「ゲームは“映画の著作物”ではない」エニックスが敗訴

発表会内容_1 '99年5月27日 発表



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「判決は夢にも思わないものだった」と今回の結果に不満を漏らした福嶋康博エニックス代表取締役社長
 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は都内で記者会見を開き、エニックスが中古ゲームソフトを販売した「株式会社 上昇」に対して、自社ソフトの差止請求を行なった裁判に関する判決、及びこれからの方針についての発表を行なった。判決は上昇の訴えを認め、エニックスの主張を退けるものとなった。

 今回の訴訟のポイントは、ゲームが「映画の著作物」に類するか、頒布権が発生するのかといった点。東京地裁は「頒布権は劇場用映画の特殊性から認められた権利である。映画は同一の映像が同一の順番で観客に提供されるものだが、ゲームはプレーヤーにより内容や順序が決定され、毎回結末が違ったものになる。この点からもゲームは映画に類するものとは認められない」とし、エニックスの差し止め請求を退けた。

 今回の判決について、エニックスの訴訟代理人をつとめる濱野英夫弁護士は「『パックマン』や『ときめきメモリアル』の判決も“ゲーム=映画”とした判例だった。これまでの判決の流れからみても外れたもので、エニックスとしては認められない。不当な判決であり、必ず控訴する」と発言。ACCSの顧問弁護士である前田哲男氏も「これからはDVDでマルチアングル、マルチストーリーのソフトが出てくるが、これは映画ではないのか? 判決はゲームを理解していない」と非難した。

 これを受けて発言を促された、福嶋康博エニックス代表取締役社長は「夢にも思わなかった判決」と今回の決定に関して驚きを隠さなかった。また、「こういった判決が出たが、確定したわけではないので、これからも販売店とは『当社の許諾がない場合、再販をしてはならない』といった項目のある契約を交わしていく。現在、新作の発売から9カ月間は中古ソフトとしての販売は禁止、それ以降に関しては著作料として7%上乗せする契約を全国の二百数十社(7~8千店のショップ)と交わしているし、これを破ればこれまで通り訴えていく」と全面対決の姿勢をみせた。

 ただし、記者から「“ゲーム=映画”とすることは、いささか無理があるのではないか? ゲームは新しい著作物として別途立法化してはどうか」といった問いには「我々は現行法内で論議している。そうした場合映画が一番近いので、現在の主張となっている。販売店としては頒布権の効力が大きいことが不安だとする意見もある。将来、ゲームを独自の著作物として立法化される時がくるかもしれないし、ユーザー、販売店、メーカーなどみなが納得する方法であるならば、それが一番いい」といった柔軟な意見も聞かれた。

□社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)のホームページ
(5月27日現在、この情報に関する情報は掲載されていない)
http://www.accsjp.or.jp/index.html
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【'98年6月12日】家庭用ゲーム会社5社が、中古ゲーム販売業者を告訴
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980612/game.htm
【'99年3月9日】中古販売業者が全面的にゲームの頒布権を認める。ACCSが全面勝利宣言
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990309/accs.htm

('99年5月27日)

[Reported by funatsu@impress.co.jp]


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