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プロカメラマン山田久美夫のIFA 1999レポート

三洋・リコーが新機種を発表

'99年8月28日~9月5日 開催(現地時間)

会場:独ベルリン 見本市会場

 ドイツで2年に一度開催される、世界最大の民生用エレクトロニクス展である「IFA 1999」(Internationale Funkausstellung Berlin)が、現地時間の8月28日から9月5日まで、独ベルリンの見本市会場で開催される。

 このイベントは、通称“ベルリンショー”と呼ばれる大規模なもので、日本のエレクトロニクスショーに相当するAV機器を中心とした家電系のショーだ。3月のCeBITに比べるとさすがに規模は小さいが、参加メーカーは800社、来場者は45万人を誇る。会場も幕張メッセの数倍規模と、日本のイベントとはケタ違いのスケールである。
 先週、デジタルカメラの新製品ラッシュだったのは、この「IFA」をターゲットにした展開だったわけだ。実際にヨーロッパ、とくにドイツ市場でデジタルカメラは、昨年の2倍という急成長を遂げている。まだ、出荷台数の面では日本に及ばないが、以前にもまして注目度が高まっている。
 今回は、この「IFA」会場で、世界で初めて発表された三洋とリコーのニューモデルについてレポートする。また海外で先行発表された、このIFAでデビューした「キヤノン Power-shot S10」、「オリンパス C-920ZOOM」、「コダック DC290 ZOOM」などのニューモデルについては第2弾でレポートしよう。


●三洋電機
手頃な85万画素単焦点モデル「VPC-X360EX」



 三洋電機のドイツ法人である三洋フィッシャー販売有限会社(ベルリン)は、今回のIFAで「VPC-X360EX」というニューモデルを発表した。

 このモデルは軽快さで定評のある「DSC-X110」をベースに、よりファッショナブルなデザインを採用し、同時に低価格化を図った、85万画素単焦点モデルだ。機能的にはまさに「DSC-X110」と同様であり、同社の説明でも、事実上の後継機としている。

 サイズ的には従来機と同じだが、ボディーが丸みを帯びたことで、なかなかファッショナブルな雰囲気を備えている。女性ユーザーを意識したというだけあって、手にした感じも以前よりソフトなもので、X110のようなある種の無骨さは感じられない。しかも、X110ではレンズ部に指がかかり安い点がやや気になったが、今回のデザインではその点も改善されている。

 また、ボディーの両端がプラスチック素材になったことで、重さも200gと軽量化されているようだ。そのぶん、高級感という点ではやや後退しているが、今回のモデルの方がファッショナブルで軽快感のあるデザインに仕上がっているため、個人的にはより好感が持てた。

 使用感はまさに「X110」と同等の、実に軽快なもの。もちろん、1秒台の起動時間や1秒以下の記録時間、最長120秒の動画記録機能もきちんと踏襲されている。気軽に持ち歩け、動画も撮れるメモ用機として、なかなか魅力的なモデルに仕上がっている感じだ。

 現地での価格は899ドイツマルク(DM)。ヨーロッパは全体にデジタルカメラの価格はかなり高いことを考えると、かなりリーズナブルなといえる。実際にドイツ法人が扱っている先代モデル「VPC-X350EX」(日本の「DSC-X100」相当)よりも低価格なものとなっている。

 具体的には、現在1DM=62円程度なので、そのまま換算すると5万円半ばとなる。だが、ドイツの場合は16%もの税金が内税としてこれに含まれているため、本体価格を逆算すると日本円で48,000円程度。さらに、日本とドイツの全般的な価格差を考慮すると、日本で発売されれば、おそらくは4万円弱の手頃な価格になることが予想される。

 今回はドイツをはじめとしたヨーロッパ市場向けの発表となったわけだが、日本での展開については未定という。85万画素モデルとはいえ、軽快で動画も楽しめる手頃。肩肘張らずに気軽に使えるファッショナブルなモデルだけに、日本での早期の発表を大いに期待したい。また、カラーバリエーションモデルの登場も大いに期待したいところだ。

 また、同ブースには、日本では既発売となっている「VPC-SX500EX」(DSC-SX150の欧州版)や、近日発売のCD-R採用の電子アルバム「DMA-100」も新製品として出品されていた。いずれのモデルも人気は上々で、とくにIFAは家電系のイベントであり、日本よりもCD-Rの普及率が高いヨーロッパのイベントだけに、CD-R採用の電子アルバムへの関心が高かったのが印象的だった。


●リコー
RDC-5000の3倍ズーム版「RDC-5300」



 リコーは今回のIFAで突如、「RDC-5000」の後継機となる230万画素光学3倍ズームレンズ搭載の「RDC-5300」を発表した。

 とはいえ、残念ながら会場にリコーの自社ブースはなく、デジタルカメラを扱っているディーラーのブースでの出展となっていた。また、資料もモノクロコピーの簡単なものでカタログもない状態。危うく見逃すところだった。

 本機はRDC-5000をベースに、新開発の光学3倍ズームを搭載し、さらに内部処理の高速化やインターフェースの向上を図っている。ボディーが異なることもあって、意外に新鮮な印象を受ける。3倍ズーム化にともなって、レンズが完全に沈胴しきれず張り出すようになったが、これがズーム機らしい雰囲気を醸し出し、なかなか好感が持てる。

 手にしてみると、先代で気になった持ちにくさがかなり解消されている。これはボディー右側に大きめのグリップ部を新設したことで、ホールド感が格段に高まったためだ。レンズ部が最初から出っ張っているため、レンズに指が掛かりにくくなったのも好ましい。

 まっさきに感じたのは液晶ファインダーの進化だ。前代モデルではレスポンスと表示品質が今ひとつで、評価を下げる要因となっていたが、きちんと改良されている。表示レスポンスについてはライバル機と肩を並べるまでになっており、表示品質についても会場で触っている分にはほぼ不満のない状態に向上した。なお、本機では光学ファインダーをメインで使うユーザーのために、メインスイッチをONにした状態で、モニターがOFFになるモードも新設されている。

 また、従来機の欠点だった記録待ち時間の長さも改良されている。標準設定の状態で、撮影したデータをバッファーにためながら撮影するようになり、撮影間隔は約2秒程度とかなり高速化された。また、フルサイズの画像で連続4コマまでの連写撮影もサポートされた。もちろん、バッファーフル時などは処理待ちとなるが、デジタルカメラの初心者やビジネスユーザーをターゲットにした本機の性格を考えれば、今回の改良で事実上、十分な軽快感を実現したといっていいだろう。画質面も改良されているということだったが、この点を会場で確認することはできなかった。

 価格は1,500DM(現在1DM=62円換算で93,000円)と、先代のRDC-5000の1,698DMよりもむしろ安価に設定されているようだ。先代のRDC-5000のフルフラットボディーも魅力的だったが、撮影時の持ち易さや軽快感、操作感という点で、今回のRDC-5300は格段に進化したモデルとなっている。日本での展開は未定だが、早期に手頃な価格帯で市場に導入されることを強く希望したい。

□「IFA 1999」(Internationale Funkausstellung Berlin)
http://www.ifa-berlin.de/

('99年8月31日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp