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プロカメラマン山田久美夫のIFA 1999レポート

キヤノン、オリンパス、東芝のニューモデルたち

'99年8月28日~9月5日 開催(現地時間)

会場:独ベルリン 見本市会場

 独ベルリンで開催中の「IFA 1999」。今年後半の注目機種がズラリと並んだ今回のイベントでは、まだ日本国内で正式発表されていないモデルも数多く含まれている。これらのモデルについて紹介しよう。



●キヤノン
211万画素2倍ズーム「PowerShot S10」と独自開発の昇華型プリンターを出品

 キヤノンはIFAにあわせて、同社のパーソナル機初の200万画素級モデル「PowerShot S10」を発表。また、独自開発という高画質な昇華型プリンターがあわせて発表された。



 「PowerShot S10」は、きわめてコンパクトなズームモデル。スタイリングやボディーサイズはほとんど「A50」と同等で、パッと見た感じでは見分けがつかないほど。まさに“「A50」の200万画素版”という印象だ。

 CCDは1/2インチ・211万画素の補色系CCDを搭載。レンズは、光学2倍ズーム(35~70mmレンズ相当)で、従来のワイド系2.5倍ズーム(35mmカメラ換算で28~70mmレンズ相当)からスペックダウンしている。これはA50とほぼ同じボディーシェルで、200万画素化を実現するための苦渋の選択なのだろう。

 機能的にはかなり進化している。連写性能が向上し、最大解像度で秒間1.7コマの連写が可能となった。通常モードでの使用感もA50より軽快になっている。液晶表示の品質も向上しているようだ。撮影モードとして各撮影シーンに最適化された設定となる、被写体別プログラムモードが新設されている。実効感度も最大解像度でも、ISO100のモードとISO400のモードが選べるようになった。

 操作性も大幅な見直しが図られており、使用感も向上。とくに十字パッドの採用で、ズーミングや詳細設定が容易になった点は大きな特徴だ。記録媒体はCFカードで、microdriveに対応するCF Type2仕様となっている。PCとのインターフェイスはUSBを搭載。Windows 98搭載機では、PCと接続するだけで自動的に画像データがダウンロードされるシステムも採用されているという。

 ブースで手にした感じは、意外なほど軽快だった。サイズはA50と同じだが、より持ちやすいデザインだ。操作性は向上しているが、やや好みが分かれるところもあり、まだリファインする余地がありそうだ。なお、現地での価格は1,600DM(約10万円)。16%のTAX込みの価格であることを考えれば、まずまずの水準だ。



 「CD-300」と呼ばれる、キヤノンオリジナル設計の昇華型プリンタも同時に発表されている。このプリンタは300×300dpiのオーバーコート式の昇華型で、プリントサイズはポストカードとパノラマの2種類がある。

 ポストカードは、169×100mmのペーパーに141×100mmのサイズでプリントされ、ペーパー長辺の両横にあるミシン目がついた余白部分をカットすることで、完全に縁なしのポストカードプリントを実現している。そのため、通常のA6判昇華型プリンタのような白枠がない。実質的なプリントスペースは格段に大きく、かなり迫力がある。また、縁なしになると、普通の銀塩プリントに近い雰囲気になるため、プリントとしての高級感がある。

 パノラマプリントでは、276×100mmサイズのペーパーを使い、両端の余白をカットし、248×100mmのプリントが得られるもの。しかもこのモードは、キヤノンのPowerShot A5系列のモデルとの連携が図られている。カメラ側でパノラマモードで撮影した2枚のデータが、プリンタ内部でつなぎ合わされてプリントされる。

 画像データの入力はPCカードからの直接読み込みがメイン。CF Type2対応とPCカードType2の2つのスロットを持ち、アダプタを介することで、スマートメディアやメモリースティックにも対応できる。このほか、アナログのビデオ入力やパラレルポート経由でのプリントもサポートされている。

 会場では、S10で来場者を撮影し、CD-300でプリントするといったデモが行なわれていたが、それを見る限りプリントのクォリティはかなり良好だった。オーバーコート式ということもあって、表面の質感も銀塩プリントに近い感じで、とても好感が持てる。昇華型ならではの階調の滑らかさも大きな魅力だ。オーバーコート式ということで、プリントの保存性も期待できるだろう。

 ドイツでの価格は1,199DM(約75,000円)。メディアは標準サイズの36枚セット(ペーパーとカートリッジ)で44DM(約2,700円)と納得できる水準だ。個人的には「S10」よりも、このプリンタに強い魅力を感じた。


●オリンパス
C-900 ZOOMの改良モデル「C-920 ZOOM」公開


 ヨーロッパで30%を越えるダントツのシェアを誇るオリンパス。IFAでは、フラッグシップとなる「C-2500L」とならんで、国内未発表のC-900 ZOOMの改良機「C-920 ZOOM」が発表された。といっても、IFA内には一般来場者向けブースはなく、各社のデジタルカメラを扱う商社のブースと招待客用商談ブースのみの展開だった。

 「C-920 ZOOM」は、C-900と同じ130万画素3倍ズーム機だ。基本デザインも同一で、外観上はボディーカラーがゴールド調になった程度で、ほとんど見分けがつかない。

 基本機能はかなりアップしており、CCDは1/2.7インチの補色系130万画素。CCDの改良により実効感度が従来のISO100相当からISO160相当へと向上している。さらに、必要に応じてISO160、320、640に固定して利用することもできる。カラーマネージメント関係も改良されており、C-900が苦手だった紫系の再現性が向上しているという。

 液晶モニターは広視野角タイプの低温ポリシリコンTFTを搭載。斜め方向からの視認性が格段にアップしている。

 大容量バッファや内部処理の高速化により、連写性能も向上。通常のHQモードでは、連写モードで秒間1コマ・連続8コマまで撮影可能。通常モードでもAF測距などを含めて約1.5秒間隔での撮影が可能という。C-1400XLと同じように、カメラ上部のモード表示用液晶でバッファ内の未処理データの枚数も確認できる。

 手にして感じは、C-900 ZOOMそのもので、なんら違和感はない。だが、操作してみると撮影インターバルが格段に短くなり、かなり軽快なモデルへと進化していた。液晶ファインダー派の私には、広視野角液晶モニターがきわめて魅力的だった。一度使ってしまうと、通常の液晶モニターが見にくく感じてしまうほどだ。

 ドイツでの価格は、1,200DM(約75,000円)。C-900 ZOOMから価格的にはほぼ据え置きで、機能がアップしたという感じ。

 派手な新機能はないが、軽快な使用感、高感度化によるカメラブレの軽減など、細かな改良が施された魅力的なモデルだ。そろそろ、基本的なスタイリングは踏襲しながら、よりコンパクトで高品位なニューモデルの登場も期待したい。


●東芝
214万画素光学3倍ズーム「PDR-M5」を出品


 東芝は7月末のMacworld Expo New York '99で発表された、214万画素の光学3倍ズーム搭載機「PDR-M5」を出品した。会場で配布されているカタログには掲載されているものの、ブースの説明スペースにその姿はなく、ディーラーやプレス向けだけに、商談ルームで見せるというスタイルを取っていた。

 「PDR-M5」は、軽快さで定評のある「M4」の基本パーツを使った、光学3倍ズーム搭載機だ。CCDは214万画素の原色系で、光学系は35mmカメラ換算で35~105mm相当の3倍ズームとなっている。

 スタイリングは独特で、ユーモラスな印象も受ける。写真では大きく見えるが、手にしてみると、意外に軽くて持ちやすい。使用感はとても軽快、「M4」のスピーディーさをそのまま維持している。体感上の軽快感は現行の200万画素3倍ズームでもトップレベルだ。また、Motion JPEGによるAVI形式での動画記録機能(映像のみ)も追加されている。

 ドイツので価格は1,800DM(約11,1600円)。これは現地での「C-2000 ZOOM」や「FinePix2900Z」と同程度の価格帯だ。


●コダック
230万画素のDigita OS搭載機「DC290ZOOM」を公開


 コダックブースでは、ニューモデルとして国内でも発表済みの「DC215ZOOM」、「DC280ZOOM」とともに「DC290ZOOM」の存在を公開した。

 といっても、ブース内には新製品として「DC290ZOOM」という文字があるが、現物に関してはドイツ国内での正式発表である9月中旬以降でなければ見せられない、と取材を断られてしまった。このあたりの生真面目さと融通が利かない部分は、いかにもドイツ的だ。

 この「DC290ZOOM」は、昨年発売された「DC260ZOOM」の230万画素版後継機。より正確に言えば、海外では「DC260ZOOM」の高速版である「DC265ZOOM」というモデルが販売されており、実質的にはその後継機になるわけだ。米Kodak製品情報を見る限り、外観が多少変更され、内部処理の高速化も図られているようだ。

□「IFA 1999」(Internationale Funkausstellung Berlin)
http://www.ifa-berlin.de/

('99年9月2日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp