Oracle社がサポートを表明して以来、エンタープライズ市場で注目を集めているLinuxの初めての国際的コンファレンス&展示会が18、19日の両日にわたって開催されている。ちなみにコンファレンスは基調講演も含め有料で、1日券が10,000円、2日通し券が16,000円。
「Linuxを公開した当初は、現在よりもずっと小さいもので、まだみんなが使いたいと思うほどの出来ではなかった。インターネットで公開したのは、いろいろな人に使ってもらい、協力してよりよいものにしたいと考えたからだ。科学者として、ごく当然のやり方だったと思う。公開して半年後くらいから手直ししたものがユーザーから送られてくるようになった。その後多くの世界中の人々の共同作業によって、現在は商用化に耐える品質にまでなってきており、開発のあり方として、こうしたやり方が最も適していることがわかった。」
「Netscape、Oracleをはじめとして、この1年間で大手の企業もLinuxサポートを表明せざるを得ないほどに成長したが、商用化によってLinuxの開発のやり方が変わることはないと思う。また、現在もLinuxのカーネルプロジェクトのリーダーとしてLinuxの開発に携わっているが、Linuxはパワフルで広く使われるものになってほしいと思う。ただし、肥大化して手に負えないようなものにはなってほしくないし、今後も有料にすることはありえない。」
「今後は、ある時点でLinux Consortiumのようなものが必要となるかもしれない。ただ私は、当分は従来どおりにカーネルの開発を担当していきたいと思っている。また現在、会社を起こそうと準備中だ。おもしろいことをやろうとしているのだが、現在はそれ以上は言えない。
夢は、自分で誇りに思えて、しかも人に与えて喜んでもらえることをしたい。同時に、楽しめる人生を送りたいと思っている。みなさんもぜひ、Linuxを使って、楽しんでください。」
Linux市場がこれほどの成長を遂げた理由としてYoung氏は、「Linuxの良さは、OSをコントロールできる点だ」と述べた。
「例えばNASAでは、ソースコードがないソフトはソフトではない。完璧な信頼性が必要で、5人のクルーの命が掛かっている肝心な時にブルースクリーンが出るようなソフトでは話にならない。バグが出た時は、2度とそのバグが出ないようにfixしなくてはならない。非常に高い信頼性が求められる分野では、そうした意味で、ソースコードを自由に改変できることが必要だ」。
「そこまでの信頼性が必要ないユーザーの場合でも、例えば、MicrosoftのOSを使っていて問題があったら、サポートに電話して“次のリリースでは修正される予定です”というような答えをもらい、待っているしかない。ユーザーは問題がわかっていても、手を出すことができない。Linuxはいわばボンネットを開けられる車で、おかしいところがあれば自分でボンネットを開けて修理することができる」。
また、Linuxが成功を収めた理由として、「ユーザー全員の力でより良いものを作れる」、「OSをユーザー自身がコントロール可能という、ユニークな価値を提供できる」、「オープン・ソースという、ひとつのルールに従う」の3つを挙げた。
Young氏はオープン・ソース・ライセンスだからこそ、お互いに信用していないライバル企業とでも共同して開発ができるし、また考え方が違っても協力できるとして、こうしたやり方が開発の方法として、非常に優れていると強調。そのおかげで、Microsoftが莫大な投資をして開発したWindows NTにもひけをとらないOSに成長することができたと述べた。
こうしたLinuxの世界で、LinuxパッケージのビジネスをしているRed Hat Software社の位置付けは、道路の鋪装の穴を埋め、雪かきをして、道路整備をしている会社のようなものだ、とした。「Linuxは道路、つまりインフラのレイヤをパブリックスペースにした。Microsoftは道路を私有道路にして、通行者から料金を徴集している」。
最後にYoung氏は、次のような問いかけで講演を締めくくった。
「Linuxは、ユーザーが自分で技術をコントロールすることができるOSだ。いま、封建制度に戻りたいと考える人がいるだろうか? 自分の人生は、自分でコントロールしたい。」
□LinuxWorld Conference Japan'99ホームページ
http://www.idgexpo.com/linux99/
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【1/6】MACWORLD Expo/San Francisco基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990106/macw03.htm
('99年3月18日)
[Reported by hiroe@impress.co.jp]