米CASIOが先のMacworld Expo New York '99で発表した、130万画素光学8倍ズーム搭載機「QV-8000SX」。日本国内での発表はまだ未定だが、そのベータ版モデルが入手できたので、その実写データを公開する。
詳細は米CASIOのリリースをご覧いただきたいが、ここでは使った感触を簡単にお届けしよう。
●大きく無骨だが、視認性のいい大型液晶は魅力
QV-8000SXの基本デザインは130万画素光学2倍ズームを搭載した「QV-7000SX」がベースとなっており、それにクラス最高の倍率となる光学式8倍ズームを搭載したもの。そのため、レンズ部はそれなりに大きくなっているが、このサイズで8倍ズームを納めた点は実に立派だ。
ボディー側は従来のQV-7000SXとほぼ同じもので、あまりスタイリッシュとはいえず、質感もイマイチだ。しかし、QV-7000SX譲りの高精細なHAST型の2.5インチ大型液晶モニターは魅力。このモニターは、かなり視認性が高く、真夏の日中炎天下でも十分に画像を確認することができる。しかも、液晶自体の解像度が高いこともあって、微妙なピントのズレも確認できる点には好感が持てる。
●撮影・再生とも軽快な感覚
起動時間は約3秒と早い。また、大容量バッファーの搭載で、次のコマが撮影できるまでの待ち時間は、わずか1.5秒程度。内部処理も十分高速で、実処理時間も3秒台で、ストレスなく軽快に撮影できる。また、再生もきわめて高速で、秒間3コマくらいの割合で再生コマ送りができる。本機は高機能なだけに、軽快さがひときわ印象的だ。
●撮影機能はフルスペック
撮影機能は、ほとんどフルスペックだ。露出モードを見ても、プログラムAEはもちろん、絞り優先AE、シャッター速度優先AE、マニュアル露出もある。また、シャッター速度は最高1/2,000秒から、長時間露出側は最長64秒まであり、さらにシャッターを開きっぱなしにできるバルブモードまで備えている。しかも、長時間露出をしても、意外なほどノイズが乗らないのも魅力だ。
測光モードも、マルチ測光のほか、中央部重点測光、スポット測光が選べる。画質面でも、シャープネス(輪郭強調)の選択や、彩度の設定もユーザーがカスタマイズできるなど、実に凝ったモデルに仕上がっている。
屋外(自然光)と夜景 |
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【355KB】 |
【383KB】 |
また、マクロ撮影にも強く、レンズ前1cmまでの撮影ができる。さらにマクロ時にストロボ撮影をしてもほとんど露出オーバーにならない。
マクロ撮影 |
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マクロ実写例 |
ストロボ未発光【339KB】 |
ストロボ発光【351KB】 |
このほか、320×240ピクセルで、最大25秒までのAVI動画記録(Open DML準拠のMotion JPEGコーデック、音声は録れない)も可能だ。
●もう一工夫欲しい操作系
ただ、操作部に関しては、一考を要する部分がある。まず、機能の割にボタンの数は少ないが、それぞれが押した回数に応じて機能が変わっていく循環タイプになっている。そのため、設定したい機能をいったん行き過ぎると、かなりの回数、そのボタンを押さなければ、必要な設定モードにたどり着けない。
また、本機には夜景、ポートレート、パノラマ、動画など、実にいろいろな撮影モードが用意されている。それらの切り替えは、メインダイアルでおこなうわけだが、そのダイアルにはロック機能がなく、持ち歩いている間に、通常モードのグリーンモードから動いてしまうことが多く閉口した。この点はぜひとも改良して欲しいポイントだ。
●迫力の8倍ズーム
光学ズームの画角 | |
ワイド端【380KB】 |
テレ端【402KB】 |
デジタルズーム実写例 | |
デジタル2倍ズーム |
デジタル2倍ズーム |
レンズは新設計の光学8倍ズームを搭載。焦点距離は6~48mm。35mmカメラ換算で40~320mm相当と、かなりの望遠撮影まで手軽に楽しめる。また、明るさもF3.2~3.5と実用十分なレベルを実現している。
さらに、2倍と4倍のデジタルズーム機能を備えており、640mmと1,280mmレンズ相当の撮影を楽しむこともできる。撮影時のモニター表示はかなり粗くなるが、撮影された画像は意外にきれい。もちろん、画質は低下するものの、モニター上で楽しむには必要十分なレベルであり、ホームページ用と考えればデジタルズームでも結構実用的だ。
また、専用のワイドとテレのコンバーターも用意されており、これらをフルに活用すれば、画角の点では、35mm一眼レフのフルシステムに匹敵する世界を、気軽に楽しめるわけだ。
●見栄えのするきれいな絵作り
画質は130万画素モデルのなかでも、なかなか優秀な部類といえる。8倍ズームながらレンズの解像度は意外に高く、十分にシャープな画像が得られる。もちろん、ワイドや望遠端では、直線の歪みが気になるケースも多少あるが、ズーム倍率を考えれば立派なレベルといえる。
色調は適度に鮮やかな見栄えのするもので、全体に好感が持てる。もともと、カシオはQV-7000SXあたりから、色調をはじめとした再現性の面では大きく進化しており、とくにグリーンや肌色の再現性には目を見張るものがある。もっとも、標準設定での撮影では、やや彩度が強調され気味だが、より自然な感じが好みの場合には、彩度を低めに設定することで解消できる。
実写例 |
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【348KB】 |
【302KB】 |
【338KB】 |
【296KB】 |
【352KB】 |
【382KB】 |
また、本機はオートホワイトバランスの設定もなかなかよく、一般的なシーンではほとんどオートのままで、見た目に近い色調が得られる点も好ましい。また、絞り優先AEでの撮影時などに気になる、主被写体の前後のボケ味も素直。8倍もの高倍率ズームとは思えないレベルだ。
室内撮影(タングステン光) |
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【362KB】 |
【370KB】 |
●本格的な撮影が気軽に楽しめるハイスペックモデル
国内発表はまだ未定という「QV-8000SX」。このところの新製品は、200万画素系が主流なだけに、130万画素という点だけを見るとインパクトはやや弱い。
しかし、実際に使ってみると、光学8倍ズームの魅力は圧巻。機能的にもフルスペックで、処理も高速で軽快。さらに液晶も見やすいなど、完成度は十分に高い。デジタルカメラで、35mm一眼レフ的な撮影テクニックやレンズ効果を駆使した、本格的な撮影を楽しめるのは大きな魅力だ。
残念ながら、「QV-7000」譲りのデザインだけは、個人的にあまり好ましいとは思えず、質感も今ひとつ。このあたりはややバランスを欠く部分はあるが、画素数にこだわらず、モニター上での利用やA5判程度までのプリントで楽しむ範囲であれば、ユーザーにとっては、かなり楽しめるモデルといえる。
やや異色のモデルだが、デジタルカメラならではの楽しさという点では、いかにもカシオらしいアプローチのモデルともいえる。
国内発表の時期や価格が大いに気になるところだが、そう遠くない時期に、手頃な価格で登場することを期待したい。それと同時に、本機をベースとしたより高画素で、スタイリッシュな新世代QVの姿もぜひ見てみたいところだ。
□米CASIOのホームページ(英文)
http://www.casio.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.casio.com/corporate/pressdetail.cfm?ID=124
■注意■
('99年8月9日)
[Reported by 山田久美夫]