第22回 : 要約することの必要性。モバイルにはモバイル向けのサービスを |
要はPPPでルータを構成するコンピュータにリモート接続する形態になるのだが、僕が使っている富士通のNetVehicleに、この機能が搭載されていなかったため気付かなかった。しかし個人、SOHO向けのダイヤルアップルータには、イーサネットを用いなくてもインターネットへのルーティングを行なえるこの機能を装備している機種は増えており、一般的とは言わないまでもかなりのルータユーザーがA1Rを活用できるだろう。
ルータそのものへの興味喪失から、最新のダイヤルアップルータに関する知識が不足していたことをお詫びしたい。
■ 携帯情報端末で話が始まっても、話の終わりは携帯電話
最近、仕事の変化からITビジネス関連の取材をしばらくしていなかったのだが、ここ1カ月ほど再びITビジネスに関連した仕事が増え始めてきた。企業のIT投資も少しづつ復活し始めているのか、それとも復活を予見して動きが活発化しているだけなのか。そのあたりは様々な見方があるだろう。
そんなITビジネスに関連する動きの中で、モバイルという言葉はまだまだ風化してはいないようだ。様々なSIベンダーたちは、ナレッジマネージメント(頭文字を取ってKMと呼ばれる)という知識管理のアプリケーションをビジネスの中心に据えてきている。
この連載でKMとは何なのか? といった話をするつもりはないが、一部モバイルでの活用にも関連してくると思うので少しだけ説明したい。
KMはとても広い範囲の使われ方を表現したもので、なかなかズバリ言い当てる言葉が思い浮かばないのだが、1つの要素として企業などで蓄積されたノウハウや実績などの情報を管理し、各業種ごとに最適な情報を検索する手段を提供したり、最適な情報を意図的に社員に提示する仕組みのことを言う。実装する際には、文書データベースやメッセージングシステム、Webによる広報など、様々な道具を利用して構築していくことになる。
そのKMの一部分として、最近脚光を浴びているのが各種情報をサマライズして、エンドユーザーごとに必要とする情報を見せるアプリケーションだ。たとえば未読メール、スケジュール、仕事のリスト、営業報告のグラフ、処理すべき伝票などを要約し、機能的に配置することで仕事に必要な情報を1画面で見渡す(あるいはその画面上でデータを操作・検索する)ことができるようになれば便利だとは思わないだろうか。もちろん。内容は個人ごと、業種ごとにすべてカスタマイズされるものとする。
Microsoft会長のビル・ゲイツ氏は、これをデジタルダッシュボードという名前で紹介したが、様々な情報が電子化され、コンピュータを中心に流れ始めると、情報の流通量が膨大になり自分にとって本当に必要な、真っ先に知らなければならない情報を逃してしまうことになりかねない。デジタルダッシュボードそのものの原型は、以前からアイディアとして存在するものだが、今の時代になって本当にその重要性が脚光を浴びるようになったと言える。
なんだか堅い方向へと話が向いてきてしまったが、KMを指向したアプリケーションの一部分としてデジタルダッシュボードのような、必要な情報をいかにわかりやすく整理し、要約して一覧するための技術と道具が今後数多く開発され、そして使われてくるだろうと考えている。
さて、ここで中見出しの携帯情報端末に話を戻そう。そんなKMツールについて知人たちと雑談を交わしていた折り、自然に携帯情報端末の話になった。サマライズした情報をPalmシリーズやWindows CEデバイスなどに自動的にコピーしておき、外出時にそれを持ち出すことで必要な整理された情報にポータビリティ(可搬性)を持たせることが可能になる。ところが話を進めるうちに、いやそれなら携帯電話でいいよ、という話になってきたのだ。
■ 端末の種類が重要なわけではない
話の筋はこうだ。携帯情報端末にサマライズ情報をコピーして持ち歩くのはいい。しかし、情報は常に変化するものだ。当然、ビジネスで使うモバイルということを考えたとき、外出先で自動的に情報が更新されることが望ましい。更新された最新の情報にこそ、本当に必要な情報が埋まっているもの。ここを落としてしまうわけにはいかないだろう。
Palm VIIのようなワイヤレス通信機能を埋め込んだ端末があり、情報を見せる側のサーバーに端末ごとカスタマイズして情報を送り出す仕組みを作れば、そうした環境を作ることはそう難しいことではないと思う。しかし、よく考えてみれば、ワイヤレス通信機能を持った情報端末など利用しなくても、似たようなデバイスは日本に数多く普及していることがわかる。言うまでもなく携帯電話だ。
特にパケット通信網を有効に活用できるiモード端末は、ほんの少しハードウェアをリッチにするだけで(スマートフォンと言うほど多機能でなくとも)優秀な情報端末になるだろう。何もフル機能である必要はないのだ。メールも短くていい。内容から無駄な部分を省き、用件がわかるように要約されて届けばいいのだから。同様に今後始まるcdmaOneのパケット通信サービスでも同様のことはできるだろう。
アクティブにメールを受信しようと思わなくても、最新のメールにアクセスできるiモードをデジタルダッシュボードのフロントエンドにしたいというアイディアは、その場にいたiモードユーザーの多くが同意していた(残念ながら僕自身はiモードユーザーではない)。
もっとも、個人的には端末の形態はどんなものでもいいと思っている。携帯電話に最低限の情報が届けばいいと考える人もいれば、PC上で閲覧する状態に近い機能を求める人もいるだろう。また個人の好みだけではなく、業務によっても要求は異なるなど、端末そのものを「これがいい」と限定するのはよくない。要点は「必要な情報がいつも使っている道具を通じて手元に送り届けられる」ことだ。その道具は何でもいい。
■ パーソナル向けにもモバイル情報サービスを
以前、このコラムの中で、モバイルに特化したカスタマイズ可能でスケジュール管理などもできるポータルサイトなど、ハードウェアからサービスに業界の焦点は移るのではないかと書いたことがあった。
そのときには、Webを通じた情報管理サービスを行ない、端末それぞれの特性に合わせてサービスすることで、同じ情報に対して複数のデバイスからアクセスできるようにするといいのではないかという提案だった。この意見は今でも変わっていないのだが、加えて情報のサマライズを行ない、整理し、必要なものだけをパケットで端末に送り届ける。そんなサービスがあってもいいのではないかと思う。
現実のビジネスとして行なうとなれば、完全に“個人向け”というのは難しいだろう。無料サービスにするには初期投資が大きくなるだろうし、かといって毎月の料金を支払う人が対象となると市場は極端に小さくなる。小規模事業者向けのソリューションサービスに落ち着いてしまうのかもしれないが、機能を限定したり広告情報を配信することなどでパーソナル向けサービスとしても発展するようになれば、ワイヤレス通信機能を持つ小型のコンピュータ(携帯電話なども含む)は一段上の価値を持つようになるはずだ。
[Text by 本田雅一]