毎年秋に開催される国内最大の電子機器系イベント第38回エレクトロニクスショー '99(エレショー)が、さる5日から幕張メッセで開催された。
このイベントは、通常の家電製品はもちろんのこと、数多くの最新電子デバイスが出展される点が大きな特徴といえる。そのため、製品のキーとなるデバイスの最新動向から、来年のトレンドを推測することができる、実に興味深いイベントとなっている。そこで今回は、デジタルカメラに関係するデバイスや参考出品など中心にレポートしよう。
●ソニー、シャープ、300万画素CCDを出品
昨秋のエレショーでは、主要CCDメーカーから今年のトレンドとなった200万画素級CCDが出揃い、話題になった。そして今回のエレショーでは、いよいよ次のステップとなる300万画素級のCCDが、ソニーとシャープから出品された。
ソニーは、有効画素数は324万画素(2,088×1,550ピクセル)の「ICX252」を出品、原色系と補色系の両タイプが用意される。形式はインターライン式となっている。
シャープはいずれも原色系で、縦横比が4:3で有効画素数321万画素の「RJ21P3AAOPT」と、縦横比2:3の315万画素「RJ21P3BAOPT」を出品した。こちらもインターライン式だ。
【ソニー】
CCDサイズはいずれのメーカー製も1/1.8インチタイプで、1画素あたりのサイズも3.45ミクロンと、期せずしてまったく同じ仕様となっている。ちなみに、今年メインの1/2インチ200万画素級CCDは、1画素あたり3.95ミクロン前後のため、有効画素数が約1.5倍にもなっているにもかかわらず、1画素あたりのサイズがさほど小さくなっていない点は一安心だ。 しかし、CCDサイズが変わっているため、現行モデルとレンズを共用することは難しく、メーカーにとっては悩みどころといえそうだ。
スペック的に見ても、今年の200万画素級CCDに比べ、感度がごくわずかに低下している程度で、それ以外の部分はほぼ同等の実力となっている。そのため、高画素化による解像度の向上と引き替えに、感度やダイナミックレンジが大きく低下するという懸念は、あまりなさそうだ。
いずれのブースにも、テストベンチで撮影した実写プリントが用意されており、その解像度の凄まじさには目を見張るばかり。なにしろ、この手の解像度チェック用チャート(ITE高精細度解像度チャート)を見ても、ほとんどすべてのチャートがきちんと解像しており、テストにならないレベル。A4サイズにプリントされた実写画像を見ても、「これでもか!」と言わんばかりのキリキリとしたシャープ感があり、従来の200万画素級CCDとは明らかに別物のレベルを実現していた。
すでに両者ともサンプル出荷が開始されており、いずれも来年1月から量産体制に入るため、来春のモデルに搭載されることはほぼ確実だろう。もちろん、今年のように主力モデルの大半が300万画素級になるとは考えにくいが、それでもかなり多くの300万画素モデルが登場すると思われる。
なお、昨年は最多の230万画素CCDを発表した松下は、今回、ブースでのCCDの展示はなかった。
●来年はFT方式搭載機が登場するか!? フィリップス&三洋電機
昨年、FT(フレームトランスファー)方式のCCDで提携したフィリップスと三洋電機は、それぞれのブースでFT方式のCCDを出品。このFT方式は、実際に光を受ける部分の開口効率が高いため、高感度でダイナミックレンジが広く、画質面で有利な点が最大の魅力といえる。
【フィリップス】
フィリップスは、恒例とも言える35mmフィルムサイズの巨大な600万画素CCDを出品。今年は新たに、そのCCDをドライブするためのチップセットを開発し、より手軽にこのCCDが搭載できる環境を構築して、アピールしていた。
さらに同ブースでは、FT方式CCDの長所について、ステージでの紹介もされており、なかなか力の入った展開となっていた。
35mmサイズの600万画素タイプは理想的なものではあるが、きわめて高価である上に、受光部周辺に部材がある関係で全体がかなり大きく、そのままでは35mmカメラに搭載できないため、新規にボディーを設計する必要があることもあって、大手メーカーも採用を躊躇しているようだ。
【三洋電機】
三洋電機は、2/3インチ200万画素タイプのFT式CCDを出展。300万画素タイプが登場した現在では、ちょっと魅力薄な感じもあるが、FT方式ならではの幅広いダイナミックレンジと、2/3インチと大きめのサイズを採用することで、1画素あたり5ミクロンを越える画素サイズは大きな魅力。早く製品に組み込まれた形で、その実力を試してみたいところだ。
●カラー有機ELディスプレイと液晶ビューファインダー用0.8インチTFTを出品した三洋電機
三洋電機は今回、次世代の主力になるとみられるカラーの有機ELディスプレイと、今後需要が増すと思われる液晶ビューファインダーに最適な0.8インチタイプの小型TFTを出品した。
この有機ELディスプレイは、コダックとの技術提携で開発が進められているもので、同社としては今回のエレショーで初めて出品されたもの。この有機EL方式は、従来の液晶パネルのように、透過光や反射光により画像を表示するのではなく、液晶パネル自体が自己発光することで表示する。
特徴としては、明るく、高コントラストで、低消費電力。しかも、きわめて薄型でバックライトの必要性もない。さらに、反応速度が速く、斜め方向からの視認性もきわめて高い(広視野角)など、実に理想的なもの。実際に現物を見てみると、実に表示がきれいで、とても立体感がある点が印象的。しかも、表示が十分に明るく、今回のようにストロボを使って撮影しても、その光に負けないほど。また、驚くほど薄く、ほとんど真横に近い位置からでも画面がかげらない点にも感心する。
ただ、まだまだ開発段階で、ようやく本格的なカラー化が実現した程度で、同社でも製品化は2001年になるとしている。その意味でも、まさに近未来の次世代デバイスとして注目される。
また同社は、0.8インチの超小型液晶パネルも出品。こちらは今後、デジタルスチルカメラ分野で需要が広がると思われる、ビデオカメラのような液晶ビューファインダーを強く意識したものとなっている。実際に同ブースでは液晶ビューファインダーとして使った場合を想定したデモも行われていた。
0.8インチタイプのため、画素数は512×218ピクセルしかなく、表示がきわめて細かいわけではないが、表示品質はなかなかきれいだった。今後、デジタルカメラの小型化や低価格化、日中での視認性を考えると、覗き込むタイプの液晶ビューファインダーはなかなか魅力的な存在といえる。今回の0.8インチタイプを見ると、もう少し表示が細かければ……と思うが、コストやサイズ、消費電力などを考えると、1つの妥協点といえそうだ。
【参考出品編】
●SDカードワールドを展開した松下
松下電器は今回、先だって発表された新型メモリーカードである「SDカード」を大々的に展開。SDカードをあらゆる分野で活用した、多数のモックアップ(?)を一堂に出展。ソニーのメモリースティックと同等の広がりを持つことを印象づけた。
そのなかには、デジタルカメラに関係した製品もいくつか見られた。まず、もっとも現実的なものとして、同社の130万画素3倍ズームモデルとSDカードを組み合わせたものを出品。といっても、もともとSDカード自体が、CFカード形状のアダプターを介すことで、CFカードスロット搭載機で利用できるため、スロット部分を変えるだけで実現できるモデルといえる。
また、なかなか興味深かったのが、「VAIO C1」と同じようなスタイルのCCDカメラを搭載した、ハンディースキャナ。つまり、平面物はスキャナ部分で、立体物はカメラ部分を使って入力するもので、発想は単純だが、なかなか実用的。しかも、そのデータをSDカード経由でPCなどに転送できる点も便利そうだ。
このほかにも、カメラ機能を備えたSDカード対応製品が数多く登場している。機能的には、メモリースティックと似ているが、松下は機能性を重視したものが中心であり、ソニーはデザイン的な側面も付加した楽しさを感じさせるものが中心になっている点が、最大の相違点といえそうだ。
●MD DATA2搭載のMD DISCAMを出品したソニー
ソニーは今回、先だってIFAで出展された「MD DISCAM」を参考出品した。会場での人気も上々で、デモスペースは終始、人だかりとなっていた。今回出品されたものは、基本的にIFAに出品していた物と同じようだが、外装の機能表記がきちんと日本語化されていた点が最大の違い。
IFAの説明では、発売するかどうかも未定という感じだったが、今回出品されたものを見ると、どう見ても製品化間近という感じだった。
今回は日立がDVDディスクを使ったデジタルカメラを出品していたが、日立はあくまでも従来からのDVカメラのディスク化をめざしており、記録時間も1時間単位の記録が可能になっている。それに対して、ソニーの「MD DISCAM」は記録時間は20分だが、カメラ単体で本格的な動画編集を楽しめる点が大きな違い。同じディスク式DVカメラでも、実用重視の日立と、楽しさ重視のソニーという具合にメーカー色が明確にでている点がとても興味深かった。
また、ブースには「Cyber-shot DSC-F505K」のほか、メガピクセルDVカメラ「PC-100」の内部パーツの展示などもあり、楽しめる内容となっていた。
●iD Photoシステム用ドライブを出品した三洋電機
三洋電機は、電子デバイスとは別に、製品中心のブースを別に構え、デジタルカメラを中心とした展開をアピールしていた。
同ブースには、先だって同社とオリンパス、日立マクセルが共同開発した730MBの光磁気ディスク「iD Photo」の出展もあり、今回初めて、同ディスク用のドライブ部分が公開された。
同社はこのディスクを、来年にはデジタルカメラ系に搭載するとアナウンスしており、その駆動装置のサイズに興味があったのだが、やはりディスクメディアだけに結構大きめ。もちろん、この装置は、現行のコンパクトなデジタルカメラに収納できるレベルではなく、既存デザインのデジタルカメラに搭載するのは無理だろう。そのため、同ディスクを搭載するのであれば、やはりデザインを大きく一新する必要がありそうだ。
動画デジカメの三洋だけに、730MBの大容量は大きな魅力。このiD Photoディスク搭載機がどんなスタイルで登場するのか、今から楽しみだ。
また、同社ブースでは、先だって発表された85万画素モデル「DSC-X200」や、同社がオプションとして扱う高速なCFカードであり、簡単にUSB接続できるレキサー・メディア(日本法人登記は「レクサー」ではなく「レキサー」となった)のカードのデモも行なわれていた。
□エレクトロニクスショー '99のホームページ
http://jes99.jesa.or.jp/
('99年10月8日)
[Reported by 山田久美夫]