元麻布春男の週刊PCホットライン

同時進行連載:リビングルームPCが欲しい・その12
ADAMS/bitcast両対応のカード「GV-BCTV2/PCI」



■ ロジクールCordless Desktop不調についての読者からの情報

 前回取り上げたロジクールのCordless Desktop(のマウス部)の不調については、久しぶりに読者から様々な意見が寄せられた。マウスが動かないのはソフトウェアのコンフリクトであって、ウチでは快調に使えている、不調なのは受信機のそばにNTSCのTVがあるからではないか、いやマウスのボールが軽すぎるのが問題ではないか、そばにモデムがあるとそのノイズで不調になることがあるようだ、など、実に多様な情報である。多様過ぎて、原因が1つに絞りきれないが、どうやら外部のノイズの影響を受けやすいことだけは間違いないようだ。また、ボタンのクリックまで落とすことがあることから考えて、問題はボールの重さだけではないことは事実なのだが、実は筆者もマウスのボールを直接手で回すとカーソルが動くという経験をしたことがあるのも事実である。まぁ、少なくとも、不調に悩んでいるのは筆者だけではないことはハッキリした。筆者の場合、設置場所を変えるのは難しいし、NTSCディスプレイを止めるわけにもいかない。騙し騙し使っていくしかないのだろう(どうしても我慢できなくなったらケーブル式に戻すしかなかろう)。



■ 地上波を利用して送られてくるデータ放送受信用
ADAMS/bitcast両対応のカード「GV-BCTV2/PCI」

アイ・オー・データ機器
GV-BCTV2/PCI

標準価格34,800円。ADAMS、bitcastの両方に対応
 さて、今回取り上げるのは地上波TV放送のVBI(Vertical Blanking Interval:帰線消去期間)を利用して送られてくるデータ放送を受信するためのカードだ。しばらく前に取り上げたデジタルCSデータ放送(SKYPerfecPC!)の地上波版、とも言えるが、TV放送同様、地上波を用いたサービスの方が歴史が古い。単に、筆者の購入順が逆だっただけのことである。

 筆者が購入したカードは、アイ・オー・データ機器のGV-BCTV2/PCIだ。テレビ朝日系列局によるサービスであるADAMSと、インフォシティが開発しTBSとフジテレビがサービスを提供するbitcastの両方に対応したカードである。双方のサービスには、様々な違いがあるものの、HTML形式のデータを地上波の隙間に詰めこんで送る、という点では同じだ。以前紹介したCSデジタル放送に比べ、データ転送速度が低いデメリットを補いながら、いかにして魅力的なコンテンツを作るかが腕の見せ所、というところだろうか。データ転送レートの高いSKYPerfecPC!なら、最悪多くのユーザーが欲するであろう無料アプリケーション/パッチ(IEの新版やService Pack類など)の配布という「逃げ道」が残されているが、地上波利用では相当の時間がかかるため、有用性に疑問が残る(無償だから何時間かかっても良いという人もいるかもしれないが)。



■ カードの設定などではまったく問題なし。しかしコンテンツが……

 実際の利用だが、カードのインストール、設定、ソフトウェアのインストール等で難しいところは何もなかった。この点は、デジタルCS衛星によるサービスと大違いで、ソフトウェアの完成度は高い。問題はコンテンツである。

 まずADAMSだが、データの表示には一般のブラウザを用いる(IE 3.02以降と Shockwave Flash)。配信形態は、大量のデータをまとめて送りつけてくるようで、何のデータも蓄積されていない初回は、データ表示可能になるまでにかなりの時間がかかる。いくら無償とはいえ、ちょっとイライラする。ADAMSを利用した感想を簡単に言えば、朝日グループのWebサイトを丸ごと低速だが無償の回線でダウンロードし、オフラインで見ている、という感じだ。コンテンツは、画像とテキストが中心で、それにShockwave Flashによる動画が少々というところである(動画の大半は広告のようだ)。中身は朝日新聞や日刊スポーツ新聞のWebサイトの内容を中心に、天気予報やニュースヘッドラインが加わる、というところ。ただ、ADAMSはPCをTVに接続するという筆者の環境でも、大きな問題なく利用することができたのは喜ばしい限りだ。

 一方のbitcastは、専用のブラウザを用いる。専用ブラウザは画面の一部にTV放送を表示可能な点で、ADAMSより恰好良いのだが、PCをTVに接続した筆者の環境ではアイコンが潰れて表示されるため識別できず、使い勝手が極端に悪い。bitcastは普通のPC(PCディスプレイが接続されたPC)でTVを見るユーザーを念頭においているようだ。中身に関しては、それほどADAMSと変わらないように思うが、データの配信が細切れに番組形式になっている点が大きく異なる。TBSの番組表はWebで見ることができるほか、bitcastのデータとしても1日に何回か送られてくる。

 ADAMSにせよbitcastにせよ、サービス提供者がテレビ局だけに、コンテンツの中心が番組とリンクしたものになるのは当然のことだ。しかし、これが逆に弱みになっているような気もする。つまり、現状のコンテンツは番組の宣伝やダイジェストといった感が強く、番組から独立したデータ放送として楽しめるかというと、疑問符がつくのである。これはADAMSやbitcastといったVBIを用いたサービスに限らず、通常のWebサイトにも共通する不満だ。

 筆者は日本ではマイナーな(だが米国では大メジャーな)NFLのファンだが、たとえば米国の放送局(ABC、ESPN、CBS、FOX)のWebサイトのNFL関連情報は、実際の放送を見ることができない筆者でも、十分楽しめるものである。それどころか、CBSやESPNのサイトは一部有料になっており、完全に独立したサービスとみなしても良いだろう(筆者も有料会員である)。しかし日本の報道機関のWebサイトは、掲載するのはあくまでもダイジェストのみであり、詳しい内容を知りたければ新聞を買うなり、番組を見るなりしろ、と言わんばかりの内容である。これでは何時までたってもWebやVBIは添え物のままだ。無償である上スポンサーも限られたサービスに、それほど力を注いではいられないという理屈はわかるが、それに甘んじていては未来もない。そろそろお金を稼ぐ仕組み(直接聴取料を課金するのか、スポンサーシップを強化するのかは別にして)の確立を目指す時期にきているように思う。少なくとも筆者は、毒にも薬にもならないものが無償で提供されるより、有償で薬になるサービスの提供の方が望ましいと思っている。

 一応、今回で、発作的に始めたリビングルームPCに関する話題は終りだ(実はまだ1つだけ大物が残っているので、近い将来取り上げるかもしれない)。あまり興味のなかった方も、興味のあった方も、読んで頂いて感謝している。次回に何を取り上げるかは、まだ決めていないが、極力製品に近いところのネタを拾っていきたいと思っている。それでは。

□GV-BCTV/PCI製品情報(アイ・オー・データ機器)
http://www.iodata.co.jp/products/video/gvbctv.htm

[Text by 元麻布春男]


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