外出先で気軽にメールをやり取りするには!?最近どうも年のせいか? できるだけ用途を見極め簡単に済ませよう……と、何をするにしても横着になってきた。仕事の一環として筆者的に重要な、外出先でのメールチェックがその良い例であろう。少し前まで平気でThinkPad600を持ち歩いていたにも関わらず、モバイル環境は急速に小型軽量化が進む一方だ。そこで、今回は外出先でインターネット・メールを主に使うとき、どれが最適か!? を横並びに評価すると怒られそうなマシンまでわざわざ並べ一斉チェックを行った。 |
色々候補を考えた結果、今回は以下のような構成となった。ジャンル的に不足しているのは、IBM WorkPad、SHARPザウルス系と思われるが、これ以上一斉チェックすると、ちょっと大変なので今回は省略。なお、筆者の所有物はTOSHIBA DynaBook SS3010、HP Jornada 680、NTT DoCoMo N501iの三機種。PC Watch編集部持ちはNTT DoCoMo POCKETBOARD PLUS。メーカーよりお借りしたのが、FUJITSU INTERTOP CX300とHITACHI PERSONA HPW-600JCである。私物の場合思い入れもあり、偏った評価になる可能性もあるので、あえてここで公開することにした。多少バイアスをかけながら読んで欲しい。
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※ここに並んでいる順番は、下から順に筆者が評価期間中、実際持ち歩いた時間の長いマシンである。当たり前であるが、携帯電話と一体化しているiモード端末は他の5機種と比較して桁違いに長時間持ち歩いた。
サイズ比較(上から) N501i POCKETBOARD PLUS Jornada 680 PERSONA HPW-600JC INTERTOP CX300 DynaBook SS3010 |
外出用メールマシンを決めるにあたって、1番の問題は「潰しが利く汎用OS搭載マシン」を選ぶか? 「専用機」にするか? の選択だろう。本来「DynaBookが更に小型軽量化し、バッテリー駆動時間も数倍に……」と、いいたいところであるが、それは今の技術では絶対不可能。特にバッテリー面については絶望的だ。となると、Windowsと親和性が高いWindows CEマシンに矛先が向くのは自然な成り行き。そこで試したのは“速度優先”、“解像度優先”、“サイズ優先”の3パターンとなった。 まず環境設定を開始し、はじめに気になったのは、PCと接続する“Windows CEサービス”。Windows 95/98/NTとWindows CEマシンの間でファイル転送はもちろん、共有フォルダやOutlookのデータをレコード単位で同期する便利な機能だ。標準設定のままシリアル経由で接続すると、転送速度は19,200bps。ちょっとしたファイルを転送するのも時間がかかり、設定を触って115,200bpsへ変更する必要があった。この件は、全てのマシンが同じだったので、Microsoft側の設定そのままだと思われるが、今時これは考え物だ。 次にPocket Outlookでメールを読んだところ、思いっきり遅い。どうやらWindows CEサービスとシンクロナイズする部分がオフ・ラインにも関わらず何かやっているらしく、そこでタイムロスが発生している。更に、もともとWindows CEはVGA未満の解像度に合わせて設計されている関係上、画面を分割しながらメッセージを表示するプレビューウィンドにPocket Outlookは未対応。その名残が最大800×600ドットにまで対応したH/PC Pro V3.0でも受け継がれているのには正直驚いた。なぜINTERTOP CX300や今回試していないNECのWindows CEマシン(Mobile Gear)にオリジナルのメールソフトが付いているのか!? やっと理解できた。これではPocket Outlookは、はっきりいって使い物にならない。Jornada 680のようにPocket Outlookしか搭載していないマシンでは、フリーウェアのQMAIL、Village Centerから出ているPocket WZ MAILなどを使えばかなり効率アップする。また、HotmailのようにHTTPプロトコルベースの無料メールを利用するのも1つの方法だ。 メールの設定も終了し、Pocket Internet Explorerでホームページを見ているとき、256色表示になっていることに気が付いた。「確かH/PC Pro V3.0ではHiColorに対応し、ハードウェア的にもOKなハズなのに256色……。どうして!?」と、Windows CE FAN *1 で調べた結果、レジストリの HKEY_CURRENT_USER\Software\Apps\PocketIE\Use16bppDIBs=0 を“1”にすればOKという情報を得て、実験したところ全てのマシンで有効であった。もちろんレジストリを触るにはレジストリエディタが必要であり、筆者はMicrosoft純正のPowerToys 3.0を使用。HiColorにするとメモリをより多く使用するので標準設定は256色になっていると思われるが、その変更をPocket Internet Explorerからできないとはなんとも情けない話である。更にPIAFS64Kで通信しているにも関わらず画面表示が妙に遅い。これはマシンスペックというより、Pocket Internet Explorer本体レンダリングエンジンの問題であろう。Windows版Internet ExplorerだけでなくWindows CE版も、もっと気合を入れて開発していただきたいものだ。 以上のように少し触っただけでも、Windows CEサービス、Pocket Outlook、Pocket Internet Explorerといった、一番使われるであろう3大アプリケーション、しかもMicrosoft純正がこんなお寒い状態では、パソコンに詳しい人ならともかく、初心者から見て「値段の割に遅い! 使い難い!」と判断するには十分な内容だ。それを自ら証明するかのように、コントロールパネル→システムを見ると、Pocket OutlookとPocket Internet ExplorerはROMではなく、メインRAMのファイルシステム上にへ置いてある。何時でも新しいバージョンへ切り替えできる状態をはじめから想定しているのだろうか。 “Windows CEマシン三つ巴の戦い”は、予想通り、“速度”、“IME”など色々な意味において単体だとPERSONA HPW-600JCが一番使い易かった。ただし、PCシンクロステーションが無く、せっかくUSBがあるにも関わらず、PCへの接続はシリアルもしくはネットワーク経由。Windows CEサービス自体がUSB未対応なので仕方がないかもしれないが、今後の検討課題だろう。付属アプリケーションを含めトータルバランスのいいのはINTERTOP CX300だ。できの悪いPocket Outlookを排除するかのように作られたMOBILESUITEもGood。惜しむべきは速度面。PERSONA HPW-600JC並の速度になればかなり印象は違ってくると思われる。携帯性ではもちろんHP Jornada 680の圧勝。PIM中心であれば特にストレスも感じない。流石にこの解像度で一般的なWebサイトを見るのはちょっと辛いが、Hotmailだけなら十分実用範囲である。いずれにしても「自分にとって何が一番重要か!?」をはっきり見極め選択するといいだろう。 *1 “Windows CE FAN”は、Windows CEに興味のある人必見のサイトだ。裏技である文字出力の高速化など、面白い話題で一杯。是非アクセスして欲しい。 さて次は専用機の番だ。流石にどちらもパソコンを知らない人でも簡単に扱えるようかなり工夫されている。八方美人ではない専用機の強みだろう。特にPOCKET BOARD PLUSは侮れない存在。キーボードの左上に[ワンタッチメール]キーを備え、携帯電話へケーブルを接続、それを一発押せば、大量にメールが無い限り約1分で自動ダイアル→認証/接続→メール送受信→回線切断と、一連の作業が終了する。もちろんWindows CEマシンでも1つのキーにファンクションを割り当てる機能があるので、同様の操作は可能であるが、お気楽度はPOCKET BOARD PLUSの方が圧倒的に上。下手に「接続したついでに!!」と、ブラウザを動かさない分、余計な通信費もかからないという話もある。 |
PCシンクロステーションと充電器 手前がINTERTOP CX300用 奥左がJornada 680用 奥右はN501i用充電器 |
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POCKETBOARD PLUS起動直後の画面 |
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N501iでiモードメニューへ入ったところ |
各マシンの素性がわかった上で、次に気になるのはランニングコスト。つまり通話料金を含めたインターネット接続料だ。いくら便利でも本気で使うと直ぐに購入した端末の金額を超えてしまうのでは洒落にならない。そこで簡単にまとめて見ると以下のような表になる。
PIAFS64K デジタル |
PDC 9600bps アナログ |
iモードパケット通信(9600bps) デジタル |
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1分間に転送可能なデータ量 | 438KB | 72KB | 72KB |
1分間の通話料金 | 15円 166使用時・全国均一 |
約31.5円 *1 平日昼間・同一都県内・一般電話 |
168.75円(但し、連続転送時) 全国均一 |
PIAFS64K基準の1byte単価比 | ×1 | ×約12.6 | ×67.5 |
短いメールの送受信 | 15円(1分) 166使用時・全国均一 |
10円(19秒) *1*2 平日昼間・同一都県内・一般電話 |
1.4円(500bytes/4パケット) *3 全国均一 |
*1 但し、この数字は通話料金だけであり、プロバイダ接続料金は含まれていない。
*2 モデム同士のネゴシエーション、ID/PWの認証時間も含めると20~30円かかる可能性大。
*3 但し、実際はメールにヘッダーが付くため、数パケット増える可能性がある。
まず“PIAFS64K基準の1byte単価比”に注目して頂きたい。連続転送を仮定した場合、iモードのパケット料金は実に1:67.5という驚くべき比率となる。もちろん、iモードはパケット通信なので、接続時間は関係なく、データ転送量に応じて1パケット(128bytes)/0.3円。この料金設定が、高いか安いかは読者の判断にお任せする。従ってこの表は不公平だと批判を浴びそうであるが、パケット通信の基本は、
1)区切り符号(例えば[CR])一文字で1パケット使う。
2)1パケットに満たない場合、ある一定の時間を過ぎると自動的に1パケット扱いにする。
この2点。確かにパケット通信は見ている時間が長いWebに一見最適と思われがちであるものの、iモード用に作られたコンテンツを行き来すれば一目瞭然。1パケット毎に割ると128bytesに満たないデータや、番号の選択/[OK]/[Cancel]など区切り符号の頻繁に発生するケースが多く、想像以上にパケットの無駄遣いが行なわれている。面白くて長時間触っていた関係もあるが、筆者はN501iを購入してたった2日間で2,000円以上を使ってしまった。これはPAIFS64Kなら約2時間に相当する金額。日頃インターネットしている感覚ではそんなに使っているとは思えない。
取り消し線の部分は筆者の間違いです。iモードの場合、通常のパケット通信のパターンとは違い、1ヶ月間の総データ転送量を128bytesで割った値に0.3円を掛けたものが通信料金となります。詳細はここを参考にして下さい。筆者の中途半端な知識により、多方面の方々にご迷惑をおかけしました。ここにお詫びして訂正します。
iモードという発想自体は素晴らしいものであるが、本気でiモード用のコンテンツを広く一般に普及させたいのであれば、「連続転送時でPDC 9,600bps+プロバイダ接続料金と同等程度に設定」、もしくは「上りのパケット料金を安くする」など、何か対策をしないと、ユーザーは予想もしなかった金額の請求書を受け取り、途方に暮れることになるだろう。「iモードって高価なおもちゃですよね! [(c)法林岳之]」といった厳しい意見さえも出るほどだ。
逆に直接端末へ転送されるiモードメールは、「あのキーボードから文字入力するのは面倒」 *4 、「1メッセージ最大500bytes」の関係で1メール約1円とかなり安い。実際、購入3日目以降はiモードメールしか使っていないので、一日のパケット使用料は100円前後に落ち着いている。プライバシーの関係から問題になっていた“電話番号@docomo.ne.jp”のメールアドレスも、7月12日(月)4:00amから“好きな名前@docomo.ne.jp”が使えるようになり、一件落着。少なくともメールだけを使うのであれば料金的に非常にお勧めであることは間違いない。
*4 面倒なキー入力に関しては、本体内蔵の定型文を駆使したり、署名に「今iモードからなので、詳細は後ほどご連絡します。」といったメッセージを埋め込めむことによってある程度回避できる。更にその範囲を超える内容に関しては、メールに入っている電話番号へカーソル持っていくと自動ダイアルする機能で電話すれば済む話だ。
●結論
さて、約1週間、とっかえひっかえ各機種を使い、この原稿を書いている今日現在、最終的にiモード端末のN501iに落ち着いている。筆者の場合、原稿や画像ファイルのやり取り以外は、届いたメールに対して“Yes”or“No”の意思決定を即座にしなければならないケースか、そのまま読み流す内容が最も多く、タイムラグ無くダイレクトにメールが届くiモード端末は何よりも便利。しかも携帯電話を持って出ないことなど絶対になく、確実性という意味でもほぼ100%だ。残念ながら、先に書いた問題点が残っている関係で希望する環境には達していないが、それでもほとんどのケースはこれ1つで何とかなる。もちろん人によってメールの内容や用途が違うので、Windows CEマシンやPOCKET BOARD PLUSの存在を否定するつもりはなく、万人向けの答えでないのは十分承知の上での結論だ。
まだまだ不満点もあるiモード端末であるが、きっと*502iになる頃にはかなりの部分が解決されているだろう。料金形態も含め、今後の進化に期待したい。