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Mobile & PDA Expo'99 New Yorkレポート

会場入り口
'99年8月11日~13日 開催(現地時間)

会場:New York Hilton & Towers

 8月11日~13日の3日間に渡りニューヨークのNew York Hilton & TowersにてモバイルPCおよびPDAに関するカンファレンスと展示会Mobile & PDA Expo'99が開催された。Mobile & PDA Expo'99はMobile Universityで現在の米国のモバイルシーンについての分析と解説が、展示会で米国のモバイル機器メーカーによる展示が行なわれた。


●セミナー:ペーパーレスをめざせ!? モバイルキャプチャデバイス

 今回のイベントはどちらかといえばカンファレンスの側面が強く、多くのセミナーが行なわれた。例えば「Intro To Hand-Held & PDA Technology」や「Digital Camera & Imaging」などで、それぞれ現在米国の市場でモバイル機器やデジタルカメラなどがどういった現状にあるかなどが語られていた。しかし、筆者が知っている日本のモバイルシーンに比べてしまうと、昨年の話を聞いているようで、正直なところあまり参考になるという話では無かったことも事実だ。

 例えば、デジタルカメラの話で壇上に上ったのはHewlett-Packardの担当者や米国のモバイル系メディアの記者などだが、ご存じの通りHPはデジタルカメラ業界を引っ張っている会社ではない。そうしたことからもわかるように、デジタルカメラの話も現在のトレンドなどを語るのみで、「今年の後半には200万画素が主流になる」と言われても、既に200万画素が主流になっている我々としては何を当たり前のことを言っているのだと感じてしまったのが正直なところだ。できれば、こうしたセミナーにはモバイル機器やデジタルカメラで大きな役割を果たしていると思う日本のメーカー担当者を呼んで欲しかったところだ(逆に言えば、日本でこそこうした人を集められるモバイル系のカンファレンスを開催すべきだと思う)。

 そうした中でも筆者が興味を引かれたのはプレスカンファレンスに登場したHPのCapture Communication Device Division Brand ManagerのBeth Moses氏のペーパーレスへの実現に向けたモバイルキャプチャデバイスについての講演だ。日本では発売されていないが、HPはCapShareと呼ばれるモバイル環境で利用するハンディスキャナを昨年から発売している(詳しくは後述)。Moses氏はその講演の中で、今後モバイル環境においてスキャナが普及することにより、紙とそれを移動させるコストの低減を訴えた。例えば出先から会社に文章を送信する場合、通常であれば紙をFedExやUPS(日本であれば宅配便)を利用するかFAXで送信するが、FedExなどを利用した場合1回で20ドル(約2,400円程度)、ホテルのFAXを利用した場合であれば10ドル(1,200円程度)程度かかる。しかし、モバイルスキャナでPCに取り込んでメールなどで送信すれば限りなく0に近いコストで送信できると述べた。日本でもモバイル系の文書取り込みツールは注目を集めており、富士通やNEC、松下電器などからモバイルスキャナが発売されている。日本IBMが販売しているCrossPadもそうしたツールの1つということができる。今後ともこれらのツールに注目すべきだろう。


●展示会:バーチカル向けのモバイル機器が多数展示

 併設された展示会では、残念ながら一般市場向けの展示はほとんどなく、NECとHPが既に発表済みのWindows CE機器をいくつか展示していた程度だ。しかし、バーチカル(企業の特定用途)向けのモバイル機器が多数展示されており、そうした中から気になった製品を取り上げる。

□HewlettPackard CapShare 910

 HPが力を入れて展示していたのが、CapShare 910というハンディスキャナだ。この製品は昨年の冬から既に販売されていたのだが、日本で紹介されているのをあまり見たことがないので紹介しておこう。

 本製品は底面に読みとり部分があり、それを利用して紙などをスキャンするようになっている。読みとり方向はユーザーの任意でよく、適当に走らせてもスキャナ側で上手くデータを合成してくれるようになっている(どのように動くか見たい方はHPのサイトを参照)。スキャンしたデータは本体内部のメモリに蓄積され本体のモノクロ液晶で確認することも可能になっている(ズーム機能も持っており、拡大表示でキャプチャした文章の詳細を確認することも可能)。キャプチャした文章はレターサイズで50枚まで本体にストアできるが、本体上部についている赤外線通信ポートを利用してPCに送信したり、HPの赤外線ポート付きプリンタで印刷したりということも可能だ(なお、PCへはシリアルケーブルでも送信可能)。米国におけるストリートプライスは669ドル(日本円で約8万円)。

 日本でも富士通やNECなどがモバイル向けのスキャナを販売しているが、CapShareが優れているのはPCがなくてもこれ単体で動作するということだろう。このため、ちょっと鞄に忍ばせておいて気になった時にはさっと取り出してスキャンするという使い方が可能だ。PC付属のデジタルカメラと単体のデジタルカメラとどちらが使いやすいかといえば、単体のデジタルカメラをあげない人はいないだろう。それと同じで、こうしたモバイルスキャナも今後は単体で動作可能なものがトレンドとなる可能性が高いと筆者は思う。なお、既に述べたように本製品はHPの日本法人である日本ヒューレットパッカードからは発売されていないが、是非とも日本でも発売して頂きたい。

HPのブースに展示されていたCapShare。699ドルとやや高いものの、単体で文章を蓄積できる利便さは評価して良い
赤外線通信ポートを利用してCapShareから直接プリンタへ文章を送信しているところ


□HUSKY Technology fex21

fex21はWindows CE 2.11を搭載したバーチカル向けWindows CEマシン
 HUSKY Technologyという会社のfex21というWindows CEマシンは、ちょっとユニークな形をしている。通常Windows CEマシンは液晶を折り曲げてたためるような形状になっているが、fex21は液晶とキーボードが一体になった構造になっている。これはコンビニエンスストアや工事現場などのフィールドワークにおける入力に利用する機器であるためで、コンシューマ向けのマシンのように携帯時を考えなくていいためであるという。



□DataRover DATAROVER840

Magic Capを搭載したDATAROVER840。沖電気のOEMということだ
 OSになつかしのGeneralMagicのMagic Capを搭載したDATAROVER840。DataRoverによると、日本の沖電気のOEMであるという。既に消えたと思っていたMagicCapだが、こうした特定用途向けの端末では細々と使い続けられているようだ。なお、本製品もバーチカル向けで、コンシューマ向けの販売はない。


□Nokia WAPブラウザ

WAPのブラウザが導入されたCASIOのE-100。会場ではWMLのページを閲覧するデモを行なっていた
 NokiaがWAPフォーラムのブースで展示していたWAPブラウザ。展示されていたのはWindows CE用のブラウザだが、むろん携帯電話用など様々な環境にあわせたラインナップが用意されている。WAPの標準言語であるWML(Wireless Markup Language)で記述されたページなどをブラウズできる。


●番外:真似もここまで開き直れば立派なdaVinci

 最後に直接は本イベントと関係ないが、筆者がニューヨークで購入した3ComのPalmライクな端末について報告しておこう。Royalという会社のdaVinciという製品がそれで、見た目やOSの動作の仕方など、もう完全に開き直ったとしか思えないほどPalm/Pilotシリーズにそっくりだ。入力はグリフィス文字そっくりの「daVinci Script」を利用して行なうそうで、筆者がPalmで使っているグリフィス文字をそのまま入力してみたが、かなりの文字がそのまま認識された。ちなみに、本製品はマルチランゲージ対応をうたっており、確かにオプションメニューを利用して切り替えることが可能になっているのだが、残念ながら日本語は無かった(当たり前か)。

 もちろん、Palm/Pilotシリーズと同じように住所録、To Doやスケジュール帳などが用意されており、標準添付されているソフトウェアを利用してPC上のOutlookとシンクロナイズが可能だ。PCと接続するのに必要なクレイドルも標準で付属しており、2MBのモデル(というかそれしかないのだが……)で99ドル(約12,000円)という低価格なのだから恐れ入る。なお、オプションでキーボードも用意されており、こちらは29.98ドル(約3,600円)だった。

 ニューヨークのPCショップには大抵おいてあったのだが、調べてみると年初のCESで初めて展示された製品だそうで、既に発売されてからずいぶんとたっているようだ。購入するときに店員に売れているかと聞いてみたが、「わかない。少なくとも私はこれを売ったのはあなたが初めてだ」と言われたので、あんまり売れてなさそうだが、あまりにも安いので米国で見かけたら話の種に購入してみるのも悪くないかも?

WorkPad c3と並べた写真。c3やPalm Vと比較するとやや大きいが、Palm IIIとはほぼ同じ大きさ
daVinciのパッケージ、本体、付属品
daVinciの文字入力に利用するdaVinci Script。グリフィス文字によく似ている。
別売りのキーボード。クレイドルの背面にあるポートに接続する

□Mobile & PDA Expo'99 New York Cityのホームページ
http://www.pda-expo.com/

('99年8月16日)

[Reported by 笠原一輝]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp