Business Applications Conference ビル・ゲイツ特別基調講演レポート

'99年3月11日 開催

 ビル・ゲイツ氏の講演は初っ端からトラブルに見舞われた、オープニングムービーの音声が出ないのだ。

 この講演は、パシフィコ横浜で、企業情報システムをテーマに2日間に渡って開催されたMicrosoftのイベント「Business Applications Conference(Biz Apps)」のトリの特別基調講演として行なわれた。背広姿の会社員で埋め尽くされた会場は軽いおどろきにつつまれたが、壇上はそのまま進行した。日本法人の成毛社長の短いあいさつのあとビル・ゲイツ氏が登場した。東南アジアを歴訪するツアーの最終ということもあって、2年前に見た姿にくらべ、やつれているように見えた。イベントの方向に合わせてゲイツ氏も背広姿だ。


 講演のテーマは、“Building a Digital Nervous System”、今回のイベントのテーマそのものだ。「Digital Nervous System(以下DNSと略)」は、“会社内というボディを支えるデジタルネットワークによる神経系統”の意味であり、このところのMicrosoftのキーワードとなっている。DNSは具体的にはインターネットをベースにしたメッセージングシステムであり、ベースになるのはメールであり、そのデータベースだ。ネットワーク化された顧客情報の共有や、顧客との受発注のネットワーク化(エクストラネット)などが主眼だ。「ナーバスシステムの原則」、「デジタルナーバスシステムの診断」などの話が続く。「あなたの会社は記憶力が高いか?」とか「顧客情報がすぐ取り出せるか?」など、情報化の基本というべき話が中心だが、「悪いニュースほど早く伝わる」という原則や、「難局に際して社員を総動員して対処できるか?」という問いなどは感慨深く面白かった。

 ここで第2のトラブル、国内の導入時例としてブリジストンの紹介ビデオをかけたところ、また音声がでない。1分ほどそのまま上映されたが、ついに停止、会場は暗いままだ。ようやく明かりがついたがゲイツ氏は遠目にも憮然とした様子だ。「いや、トラブルがPCじゃなくて良かったね」と言って、先を続ける。

 続いてサプライチェーンの事例としてP&G社のビデオがかかる。こんどは無事に音声が会場に響くと、会場内がホッとした雰囲気に包まれた。

 講演のテーマをあえてまとめれば「現在のWindowsは、デスクトップだけではなく一部のハイエンドを除けば、アプリケーションの作成に適したリッチなプラットフォームである。1、2年のうち(Windows 2000登場後)にはハイエンドサーバーの分野でもパフォーマンスが認められるだろう」というものだ。これはここしばらくのMicrosoftの主張そのものである。新しいところでは、XMLに準拠した情報交換やアプリケーション統合のフレームワークとして「BizTalk」というキーワードが解説された。

 しかし、何度目かの遅れの噂が根強いWindows 2000の発売時期、IntelやPCメーカーをまきこんだLinuxの台頭などについては何も触れられなかった。

 最後の質疑応答で「Windowsの10年後はどうなっているか」というゲイツ氏好みの質問が出ると、「10年前のことを考えてほしい、Windowsは全然遅くてダメといわれて。でも10年後には音声認識や手書き認識がモノになっていて」と楽しげに答えた。また、一緒に壇上に上がっても質問が飛ばなかった成毛社長が「せっかく出てきたのにしゃべらないのも残念なので、私からも質問をひとつ」といって「いまMicrosoftの社長をやってなくて、ソフトハウスの社長をやってたらどんなソフトを作りますか」という、これまたゲイツ氏好みの質問をすると「いまやるならWebサイトのソフトウェアだろう。AIも昔っからやりたいんだけど、いまチャンスなのはWebサイトのソフトだよね」と嬉々として答えるのを見ると、若返って見えて、なんだかうれしかった。やっぱり、技術の話が好きな人なんだと感じる。

 企業情報などの巨大なシステムを作る会社の総帥というのも面白いんだろうけど、あんなに楽しそうなら昔みたいに小さい会社に戻って気の利いたWeb用ソフトとか出してほしいなぁ、というのは感傷にすぎるというものだろうか。

□Business Applications Conference のホームページ
http://bizapps.msn.ne.jp/
□講演内容
http://bizapps.msn.ne.jp/keynote/

('99年3月11日)

[Reported by date@impress.co.jp]


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