設がAMDだけでなく地元の経済を発展させるのに大きな役割を果たすだろうと述べた。既に述べたとおりザクセン州は旧東ドイツに位置しており10年前はもちろん東ドイツの一部で、現在でも旧西ドイツとの経済格差は非常に大きい。この事を意識してかサンダース会長も「我々はザクセン州の人々の希望であるザクセン州がドイツの他の地方(筆者注:具体的には旧西ドイツ地方のことだと思われる)へ再統合することの助けとなりたい」と述べ、そうした地域経済への貢献もFab30の意義の1つであるという見解を明らかにした。また、「1万2千人のAMDの社員が分かち合う、よい製品を作りだしていくことでAMDがこれまで以上に発展したいという目的のためにもFab30は貢献する」と述べ、もちろんAMDにとってもFab30の完成が意義深いことであることを強調した。

 また、講演の中でサンダース会長はドレスデンにFab30を建設することになった理由について触れ「ザクセン州はハイレベルな工業系の大学を複数抱えるなど教育レベルが非常に高く、高い技術を持つ労働者が多数いる」と述べ、一部に言われているような単に地価が安いからという理由だけでなく、優秀な労働者が今後も多数確保できる見通しがあることがFab30をドレスデンに建設した理由であるとした。

●HIP6のプロセスを利用したAthlon/900MHzのテスト生産に成功!

 さらにサンダース会長は「'80年代にはx86のCPUを作っているメーカーが15もあったが、現在生き残っているのは2社しかない」と述べ、AMDのみがIntelのライバルとして生き残ることができたことを強調し、「競争のみが急速な技術革新を促すことができる」と述べ今後ともAMDがIntelと競争していくという強い意志を表明し、AMDがx86ビジネスをメインビジネスとして展開していくということを強調した。
 その中で、サンダース会長はK5からAthlonに至るAMDの製品ラインナップについて述べ、「'99年のAthlonプロセッサの出荷で、AMDは主要なベンチマークにおいてIntelのCPUを性能で大きく上回って見せた」と述べ、AthlonがAMDにとって重要なステップとなっていることを強調した。さらに、今後の製品の展開についても触れ「既に今月の始めにAthlon 700MHzを発表し、先々週のMicroprocessor Forumでは800MHzのAthlonのデモンストレーションを行なった。また今週には、ここドレスデンのFab30でモトローラの銅配線技術であるHIP6のプロセスを利用した最初のAthlonプロセッサのテスト生産にも成功し、それは900MHzおよびそれ以上のクロックで動作できており、歩留まりも思っていたよりもかなりよい」と述べると、会場から割れんばかりの大きな拍手がわき起こった。サンダース会長も述べたように先々週に行われたMicroprocessor Forumではテキサス州オースチンにあるFab25で製造した0.18μmプロセスで作成したAthlon 800MHzをプレスなどに公開していた。これに続き今回銅配線技術を利用した0.18μmプロセスAthlonの製造が上手くいっているということはAMDにとって非常によいニュースと言えるだろう。また、続いてサンダース会長は「来年中には1GHzのAthlonをここドレスデンで製造し出荷する予定だ」と述べ、1GHzのAthlonの出荷時期も明らかにした。

●「私の夢はFab40をここに建設することだ」

Fab30の受付に置いてあるFab30の全景模型。見てわかるようにまだ敷地にはかなりの余裕があり、もしかするとあそこに「Fab40」が……
 また、式典終了後にはサンダース氏は居並ぶ報道陣の質問に答え、「これは私の夢だが、10年後にはここにFab40を建設したい」と述べ、将来的にはこのドレスデンの工場を発展させていきたいという長期的な展望を明らかにした。また、報道陣からの「Intelとの競争に生き残れますか?」という厳しい質問に対しては「確かにIntelと競争していくのは難しい。しかし、競争が厳しいのは当たり前で、よい製品を作ることができれば勝ち残っていくことは不可能ではない。例えば、Intelは500人もの開発者を抱えているが、当社は70人のエンジニアだけだが、Athlonという優れた製品を作ることができた。要は人数ではなく、必要なのは優れたアイディアだ」と述べ、AMDは必ず勝ち残れるという見解を強調した。

 今回のFab30開所により、現在利用されているアルミ配線技術に比べてクロックを比較的あげやすいと言われている銅配線技術を利用したプロセスの生産を、AMDがIntelに先駆けて可能になったということは非常に興味深い(Intelが銅配線技術を利用するのは2000年の第4四半期以降に出荷されるWillamette以降だと言われている)。今後AMDがクロック向上競争に生き残っていくためには非常に重要な意味を持っており、今後のCPU戦争にも大きな影響を与えていくだろう。そういう意味では今日のFab30開所式が将来振り返ってみれば非常にエポックメイキングなできごとになっているかもしれない。

('99年10月21日)

[Reported by 笠原一輝]


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