ヘビー級ノートのわくわく感
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ソニー VAIOノートXRシリーズ オープンプライス。インタークーラーフラップ、ジョグダイヤル、フラッシュサーフェスデザインなど、数々のギミックが興味をそそる。サイズはデスクトップ置き換え用と言ってよいA4サイズで、重量も約2.7kg(バッテリ×1、ウエイトセーバー×1装着時)。LANが標準ではないのが残念だが、ソニー的にはi.LINK端子でつないでね、ということなのだろう、たぶん |
大雑把かつ抽象的に言うと、これはかなり挑戦的なハイエンドノートシリーズである。あ、“ハイエンド”と言ったのは、メーカーの最上位機種という意味よりもむしろ、プロセッサパワーとストレージ容量が十分あると同時に機能的に非常に充実しているという“ゴージャスなマシン”ってこと。ある種、羨望の眼差しを受けるに相応した内容になっているXRシリーズなのであった。
そう言えばこのシリーズ、ウェブページでの紹介方法もちょっと変わっていた。小出しにしていたと言えばそうなのだが、徐々にその全貌が明らかにされていく感じで、なんかちょっとワクワクする感じだった。まあ現在ではココでその全貌を見まくれるようになったが、最初は何事なのだろうという感じで誰もが注目していたようだ。
で、このマシンを触った結論を言うと、わりと久々に“自慢したくなる類のマシンが出た”ということ。XRシリーズには、他のノートマシンにはちょっとないギミックがたくさんあり、また、便利で強力な機構もあり、また、何より前述のパワーがある。以前俺は、PCG-715という、(当時としては)ハイパワーハイスペックなVAIOノートを使っていたが、このXRシリーズはハイパワーのノートVAIOの集大成という感じがした。どんな用途もドンと来いという、ユーザーを選ばないスペック。それから、いろいろできるしこんな機構も付いてて愉快だヨという、どんなユーザーでも喜んじゃう感じのハードウェア的な魅力。思わずカタログを熟読してしまう、いろんな方面のおもしろみがたくさんあるマシンだ。
ジョグダイヤルでは、音量の調節やウインドウの最小化をはじめ、頻度の高い操作を行なうことができる。実際使ってみると、予想以上に使い勝手が良い感じだ |
例えば、使い始めた瞬間「おっ」と思うインタークーラーフラップ。コレは、基本的には排熱用の機構なのだが、同時にマシン自体をユーザー側に傾けるための足としての役割もある。インタークーラーフラップは、液晶ヒンジの下側にあり、液晶パネルを開くと同時に自動的にせり上がる(せり下がる!?)ようになっている。ノートパソコンユーザーの多くは、マシンを使う時、キーボード等が打ちやすいように本体底面奥にある足を立てるが、XRシリーズではこれを見越して、自動的にこの“足”が立ち上がるしくみになっている。そして、立ち上がった状態だと、本体の熱を逃がす排気口の役割も持つようになるわけだ。
またこのインタークーラーフラップ、閉じた状態だと、本体背面のコネクタ類を完全にカバーして保護する。持ち運び時には、足を出す必要も排熱する必要もないから、インタークーラーフラップを閉じる(コネクタ類が装着されたまま閉じると断線などの原因となりかねなどの理由で、閉じるのは手動)。インタークーラーフラップを閉じると、本体がスッキリコンパクトになると同時にマシンのコネクタ類がカバーされる。単なるサイバーでスタイリッシュな“排熱部兼足”かと思っていたら、閉じた時まで役立つという意外さに驚いてしまった。
それから、液晶部分にはガラス板が張ってある。これはフラッシュサーフェスデザインというコトらしいが、そーゆー概念的なコトをイマイチ理解しない俺にとっては、単なる液晶保護ガラスにしか見えない。が、これはかなりイケてる感じの保護ガラスだ。何しろ、いつでも液晶面をツルツルピカピカにしておけるし、何かの拍子に液晶表面を傷つけてしまうこともない。見た目もスッキリとキレイであり、同時にXGAというサイズの“壊したらとても高くつく部品”をすんげえバッチリと保護している。
あと、ソニーお得意のジョグダイヤルも便利&愉快。ちょうどEnterキーの横に、ソニーのケータイには必ず付いてる回転させて選んで押せるというタイプのジョグダイヤルが付いている。これを使うと、ポインティングデバイスやキーボードを使わずに特定のアプリを立ち上げられたりして、非常に便利だ。Windowsキーを押してスタートメニューを開いて……という手順でアプリを開いたり、デスクトップ上のショートカットをポインティングデバイスで開いたりするより、ずっとクイックにアプリを使い始められる。カタログやウェブページ上だと、このジョグダイヤルは何となく、ユニークだけど結局使わなくなるギミックにも見えるが、実際使ってみてことのほかスムーズで便利なのでちょっと驚いた。
インタークーラーフラップ、フラッシュサーフェスデザイン、ジョグダイヤル。この3つのギミックに共通しているのは、もちろん消費者に対するヒキの強さもあるのだが、積極的にマシンの機構的機能を高めていこうとする発想だ。ノートパソコンはこういうモンだよという、得体は知れないけど妙にフテブテしく居座る既成概念を気持ちよく蹴っ飛ばし、旧態依然とした機構を見事に洗練した。そういう積極性が非常にVAIOらしいし、ソニーの強さなのだと思う。
XRシリーズに標準で付属している、周辺アクセサリなどの収納バッグ。ユーザー登録するとアメニティグッズを送ってきたり、こういうところがソニーはほんとうにうまい |
ヘビー級ノートに対してユーザーが期待する点にもちゃんと応えている感じだ。例えばマルチパーパスベイ。本体右側のベイ部分には、付属のCD-RドライブやFDDなどを簡単に換装できるほか、オプションのDVD-ROMドライブや10GBのHDD、バッテリーパックなども挿せる。CD-Rドライブが標準装備だというだけでもウッと思ってしまうのに、DVD-ROMとかバッテリーとかも入るってのはすげえ魅力である。まあ、CD-Rじゃなくて最初からDVD-ROMドライブにしてくれって声も多少聞こえてきそうだが、こういう拡張性の高さと実在するオプション品はやはり魅力である。
拡張性と言えば、ヘビー級VAIOノートにはいつも、かなり強まったポートリプリケータのようなモノが用意されていた。XRシリーズにもやはり用意されており、それはパワーアップステーション(PCGA-PSX1)というシロモノ。コレは本体背面に接続するポートリプリケータだ。コレを使うと、XRシリーズに、音声入力、音声出力、外部ディスプレイ出力、ビデオ出力、Sビデオ出力、i.LINK端子(S400)、USBポート、FDDコネクタ、電源コネクタ、シリアルポート、パラレルポート、光デジタル音声出力、コントロールA1端子、PS/2ポート、PCカードスロットが加わる。XRシリーズをフル装備母艦のようにして使いたい向きには非常に有り難いアイテムなのだが、なんか俺が勝手に深読みすると、コレにネットワーク系のポートがついた新たなパワーアップステーションが登場するような気がしてならないのだが、もしかしたらパワーアップステーションのPCカードスロットは「ネットワークカード挿してネ」という意味なのだろうか。
ただ、俺としては、どうせここまでハイスペックでハイエンドなら、XGAを上回る表示能力の液晶を搭載したモデルも出して欲しかったと思う。仕事にも遊びにも十分使えるゼ~で、しかも液晶はすげえ広大だゼ~みたいな、ありったけのゴージャス感があれば、無理してでも買いたい気分なのであった。
ともあれ、ここらで一発ハイエンドなノートを買おうかな~と思っているエンジョイ系のコンピュータ野郎の人は、ちょっと吟味しまくっていただきたい内容のXRシリーズなのであった。
□VAIOノートXRシリーズ製品情報(ソニー)
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/PCOM/PCG-XR/
□週刊スタパトロニクス バックナンバー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/backno/wstapa.htm
[Text by スタパ齋藤]