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Intel 810登場、Intel版MediaGXはいつ?



●100MHzで登場したIntel 810

 今年に入ってから、Intelは1ヶ月ごとに戦略を作っては壊している。ロードマップもそのつど変更されている。業界関係から入ってくるIntelの製品戦略は、あきれるほどの勢いで変化しており、1ヶ月前の情報はもうまったく役に立たない状態だ。

 たとえば、Intelは今週、新しいグラフィックス統合型チップセット「Intel 810(コードネームWhitney)」を発表したが、そのスペックは発表前に流れていた情報と異なっている。Intel 810は当初はフロントサイドバス(FSB)66MHz、システムメモリ66MHz、ディスプレイキャッシュメモリ100MHzというスペックで登場すると言われていた。そして、Intel 810e(以前Intel 815と呼ばれていた)が、100/133MHz FSB、システムメモリ100MHz、ディスプレイキャッシュ100/133MHzで登場するはずだった。切り分けとしてはIntel 810がバリューPCでIntel 810eがメインストリームPCだ。Intel 810eはIntel 810より遅れて登場と言われていた。

 ところが、まず、Intel 810が事前の情報と違うスペックで登場した。システムメモリは66MHzから100MHzにアップ、FSBは66と100MHz対応になった。データシートによると、FSBが66MHzの時でもPC-100を搭載できる。Celeronが66MHzのこの時点でFSBを100MHzにしたということは、100MHz FSB版のCeleronが出る時も近いのかもしれない。


●3個チップ構成でローコスト版とパフォーマンス版がある

 ここで、Intel 810についてもう少し詳しく説明しよう。810はグラフィックス統合型のチップセットで、「Graphics Memory Controller Hub (GMCH)」と「I/O Controller Hub (ICH)」「Firmware Hub (FWH)」の3つのチップから構成される。

 GMCHというのは、CPUバス(フロントサイドバス)とメモリインターフェイス、グラフィックスコアを統合したチップ。従来のノースブリッジとほぼ同じ位置づけだ。ディスプレイキャッシュを接続できるハイパフォーマンス版の「82810-DC100」と、ディスプレイキャッシュを接続できない廉価版の「82810」の2タイプがある。ちなみに、グラフィックスコアを含まないIntel 820の場合はGMCHではなく「Memory Controller Hub (MCH)」と呼ばれると言われている。

 ICHはIDEやUSB、AC '97やPCIといったI/O関係をまとめたチップだ。「82801AA (ICH)」と「82801AB (ICH0)」の2タイプがある。ICHは上位版で、PCIバス6、ATA/66、Alert On LANをサポートする。ICH0はPCIバス4、ATA/33だ。GMCHとICHの間は266MB/secの専用バスで結ばれており、サウスブリッジチップがPCIバスに接続されていた従来とは構成が異なっている。考え方としては、これまでのチップセットはPCIバスを挟んで上と下にブリッジチップがあるという構成だったが、これからは2つのハブチップを高速なリンクで結ぶハブ型のアーキテクチャになったということだ。

 3つ目のチップFWHは4Mビットまたは8Mビットのフラッシュメモリ。システムBIOSやビデオBIOSを格納する。ただし、4~8Mビットという容量はBIOS用としては大きすぎるため、Intelは他の用途の提案も考えているのかもしれない。また、IntelはこのFWHにハードウェアの乱数生成器「Random Number Generator (RNG)」も搭載している。セキュリティなどに利用できる8ビットの乱数を生成する。乱数はサーマルノイズを使って生成するため、ソフトウェアアルゴリズムによる乱数生成よりセキュリティが高いという。


●Intel 752を内蔵

 GMCHに内蔵されているグラフィックスコアは、「Portola(ポルトラ)」のコードネームで呼ばれていた新グラフィックスチップ「Intel 752」だ。グラフィックスコアとメモリコントローラの間は、AGP 2x相当の帯域で結ばれているという。利点は、AGPの問題点だったレイテンシが、メモリコントローラとグラフィックスコアの一体化でかなり解消されたことだ。

 グラフィックスコアは、システムメモリの一部をグラフィックス用領域として使うUMA構成を取る。ただし、グラフィックス性能をアップするために、82810-DC100ではディスプレイキャッシュとして4MB(×16の16MビットSDRAMチップ2個)を外付けするための32ビットのメモリインターフェイスを持っている。インテル日本法人の説明によると、Intel 810のグラフィックスコアとメモリインターフェイスは、独立したクロックで駆動できるという。つまり、原理的にはディスプレイキャッシュだけを133MHzにアップすることもできることになる。

 このディスプレイキャッシュだが、インテルの以前の説明では、Intel 810では、システムメモリが66MHz SDRAMでレイテンシが大きいため、より高速なPC-100 SDRAMのキャッシュを設けたと説明していた。しかし、システムメモリもPC-100になってしまったので、現在のスペックでは、この説明は当てはまらなくなっている。しかし、32ビット分、つまり400MB/secだけメモリ帯域が広がる効果はある。3Dグラフィックスはメモリ帯域を食うので、メモリ帯域の拡張は意味があるだろう。

 このほか、グラフィックスコアで目立つのは、MPEG2のデコードを支援する動き補償機能(Motion Compensation)を内蔵したことだ。これはIntel 740で欠けていた重要な要素だ。インテルの説明によると、Intel 810のグラフィックスコアでは、マクロブロックを大きくして処理を高速化する手法により、フレームレートを落とさずにソフトウェアデコードができる機能を入れたという。


●Intel版MediaGXも?

 Intelは、370ソケット版CeleronとIntel 810で、サブ1,000ドルPC戦争への準備をようやく整えた。AMDにとっては、マスク変更による歩留まり悪化に苦しんだあとに、今度はより強力になったIntelと対峙する羽目になったわけだ。しかし、IntelのローコストPC向けオプティマイズは、これで終わるわけではない。

 では、今後の展開はどうなるのだろう。Intelは、Intel 752の後継のグラフィックスチップとして「Intel 754」というチップを今年後半発表を目指して開発していると言われる。Intelのメインストリーム向けグラフィックスチップが統合化を前提とした戦略展開をしている以上、Intel 754を統合したチップセットも登場すると見ていいだろう。

 しかし、究極のコスト削減とパフォーマンスの両立を目指すためには、グラフィックスコアとチップセットの統合だけではおそらく足りなくなる。何しろ、今の米国のローエンドのPCは300ドル台にまで落ちているのだから。Intelがサブ600ドル市場を真剣に考えているとすれば、CPUとグラフィックスコア、メモリインターフェイスの統合も当然視野に入れているはずだ。もしかすると、意外と早く、Intel版MediaGXが登場するかもしれない。


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('99年4月28日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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