10月14日~17日(現地時間)、ロンドンで「PMA EUROPE 99」が開催された。このイベントはもともとラボ(現像所)機材ショーだったのだが、数年前から広くカメラ機材を含めた“ヨーロッパ版PMA”として開催されている。
イベントとしての規模は小さく、幕張メッセの3ホール分程度。また、いまだにラボ機材がメインのイベントとなっている。だが、今回はデジタルカメラを中心としたデジタルイメージング系の出展も多い。ソニーやエプソン、HPといった、ラボ業界とは無縁だったメーカーも出展しており、なかには日本では見られないデジタルカメラなども出品されていた。もちろん、今後市場が広がるデジタルカメラからのプリントサービスに関する出展も多く、なかなか興味深いものがあった。基本的には業務用がメインのイベントだが、今回はその中から、主だったものをピックアップしてレポートしよう。
●エプソン、「210万画素の光学3倍ズーム機」と「4ピコリットル4色インクのインクジェットプリンタ」を出展
デジタルフォトの世界へ本格的な進出を図っているエプソン。同社は今回、国内未発表の210万画素光学3倍ズーム機「PhotoPC 850Z」や、4ピコリットル/ドット、4色インク式のフォトプリンタなどを出展していた。
「PhotoPC 850Z」は、この9月にアメリカで発表された本格的な200万画素クラスの光学3倍ズーム機だ。これまでの同社モデルにはないスタイリングで、ボディー上部には、外部ストロボ用のホットシューも装備されている。レンズは6.5~19.5mm(F2~2.8)と大口径で、スペックと外観から想像する限り「オリンパス C-2000ZOOM」と同じもののようだ。
背面の操作部は「CP-800」に似た、実に分かりやすいもの。液晶サイズも大きくて見やすく、とても魅力的なものに思えた。機能的にも「CP-800」に準ずるようで、記録時間なども短く、機能的にも充実している。価格は630ポンド(約125,000円)と、デジタルカメラの価格が高いので有名なイギリスでのプライスとしては、十分に納得できるレベルといえる。まあ、若干大きめではあるが、日本国内で販売しないのが不思議なほど完成度の高いモデルという印象だった。
同社のメインはプリンタ関係。といっても、展示されているのは、日本国内で先だって発表された6色インク採用の4ピコリットル/ドット版ではなく、同じ4ピコリットルタイプでも、4色インクのみだった。
また、6色インクタイプでは、Millennium Editionとして、シルバーバージョンの「STYLUS Photo750」も出品されていた。
このほか、日本国内ではお目にかかれないものでは、600dpiのスキャナとカラーインクジェットプリンタ(1,440dpi)が一体になった複合機も出品されており、コピーマシンとしても、FAXとしても使える上、スキャンしたものをE-MAILで送る機能まで搭載されていた。
●HP、国内未発表モデルを出品
HPは今回、国内未発表のメガピクセルモデル「PhotoSmart C200」と、PCを使わずにプリントできるインクジェットプリンタ「P1100」との組み合わせを中心にアピール。
もともとPMAはラボ機器ショーだけに、やはりPCを使わずにプリントできるという点が大きなポイント。また、メガピクセル機といっても、ポストカードサイズであれば十分に実用になることもあって、来場者の関心も意外なほど高かった。
●ソニー、業務用モデルを中心に展示
ソニーは、デジタルマビカやCyber-shotシリーズをズラリと展示していたが、メインとなっていたのは、ポートレートスタジオ用の本格派モデルと、証明写真用のID Photoシステム。
なかでも、昨年のフォトキナで発表された、35万画素デジタルカメラをベースとしたID Photoシステムは、なかなか注目度が高かった。このシステムは、証明写真に特化した実にシンプルなもので、最初から液晶モニター上に顔の位置の指標となるマークが入っており、誰でも簡単に証明写真が撮れるように工夫されている。従来のポラロイドタイプと違い、目をつぶってしまっていても、すぐに確認できる上、何枚でも同じカットをプリントできるというデジタルならではの特徴をうまく生かしている。
また、プリントも簡単で、ドッキングステーションにカメラをおいて、プリントサイズを指示するだけで、オーバーコート式の業務用昇華型プリンタから4分割などのプリントがでてくるあたりも、なかなかよく考えられている。
●富士フイルム、プリントシステムを中心に出品
富士フイルムは今回、デジタルカメラなどからのプリントシステムが中心。デジタルカメラも出展していたが、最新のプリンカムやFinePix1200などの姿は見られなかった。
今回の展示でユニークだったのは、店頭でのデジタルプリント受付用のキオスクタイプ端末。といっても、ユーザーが直接触れるタイプではないためか、非常に実用本位。タッチパネル式のモニターと、フラットベッドスキャナがセットになっている。本体には制御部とともに、FDD、各種メモリカードドライブ、Zip、CD-ROMドライブなどが小さな筐体のなかに納められており、味も素っ気もない感じだ。
さらに今回は、インターネットを使ったプリントサービスについても積極的な姿勢を見せていたのが印象的。実際にデジタルデータを普通のカラー印画紙にプリントするためのラボ機器は1台1,000万円以上もする。そのため、ヨーロッパのように小さな街が分散している地域では、ミニラボのような感じで店頭に導入するにはコスト的にきついわけだ。そこで、インターネット経由でデータを集め、基点となるラボでプリントし、それを集配するというシステムを提案していたあたりが、なかなか興味深い。
●コニカ、フィルム式カメラをメインに出品
コニカは今春のアメリカで開催されたPMAで発表した、本格的なデジタルプリント対応ラボ「QD-21」の改良機を発表していたが、すでに市場にではじめているラボ機器だけに、人気はいまい一つといった印象だ。
また、カメラ関係では、デジタルカメラではなく、フィルム式カメラがメイン。とくに、今回のイベントで世界初公開となった、レンズ交換式のレンジファインダー式カメラ「ヘキサーRF」は、なかなかの人気を博していた。
●三菱電機、証明写真用のデジタルID Photoシステムをアピール
三菱は今回、証明写真用のデジタルID Photoシステムをアピール。同社はもともと、業務用昇華型プリンタの世界では実績があるだけに、それを利用した展開を図っている。
こちらもカメラとしてはシンプルなもので、液晶パネルにある指標を見ながら、そこに顔が入るように撮影するだけでOKというもの。意外なことかもしれないが、証明写真の世界では、すでにデジタル化がかなり進んでおり、デジタル化に熱心ではないカメラ店も、こんなシステムからデジタルの世界にはいってゆくことになりそうだ。
□PMA Europe 99のホームページ
http://www.pmai.org/PMAEurope99.htm
('99年10月20日)
[Reported by 山田久美夫]