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ビデオゲームの世界でも、カーレースを題材にしたものは黎明期からコンスタントな人気を誇って存在し続けている。今ほど3D技術が進歩していなかった時代ですら、擬似的に3D空間を作り出すことによって、車を運転する気分を味わうことのできたゲームは数知れない。そして、3Dグラフィックアクセラレータの普及など、3D技術の発展によって、その表現力はますます深みを増したといえるのではないだろうか。今回紹介する「オフィシャル フォーミュラ 1 レーシング」も、そんな円熟期に入ったレースゲームを代表する1本ということができるだろう。
シミュレーションとゲーム性がうまくミックス
この種のソフトには、概して2つの方向性がある。1つは徹底してリアリティを追求した「シミュレータータイプ」。ウィングの角度やギア比、エンジン特性など、細かな点までプレーヤーが調整を加えることができるタイプだ。この種のソフトは車好きには高い評価を得ることができるが、初心者や気軽にゲームを楽しみたいプレーヤーには敷居が高く、敬遠されてしまうという弱点を持っている。もう1つは、こうしたシミュレーター性を廃して走る楽しさを追求した「ゲームタイプ」。走行時の挙動などは実際の車とは異なる部分もあるが、ゲームとしての評価は高いものが多い。ただし、シミュレータータイプとは逆に車にこだわりを持つプレーヤーからは不満の声が聞かれることも確かだ。
さて、それではこの「オフィシャル フォーミュラ 1 レーシング」はどちらに分類されるのだろう。結論からいえば、このソフトは「シミュレーター性も持つゲームタイプ」に位置づけるのが最も適当だろうと思う。なんとも玉虫色な表現ではあるけれど、とりあえずその理由に言及してみることにしよう。
まず、ゲームのセッティングを見ると、レベルが3段階に設定できるようになっている。レベルは最高速度の差に影響しているのだけれど、ブレーキングポイントなどにも大きく関わってくるので、初心者は速度の遅い「NOVICE」からプレイするといいだろう。また、ガソリンやタイヤの消費量を変更したり、スピンやマシンクラッシュの確率を下げることで、よりゲームとしての性格を高くすることもできる。さらに、アシスト機能としてAT車設定の「自動ギアチェンジ」、カーブ前に自動的に減速する「ブレーキアシスト」、カーブでステアリングを補助する「ステアリングアシスト」、衝突時のマシンの破損を無効にする「ダメージフリー」などの機能をオンにすれば、さらにゲーム方向にシフトすることになる。一方、これらの機能をオフにすればシミュレーター性が高くなり、加えてウィング角やサスペンション、ギア比、タイヤの種類などを自由に変更することもできるので、シミュレーター性を高めることも可能だ。これらの項目を自由に変更していくことで、プレーヤー好みのゲームスタイルを確立することができ、あらゆるニーズに応えることができるように考慮されているといえるだろう。
こうしたきめ細かな設定変更は、実際のレース中にも様々な点で行なうことができる。その中で最も顕著なのが視点の変更で、その総数は20以上にも及ぶ。ドライバーに主点を置いた「コクピットビュー」だけでも4種類。また、車外に視点を置くエクスターナルビューではテンキーを使用して視点を変更することもできるので、実際には無限の視点変更が可能ということになる。中には実際のレースには向かない視点もないわけではないが、後述のリプレイモードと組み合わせると楽しいだろう。また、他車のアクシデントなどが表示されるポップアップウィンドウや後方の確認ができるサイドミラー、コースマップのオン/オフなどもプレーヤーが任意に変更できるので、プレイに使用するマシン環境や好みなどで設定するようにするといい。
鈴鹿サーキットもリアルに再現
レースには基本的に、これらのコースを自由に選択して行なう「SINGLE RACE」と、そこからいくつかの手順を省いてすぐにレースを楽しめるようにした「QUICK RACE」、それに、'98年度のデータに従って16レースを転戦し、ドライバーズポイントを競う「CHAMPION SHIP」の3つがある。「QUICK RACE」以外では、最初にヘリコプターによるコース紹介が行なわれ、続いて自由にコースを走る練習走行、スタート時のポジションを決めるクオリファイ(予選)、レース前のウォームアップという手順を踏み、いよいよ本戦に臨む。レースは3周から、最大72周まで選択することができるが、72周のレースは心身共にヘトヘトになるので、よほどのことがない限りプレイしない方がいいかもしれない。ちなみに72周するのには、短いコースでも2時間近くかかる。途中、ポーズをかけられるのが救いかもしれない。
レースが終わると、結果発表に加えて今のレースのリプレイを観戦することができる。ここでは視点を自由に変更して、自分の華麗な(またはスピンしまくりのはずかしい)プレイを堪能することができるほか、任意のポイントからレースに再度参加することもできるので、途中で致命的なミスをしてしまった場合などは、改めてレースに挑戦するのもいいかもしれない。また、このリプレイをシナリオとしてセーブしておくことができ、これを使用することで第4のプレイモード「シナリオモード」をプレイすることができる。シナリオモードでは、セーブしたリプレイの通りに他車が行動するので、基本的には常に同じ展開となる(ただし、他車を巻き込んでクラッシュした場合には、この限りではない)。練習走行では自分以外の車が存在しないので楽しくないという方は、ぜひこのシナリオモードをプレイしてみることをおすすめしたい。また、クラッシュの情報も保存されるので、どの車がどこでクラッシュするかわかっていれば、その後を追っていくのもいいだろう。ただし、自分がクラッシュに巻き込まれないように注意する必要はあるかもしれないけれど。
アナログデバイスでさらにゲームを面白く
最後になるけれど、このゲームを快適にプレイしたいのであれば、ぜひアナログコントローラを用意してほしい。キーボードやデジタルのジョイパッドでも操作は可能だし、レースに勝つこともできるけれど、複雑なコーナーの続くテクニカルコースを存分に楽しむには、やはりアナログデバイスの方が向いている。高価なハンドルコントローラでなくても構わない。今回のテストプレイではSEGA-I/F経由でセガサターン用のデジタル/アナログ兼用パッド「マルチコントローラ」を接続しているが、これでも十二分に楽しむことができた。最近では安価なコンシューマ用のアナログデバイスを接続できるインターフェイスも数多くリリースされてきているし、ゲームをより楽しむために、ほんの少しだけ投資を考えてみてはいかがだろう?
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