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第25回 : 意外に重要なワイヤレス機能



 Palm、Nokia、Symbianが提携して、ワイヤレス通信機能を利用した新しいPalmが登場しそうだとか、Palm OSが動作しているマイクロプロセッサDragonballの新世代チップが登場し、クロック周波数が最高で2倍になったりカラー液晶コントローラを内蔵したりと、なかなかPalmシリーズの周辺が騒がしいが、こちらの話題は少し置いておき、今週はノートPCに関連した話題で進めたい。

 先日、松下電器産業のLet's NOTE A1Rの話を取り上げたが、NECからも同様の製品が登場した。Lavie NXに追加されたワイヤレスインターネットモデルがそれで、別途発表されているAterm WM56を同梱し、本体内にワイヤレス通信用のモジュールを内蔵させたものである。家の中で、そうそう持ち歩くことなんてないんじゃないの? という意見もあるだろうが、実際にはいろいろな問題からワイヤレスを必要としている人はたくさんいる。今後はこうしたモデルが増えてくれることを望みたいものだ。


■ モバイルよりももっと目先の問題が……

 Atermと言えばISDN TAでシェアナンバーワンのブランドだが、Aterm WM56はアナログ回線にのみ対応した機種で、56Kモデムを内蔵している。A1Rのようにシリアルポート経由でデスクトップPCと通信させることはできないが、部屋の中で移動しながら利用したり、電話線を引き回すことができないという人には魅力的な製品になっている。
 仕組みとしてはA1Rと同じでPIAFS 2.0を用いた64Kbps無線通信を行なっているため、もちろん他のワイヤレスAtermにも接続できる。ワイヤレス機能を持つAtermシリーズを買い足せば、そのままISDNでも利用できるわけだ(ただしA1Rが既存のTAも利用可能なのに対して、Lavie NXはワイヤレス機能を持つTAでなければならない点に注意)。
 試してはいないが、理屈からすればAtermシリーズのワイヤレス機能をサポートしているA1Rは、Lavie NXとも相互運用ができるはずだ。たとえば、同じワイヤレスステーションをLavie NXとA1Rで共有することもできるだろう。
 A1Rなどは「家庭内モバイルはじまる」と題して、家の中で自由な場所でPCを利用できることをアピールしている。もちろん、場所を選ばずインターネットを利用できることはとても便利なことではあるし、キャッチフレーズとしてもなかなかのものだ。しかしもっと違うところで、切実な問題を抱える人たちがワイヤレスを必要としている。

 少し話の方向を変えてみよう。
 数週間前のことになるが、僕は友人につきあってあるマンションのモデルルームを見学に行った。最近は電話のモジュラジャックが各部屋に来ているのは当たり前だそうで(僕の住んでいるところはそんな便利なモノはない)、それどころかISDNに対応したり、抜け落ち防止ロック付きのACコンセントなどをセットにしたマルチメディアコンセントも、標準仕様で採用しているところが増えているという。新しいから当たり前とはいえ、時代は変わったものだ。
 ここで言っているISDN対応というのは、DSUから変換したバスをループバックしてコンセントに差し込んでおくと、別の部屋でもISDN機器を利用できるというもの。構造的には簡単なのだが、ISDNを使いたい人にとってはなかなか便利な方法。せっかく電話のモジュラーが部屋に来ていても、TAをひとつの部屋にしか置けないのでは利用方法に幅がない。

 とはいえ「マルチメディアコンセントなどが引かれている最新マンションはいい」と思う。だが、すでにどこかに住んでいる人が、ISDNだけのために引っ越すわけにもいかないだろう。工事をするにもお金がかかる。なんでも新築マンションで注文時にLANのケーブルを埋め込む費用は4LDKで8万円程度らしいが、これも新築だからできること。後から壁にパイプを通して……ともなれば、あまり想像したくないような値段がかかりそうだ。
 さらに電話線は一カ所にしか来てない、なんてことになると、さらに不便さは加速し、しかたなくパソコンを電話の近くに移動させるか、延々とパソコンを置いておく部屋まで電話線を這わせるか、と究極の選択を迫られることになる。

 無線でインターネットに繋がる機能。それは“モバイル”なんて洒落た(?)言葉で表現できるようなものではなく、もっと切実に家庭の環境を改善したいと考えている人にとって、とても重要なものに違いない。しかし世の中ノートPCだけがPCではない。コスト次第ではあるけれども、いっそのことデスクトップPCにもワイヤレス機能を内蔵させてしまえばいいのに。


■ どんなノートPCを持ち歩いていますか?

 そう。この連載を始めてから、タイトル通りのことを何度も聞かれた。確かに少し前まではよくノートPCを持ち歩いたものだ。ほとんど毎日、ノートPCを持ち歩いて取材先でメモを取り、それを喫茶店などで記事として仕上げて速報記事を書いていたからだ。
 しかしもちろん、そんな使い方は特殊な例でしかない。最近、仕事環境の変化から、あまり速報記事を書かなくなってしまい、その結果あまりノートPCを持ち歩かなくなってしまった。もし僕が会社勤めをしているならば、どこでも同じ環境でPCを使いたいがためにきっと会社と自宅の往復にはノートPCを持ち歩くだろうが、道具として持ち歩くことはなくなってしまったのだ。

 これは単に使い方だけの問題ではなく、PDAや携帯電話がどんどん機能アップし、たいていのことが、それらスモールオブジェクトで済んでしまうようになったということも一因として挙げられると思う。電子メール、Webアクセス、スケジュールチェック、いずれも僕にとっては欠かせないファンクションなのだが、いずれもPCを使わずに用を足すことができる。しかも各機器はPCとの連携機能を強化してきているから、余計にPCを持ち歩く必要性がなくなってきているのだ。

 ThinkPad 570を使っているという話をだいぶ前にしたことがあったのだが、最近ではそんな大きなものを毎日持ち歩く人はあまりいないだろう。フルサイズ・フル機能のノートPCに比べればはるかに軽くて薄いノートPCへと、使っている機種が変わったのは、そんな使い方の変化からである。
 ドッキングステーションを採用したノートPCへの興味が、より強くなったのも同じ理由からだ。ノートPCが最も活躍する場面が、日常的な取材だったのに対して、今は海外出張時の原稿執筆用。CD-ROMドライブやDVD-ROMドライブは是非欲しいところだが、外付けのCD-ROMドライブは意外にスペースを使う。狭いホテルの机で資料を広げて使おうと思えば、またいざというとき簡単にOSを再インストールできるように、ドッキングステーション採用機はとても便利な存在なのである。

 こうした身の回りの変化は、僕だけではなくて読者の中でもあることだろう。次に買い換える時、前と同じタイプのノートPCが、しっくりとくるものかどうかを、落ち着いて再検討してみることをおすすめしたい。

[Text by 本田雅一]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp