AMDのStephen A.Lapinski氏(左)およびByran Longmire氏(右) |
会場:カリフォルニア州サンノゼ ファーモントホテル
米国カリフォルニア州サンノゼのファーモントホテルで開催されているMicroprocessor Forumの会場で、AMDコンピュテーションプロダクトグループプロダクトマーケティングディレクターのStephen A.Lapinski氏およびコンピュテーションプロダクトグループディビジョンプランニングマネージャのByran Longmire氏へのインタビューを行なう事ができたので、その模様をお伝えする。
●0.18μmプロセスのAthlonは第4四半期にOEM向けに出荷
Q:0.18μmプロセスのAthlonの状況を教えてください。
Lapinski氏:現在テキサス州オースチンにある当社のFab25という工場で製造しています。CS50というアルミ配線の0.18μmの製造プロセスを利用しています。このアルミ配線の0.18μmのAthlonは800MHzのクロックで、今年の第4四半期中にOEMメーカーへ出荷します。実際に皆さんのお手元に0.18μmのAthlonを搭載した製品が届くのは2000年の第1四半期になると思います。
Q:ドレスデンに建設中と言われているFab30の方はどうなっているのですか?
Lapinski氏:Fab30に関してはもうすぐいいニュースをお伝えできると思いますよ。現時点の予定ではモトローラの銅配線技術を利用した0.18μmのAthlonを2000年の第1四半期中には出荷したいと考えております。
Q:日本では大手メーカーからAthlonを搭載したマシンはいまだに発売されていませんが。
Lapinski氏:おっしゃるとおり、現時点ではまだ日本の大手PCメーカーで採用されていないのは事実です。なぜならば、我々はスタートしたばかりだからです。現在日本の大手PCメーカーにも働きかけており、検証などを行なっている段階です。日本のメーカーはそうした検証にとても慎重ですから、時間がかかっているのは事実です。しかし、私の聞いている限りではとても前向きな結果が出ているようですから、近い将来に日本大手PCメーカーからも発売されると思います。
インタビューの会場に展示されていた0.18μmプロセスのAthlon 800MHzを搭載したPC |
●K6-2+のプランは存在する!
Q:ところで、ロードマップからAthlon Selectが消えていますが、それはなぜですか
Lapinski氏:ご存じの通り、我々はAthlonをメインストリームのCPUとして位置づけていて、実際みなさんに強力なCPUという印象を持っていただくことに成功したと考えています。これに対して、Athlon SelectはバリューPC向けのCPUという位置づけで製品化する予定でした。しかし、OEMメーカーなどと話をしているなかで、Athlon XXXという名前をバリューPCに使うとせっかく根付いた「Athlon」のブランドネームの重みが無くなってしまうという意見が多勢を占めました。このため、我々はAthlonのコアを利用したバリュー向けCPUにAthlonの名前を使うことはやめることにしました。
Q:それは製品の計画自体が消えてしまったという訳ではないのですね
Lapinski氏:そうです。Athlon Selectに相当する製品の計画は進んでいます。しかし、残念ながらまだお話できる段階にはありません。
Q:Athlon Selectの代わりにK6-2に128KバイトのL2キャッシュをオンダイ(K6-IIIやCoppermineのようにCPUダイにL2キャッシュを搭載すること)にしたK6-2+の計画も聞こえてきていますが
Lapinski氏:K6-2+の計画は現在進行しています。K6-2+は0.18μmプロセスで、500MHz以上のCPUで出荷されることになるでしょう。ただ、現時点ではこれ以上は明らかにできません。COMDEXでもう少し詳細な情報を明らかにすることができると思います。
Q:K6-IIIは思ったほどの成功を収めていませんが、これはなぜですか?
Lapinski氏:時期が悪かったのではないかと考えています。我々はK6-IIIをメインストリーム向けのCPUに位置づけていましたが、K6-IIIから3、4カ月後にAthlonの出荷をアナウンスメントしたため、人々の注目がそちらに移ってしまい、残念ながらK6-IIIはそれほど注目される存在ではなくなってしまいました。
Q:今後K6-IIIはどういう展開をしていくのですか
Lapinski氏:K6-IIIはモバイル向けを中心に展開していくことになると思います。0.18μmプロセスのK6-III(Sharptooth-CS50)は2000年の第1四半期に出荷する予定です。
2日目に開催された展示会に展示されていたAthlon 700MHzを搭載したIBM(左)とCompaq Computer(右)のPC |
●x86-64は正常進化である
Q:カンファレンスではx86-64のアーキテクチャを発表しましたがこのねらいはなんですか?
Longmire氏:x86-64の基本的な考え方は、現状のx86の拡張にあります。例えば、インテルはMMX PentiumでMMX拡張命令を導入し、当社はK6-2以降のCPUに3DNow!命令を導入するなどの拡張を行なっています。そうした命令セットの拡張と同じ考え方として、x86-64の命令セットを追加していくという訳です。x86-64を導入するのには2つの訳があります。1つは32ビットの命令と64ビットの命令を同じコアで実行するため処理性能は32ビットも、64ビットもほぼ変わらずに実行できます。また、単なる命令セットの拡張と捉えることも可能ですから、現在の32ビットのCPUとの互換性も確保されます。
Q:AMDの将来のCPUではDirect RDRAMのサポートは考えていらっしゃいますか?
Longmire氏:サーバー用という観点では考えていません。当社ではDDR SDRAMを推進していくつもりです。なぜならば、OEMメーカーがそれを望んでいるからです。
今回のインタビューの会場となったファーモントホテルの1室には、0.18μmのAthlon 800MHzを搭載したPCが展示されていたほか、2日目(10月5日)に行なわれた展示会ではAthlon 700MHzを搭載したCompaq ComputerおよびIBMのマシンが展示されており、実際に触ることができたことを付け加えておきたい(ただし、ベンチマークなどは導入されていなかったのでどの程度のパフォーマンスを持っているかを計測することはできなかった)。
インテルがCeleronでバリューPCにおけるシェアを再び拡大しているのに、ソケット版のAthlonの見通しが不透明になるなどAMDにとって決して状況は良くはない。そうした中で、今回(メディアにのみという限定された状況とはいえ)0.18μmプロセスのAthlon 800MHzを公表したことは、非常に意味があると言える。「AMDは本当に生き残れるのか」という疑問にとりあえずは答えることができたと言っていいだろう。
('99年10月8日)
[Reported by 笠原一輝]