Apple ComputerのWWDC(Worldwide Developers Conference = 世界開発者会議)も2日目。5月11日(現地時間)の午前中に行なわれた2つの基調講演から、今後のキーポイントとなる情報をいくつか紹介する。
同氏はまた、「We are in the Culture」という言葉を用いて、iMacはApple Computer自身の行なうPR以外にも、ニューヨークの著名デパートでの店頭ディスプレイに利用されたり、MTVの広告にも登場するなどさまざまなメディアに露出することで、無償で大きな効果をあげていること。こうしたメディアに興味を持ち、BusinessWeek誌で特集された「Yジェネレーション」と呼ばれる世代は、その親に対しても影響力が強く、大きな購買層の獲得につながっていることを伝えた。
一方販売チャネルについては、iMac登場以前から実施してきた販売店舗の整理統合に加えて、電子商取引やEducation(教育)市場での成果を強調。特に教育市場では昨年度の売り上げが3,000万ドルだったにもかかわらず、'99年度は第2四半期までで2億ドルを達成したとしている(注:Apple Computerの会計年度は9月で区切り。'99年3月末の時点で'99年度第2四半期の終了となっている)。
また5色一組というiMacの製品納入に反発して、米流通大手Best BuyがiMacの販売から撤退したという報道とその影響について、全米の販売拠点を図示することで説明。昨日発表されたSEARSの参入が、より良い結果を生むと期待を寄せた。
さらに全米に広がる大型パソコン販売チェーン「CompUSA」と協力し、販売成績の良い店舗と悪い店舗を抽出。Appleから応援の販売スタッフを派遣して何が良くて何が悪いか、その内容をフィードバックしていくという。また今後は「Learn & Earn Program」と呼ばれる販売員のトレーニングシステムを、日本などに提供していくことも明らかにした。
iMacは日本市場において20%のマーケットシェアを持つという | メールオーダーや、電子商取引といった販売チャネルを説明するMitch Mandich氏 |
Best Buy撤退後の販売拠点と、SEARS参入の結果。これで空白になっているところには山か砂漠しかないと、聴衆の笑いを誘った |
続いて、昨日発表されたPowerBook G3について、重量やバッテリ持続時間についてのアドバンテージを改めて紹介。Pentium搭載機との速度比較では、同じ400MHzのCPUを搭載したノートブックが存在しないとして、Pentium IIIの500MHzを搭載したCOMPAQのデスクトップ機と、Photoshopで比較を行なった。余談になるが、こうした同時スタートによる比較の時に、いつも負ける側をクリックするのがPhil氏のような気がしてならない。相手が上司であるSteve Jobs氏であっても、今回のようにPowerBook G3側を担当するのが、自分の部下であるプロダクトマネージャであってもだ。これは、彼の人柄の良さからくるものなのだろうか。
閑話休題。続いて、いよいよ最後の空白、ポータブルコンシューマ機のエリアへと話題は移っていく。ここで「はっきり言えないが、製品はこんなものをイメージしてくれ」と言ってPhil氏が取り出したのが、なんと『Macintosh Portable』。場内が爆笑するなかで、Phil氏は淡々と「アクティブマトリクス液晶を採用した」とか、「初めてポインティングデバイスを内蔵した」とか、「バッテリで長時間動作していた」など、次々に同製品の“当時の”アドバンテージを解説。言うなれば笑いのうちに誤魔化されてしまった感じだが、言外に「その時点で考えられる最高の技術を用いて、妥協をせずに作っている」と伝えたかったのではないかと推測する。
ハードウェアに関する講演を担当した二人。右がJon Rubenstein氏で、左がPhil Schiller氏 | すっかり定着したラインナップの構成図。いまだにコンシューマ向けのポータブルがはいるべきエリアは1999と書かれたまま | EPSON製のプリンタを加えて、「Collect All Ten!」と書かれたスライド。MACWORLD Expoでの「Collect All Five!」にかけたネタ |
他に、ストレージ関連の情報としては、今後標準のハードディスクとしてはATA Ultra DMA 66を、BTOでのオプションとして SCSI Ultra2 LVDを採用していくことを、明らかにした。リムーバブルメディアとしては、今後もフロッピーディスクドライブの内蔵はないことを改めて強調し、DVDメディアへの更なる注力という方向性を示した。また、日本においてはMOが主流という事情にも触れ、こうしたメディアもおろそかにせずサポートをしていくと付け加えた。
USBとFireWireについては、改めてロードマップが示された。Mac OS 8.6に含まれる内容や、まもなく提供されるフィーチャーに加え、いくつかの将来的な展望も紹介している。例えばUSBにおいては、ドライバのネットダウンロード機能や、USBデバイスからのブート、Force Feed BackとCardBusへの対応などである。
この中からドライバのネットダウンロード機能が実際にデモンストレーションされた。ドライバがインストールされていないMacintoshに対して、USB接続のZipドライブをプラグイン。ネットワークからドライバを自動的にダウンロードして(ここは、ネットワークへの接続に時間がかかりハラハラさせられたが)、即座にディスクがマウントされた時には場内から拍手も起こった。
一方、FireWireでは、FireWireデバイスからのブート、YAMAHAの提唱するmLANのサポート、DVCPRO50(通常使われているDVの2倍である50Mbpsの転送速度を持つDV)への対応などを将来的な展望として紹介した。こちらのデモは、QuickTimeムービーの再生中に、こうしたデモではお馴染みのVST製FireWire対応ハードディスクを抜き差しするという(ハブを利用して数台を一気にマウントしてはいたものの)わりと見慣れた内容に留まった。
最後はインダストリアルデザインについて触れ、最近、韓国のメーカーから発売されたトランスルーセントのPC用ケースが、よく似た構成の5色であることをカタログから紹介。iMacをはじめとしたApple Computerによるデザインが、業界に大きな影響を与え、これからもリーダーシップをとっていくことを強調し講演は締めくくられた。
プリフェッチング、ストリーミング、3倍のバンド幅、より高速なアクセスなどの特徴をもつPowerPC G4 | G4に搭載されるAltiVecは、Vector Processingを最大の特徴として、音声や映像などの処理を高速かつ大量に行なう | G4とG3のパフォーマンス比較。項目によっては8倍もの性能差が存在する |
G4とPentium IIIのチップデザインの比較 | Photoshopや、天体シミュレーションなどの学術計算ソフトを使ったG4とG3での速度比較。ここでもPhil氏は負ける側(つまりG3)をクリック |
USBのロードマップ。Mac OS 8.6にはUSB1.2が含まれている | ネットワーク経由でUSB対応のドライバを取得。ダウンロード終了直後にZipディスクがマウントされた | FireWireのロードマップ。FireWire2.1はまもなく提供される |
('99年5月12日)
[Reported by 矢作晃]