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国際コンピュータ通信会議1999 レポート

ソニーCEO 出井氏基調講演

 14日から3日間、東京国際フォーラムにおいて国際コンピュータ通信会議1999が開催される(登録費は14日までの申し込みで7万円、15日以後は8万円。学生は2万円)。初日の14日は、ソニーCEOの出井伸之氏が「デジタル・ネットワーク時代のソニーの挑戦」をテーマとして基調講演を行なった。


■ BOXカンパニーからいかに脱却するか

基調講演

 まず、出井氏はソニーの事業内容を「コンシューマー向けハードウェアとコンテンツ(音楽、映画)の会社」と紹介。これに「Eコマースが発展してきたら金融をちょっとやりたい」と付け加えた。

 出井氏によると、ソニーの売上高6兆8千億円のうち、エレクトロニクス事業が約70%、音楽が10%、映画が7%、保険・ファイナンスが9%を占める。エレクトロニクス、つまりハードウェア事業の割合が高いわけだが、出井氏は「BOXカンパニーからいかに脱却するか」がソニーのテーマだと述べた。
 その理由は、「通信・インターネットの発展でハードそのものを売る価値がなくなってきた」こと。具体的な例としては、たとえばカラオケ市場では、通信カラオケによってハードの売上が80%落ちたという。「とりわけオートチェンジャー製品を持つソニーとパイオニアは壊滅的被害を受けた」。また、携帯電話製品では(世界的にはノキアのような例外はあるものの)、「使う価値はあるけれどもハードを売る価値はない」状況になっており、ハードベンダーの顧客はコンシューマーではなく、オペレーター(キャリア)になっている、と述べた。「これではメーカーはオペレーターの奴隷になってしまう」。

 また、最近ではフリーPCのように、ハードそのものはタダ、という付加価値のみに値段のつく販売方法も登場してきた。「われわれが売っていた製品の価値というものが、そのまま通用する時代ではなくなってきた。通信の発達によってハードそのものを売る価値がなくなりつつある」と出井氏は重ねてソニー変革の必然性を述べた。

■ 日本は官民とも“競争”を理解していない

 高額な参加料もあり、胸のバッジを見ても参加者の多くは通信事業に関わる人々だ。それを十分意識した上で、「電話業界はコンテンツに関する理解がない」とのっけから言い切った出井氏だが、日本の通信市場についてはさらに辛口のコメントが続く。

 「日本のインターネットについて言えば、通信料金がものすごく高い。定額で1万円とは、非常に高い。料金を市場原理で決めないで自分で決めるのがそもそもおかしい」。

 「NTTが固定のアクセスラインを100%独占しているのは世界的に見て異常な姿だ。ほとんどの国で、通信事業が公益産業として保護されてきた時代は終わっている。日本でいまだに公益産業と捉えられているのは、世界的に見て遅れている。先進国では、日本を除いて外資規制は通信事業ではほとんどない。通信会社、放送会社も売買の対象になっている。日本でも大蔵省管理下の銀行・証券業界は保護産業から競争産業へと変わりつつあるが、日本はずっといわゆる“護送船団方式”でやってきていて、『競争』というものが官民ともに理解されていない」。

■ 競争のみによってビジネスの発展はある

 出井氏はさらに「現状を見ていると、日米の通信事情の差は開くばかりのように思える。日本の通信を伸ばすには、競争によって安くしていく仕組みが必要だ。競争がなければ、市場のダイナミズムが失われる」、「日本の閉鎖的な傾向をなくすためには新しいレギュレーションが必要だ」と指摘した。

 「競争の場があった方がNTTにとっても良いはず。アナログからデジタルに移行するこの時代に、従業員の数も含めて、競争のできる体質に改善できる」。(ちなみに、出井氏の前にはNTTの宮津氏が開会講演を行なっており、同社の20数万の社員のうち、アナログ事業に従事する社員が15万人と半数を大きく超えているという話があった)。

■ ビジネスパートナーとして

 出井氏は、同社のウォークマン、テレビ、パソコン(VAIO)、プレイステーション2、DVカメラなどはすべてネットワーク端末だとした上で、今後の事業戦略にはオペレーター(キャリア)との協力が欠かせないと述べた。

 「企業というのは、過去の栄光が輝かしいほど、変えにくいものだ。ソニーもBOXカンパニーから脱却しようとしている。ソニーはネットワーク端末としてのハード製品とコンテンツで、通信業界、コンピュータ業界を変革していきたい。その時に、ビジネスパートナーとして、通信業界と協力して、ネットワーク時代へのビジネスモデルの切り替えを一緒にやっていきたい。通信業界にいるみなさんに門外漢のわたしが勝手なこと言わせていただいたが、現在はインターネットという隕石が落ちて、われわれもじょじょに死にかけているという状況だ。ビジネスパートナーとして、通信業界のみなさんと協力して、新しい面白いビジネスを開発していきたい」。

□国際コンピュータ通信会議1999 のホームページ
http://www.convention.co.jp/iccc_j/

('99年9月14日)

[Reported by hiroe@impress.co.jp]


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