プレイステーションソフトとの互換性も確保

「次世代プレイステーション」の基本仕様を公開
国内発売はこの冬を予定

'99年3月2日 発表



 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCEI)は、東京国際フォーラムで「次世代プレイステーション」に関する発表会を行なった。基本仕様の公開が中心で、名称などは明らかにされなかったが、発売は日本国内がこの冬、米国/欧州は2000年秋を目標とするとした。また、現行モデルの「プレイステーション」対応ソフトについて、互換性を確保するほか、インターフェイスとしてUSB、IEEE-1394を採用することも明らかにされた。

 公開された資料によれば、「次世代プレイステーション」は128ビットプロセッサをベースとした6チップ構成のシステムになっており、DVD-ROMドライブを搭載する。各チップの基本性能については、2月の「ISSCC99」で発表された内容に準じたものだが、より具体的な製品仕様について公開されている。

 発表会ではデモも行なわれ、「次世代プレイステーション」で実現されるCGが紹介された。数千枚の羽根が風に舞う姿がリアルタイムに描画されるデモでは、各オブジェクトがそれぞれ物理特性を有する。また、吹き上がる花火のCGでは、600フレーム/秒で演算を行ない、60フレーム/秒で描画することで、よりリアリティのある映像を実現していた。

【 デモンストレーションのCG画像 】

 

●128ビットプロセッサ「Emotion Engine」、浮動小数点演算性能はPentium IIIの数倍

 SCEと東芝が共同開発し、2月の「ISSCC99」で発表したもので、正式名称は「Emotion Engine」(エモーション・エンジン)という。ゲート長0.18ミクロンで製造され、1チップに2個の64ビット整数演算ユニット(IU)、2個の浮動小数点ベクトル演算ユニット(VU0、VU1)、MPEG2デコード(IPU)、DMAコントローラなどが集積される。

 動作周波数は300MHzで、浮動小数点演算性能は6.2GFLOPSに達する。発表会では、Pentium II 400MHz/Pentium III 500MHzと演算性能を比較した参考資料が配られ、数値によっては数倍の性能を示すことが明らかにされるなど、「Emotion Engine」に対する自信をうかがわせる内容となっていた。

 メインメモリはDirect RDRAM 32MBを搭載する。16ビットバスを2チャンネル備え、バンド幅は、PC/100規格対応SDRAMの4倍に相当する3.2GB/秒を実現している。

【演算性能比較表】
基本演算 浮動小数点ベクトル演算
基本演算 浮動小数点ベクトル演算
 

【Emotion Engineの主な仕様】
・動作周波数:300MHz
・命令キャッシュ:16KB(2way)
・データキャッシュ:8KB(2way)
・スクラッチ・パッド:16KB(2ポート)
・製造プロセス:0.18ミクロン
・総トランジスタ数:1,050万トランジスタ
・ダイサイズ:240平方ミリメートル
・コア電圧:1.8V
・消費電力:15W
・浮動小数点演算性能:6.2GFLOPS
・座標変換+透視変換:6,600万ポリゴン/秒
     +光源計算:3,800万ポリゴン/秒
     +フォグ :3,600万ポリゴン/秒
・ベジェ曲面生成:1,600万ポリゴン/秒


●メモリバンド幅48GB/秒のグラフィックチップ「Graphic Synthesizer」

 グラフィックチップ「Graphic Synthesizer」(グラフィックス・シンセサイザ)は、4MBのDRAMセルとコアを1チップに搭載した。DRAMセルとコア間のバス幅は2,560ビットとすることで、メモリバンド幅48GB/秒を実現し、処理速度の向上をはかっているのが特徴となっている。

 テレビ出力はNTSC/PALに対応するほか、DTV(デジタルテレビ)への対応も可能としている。画面サイズは最大で1,280×1,024ドット。画像処理機能は、Texture Mapping、Bump Mapping、Fogging、Alpha Blending、Bi/Tri-Linear Filtering/MIPMAP、Anti-Aliasing、Muti-Pass Renderingに対応する。

 処理速度は、微小ポリゴン描画で最大7,500万ポリゴン/秒、テクスチャ、光源計算、半透明、Zバッファを併用した場合でも2,000万ポリゴン/秒となっており、PC向けのグラフィックチップを大幅に上回る。発表会では「Emotion Engine」と同様に性能比較表が公開され、Dreamcastにも採用されているグラフィックチップ「PowerVR2」を大幅に上回る性能を示すことが明らかにされた。

【描画性能比較表】
ピクセル・フィルレート ポリゴン描画
ピクセル・フィルレート ポリゴン描画
 

【Graphic Synthesizer】

・動作周波数:150MHz
・内蔵DRAM:4MB
・製造プロセス:0.25ミクロン
・ダイサイズ:279平方ミリメートル
・トランジスタ数:4,300万トランジスタ
・内部データバス:
 Read 1,024ビット
 Write 1,024ビット
 Texture 512ビット
 合計 2,560ビット
・スクラッチ・パッド:16KB(2ポート)
・最大表示色数:32bit(RGBA:各8ビット)
・Zバッファ:32ビット

●I/Oプロセッサは、現行「プレイステーション」互換のCPUコアを内蔵

 インターフェイスとしてUSB、IEEE-1394対応の入出力を備える。転送レートはUSB(OHCI準拠)が1.5M~12Mbps、IEEE-1394が100~400Mbpsに対応する。

 リリースによれば、これらのインターフェイスを採用することにより、「ビデオデッキ、セットトップボックス、デジタルカメラ、プリンタ、ジョイスティック、キーボードやマウス等、様々なコンピュータや民生機器とのデータ交換が将来可能とになる」としており、現行の「プレイステーション」とは違った、ゲーム機に止まらない展開が予想される。

 なお、これらの機能を提供するI/Oプロセッサは、現行の「プレイステーション」のCPUをベースにキャッシュメモリを拡張したものとなっている。命令コードレベルで互換性を確保し、「現在発売されている約3,000タイトルのプレイステーション対応ソフトを継続して楽しめる」という。また、DMAチャネルのデータ転送レートを4倍に、シリアルコントローラの性能を20倍以上に向上している。

 また、サウンド機能は、現行の「プレイステーション」用音源を拡張したものとなっている。AC-3やDTSなど、DVD-Videoのオーディオ再生については、「Emotion Engine」に追加されたマルチメディア命令によるソフトウェアにより、リアルタイムに処理できるとしている。

□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□「次世代プレイステーション」の基本仕様のニュースリリース
http://www.scei.co.jp/dearscei/pr/990302a.html
□「次世代プレイステーション」向け世界最高速の128ビットCPU Emotion Engineを開発のニュースリリース
http://www.scei.co.jp/dearscei/pr/990302b.html
□「次世代プレイステーション」向けDRAM混載プロセスを採用した世界最高速描画プロセッサを開発のニュースリリース
http://www.scei.co.jp/dearscei/pr/990302c.html
□プレイステーションとの互換を可能にする次世代プレイステーション向けI/Oプロセッサ開発のニュースリリース
http://www.scei.co.jp/dearscei/pr/990302d.html
□関連記事
【2月22日】後藤弘茂のWeekly海外ニュース
究極のバーチャルワールドを作り出すPlayStation2チップ(?)がISSCCで登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990222/kaigai01.htm

('99年3月2日)

[Reported by shiina@impress.co.jp]


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