米国最大の家電ショーである「1999 InterNational CES」が今年も1月7日から10日まで、ラスベガス市内の4カ所のコンベンションセンターで同時開催された。このイベントは、ありとあらゆる家電系製品を一堂に集めた巨大なもので、同じ会場で開催される「COMDEX/Fall」に匹敵する規模を誇る。
内容的には、実に多種多様なものが出展されており、テレビ、ビデオ、オーディオといったAV系はもちろんのこと、なかには掃除機や冷蔵庫などを出品しているメーカーもある。とはいえ、ここ数年はデジタル機器を中心としたイベントとなっており、今回も多数のデジタル家電製品が出展された。
また、デジタルカメラもデジタル家電の一分野として扱われており、きちんとデジタルイメージング用のパビリオンまで設けられている。昨年はこのCESで、カシオやリコーが新製品を出展し注目されたが、今回は、この会場で発表された新機種はアグフアの普及機のみとやや寂しい展開となった。やはり、各社とも2月に同じ会場で開催されるカメラショー「PMA」にターゲットを絞っているようだ。もっとも、大手メーカーのなかには商談用に、ブース内や近隣のホテルに特別室を設け、特定ディーラー向けに内覧しているケースもあり、すでに水面下ではこの春の新製品ラッシュが始まっているような気配もある。
日本メーカーは今回、新製品こそないものの、全体に積極的な展開を図っており、全体に人気も上々。とくに昨年は、米国市場での販売台数が一昨年の2倍近くになるなど好調な伸びを示しているだけに、来場者の関心も急速に高まっている。
■アグフア
今回唯一、デジタルカメラの新製品を発表したアグフア。MACWORLDレポートでも記したように、同社は米国市場での展開にきわめて熱心に取り組んでいるメーカーだが、これまで米国のコンシューマー市場に合致する製品がなく、今回のモデルはまさにその分野をターゲットにしたモデル。
今回発表された「ePhoto CL30」は、従来の高機能指向「ePhoto1680」のラインではなく、「ePhoto370」のような普及機ラインの製品だ。なかでも注目すべき点は、USB対応の液晶付き100万画素モデルでありながらも、399ドルという低価格を実現した点といえる。残念ながらレンズは単焦点式でズームではないが、同社独自の画像補間ソフトである「PhotoGenie」を利用することで、150万画素相当(1,440×1,080ピクセル)の画像が得られる点も大きな特徴となっている。
これらの要素は、まさに米国市場でのコンシューマー機に求められている要素であり、完全に米国でのシェアを獲得するために企画されたモデルというのがわかる。
外観はいわゆるコンパクトカメラ風デザイン。CCDは1,152×864ピクセルの100万画素タイプを採用。レンズは35mmカメラ換算で43mmレンズ相当の単焦点タイプ。もちろん、オートフォーカス式だ。記録媒体はCFカード(CF Type2未対応)で4MBカードが付属している。液晶ディスプレイは1.8インチ。このようにスペックだけを見ると、パーソナル機としては必要十分なものであり、399ドルならお買い得と感じる。
USBコネクタを標準装備。ただし、ケーブルは専用のものを使用する。 | 「Made in TAIWAN」とプリントされている。 |
また注目のUSBは、専用ケーブルを使うもので、汎用のUSBケーブルが直接接続できるわけではない。転送速度はカタログ値で100KB/秒となっており、それなりに高速なようだ。
ちなみに、同社の「ePhoto1280」や「ePhoto1680」といった高級機は「Made in Japan」だが、このモデルは「Made in TAIWAN」となっていた。
価格とスペックを見ると、米国市場、とくに通販で売れそうなモデルであり、日本メーカーのモデルでこれに対抗できるものは、現時点では見あたらない。本機の登場で米国市場でのパーソナル向けデジタルカメラの普及が加速されるのは必至といえる。日本のライバルメーカーの今後の対応が大いに楽しみだ。
■ポラロイド
ポラロイドは今回、同社のパーソナル機としては初めてのXGAモデル「PhotoMAX PDC-700」を出展した。このモデルは、完全なオリジナルではなく某台湾系メーカーからのOEM製品のようだ。
デザイン的にはどことなくFinePix700を連想させる縦型タイプで、画像サイズは1,024×768ドットだ。メモリは内蔵専用(4MB)。液晶ディスプレイは1.8インチタイプを装備している。価格は349ドルとXGAクラスとしては十分に安価な部類に入る。
その他にも、「PDC-640」というスマートメディア採用機も積極的にアピール。こちらはシリアル転送用の標準セット(279ドル)のほか、フラッシュパスを同梱した「Digital Floppy Camera PDC-640FL」セットも用意されている(299ドル)。前者はコスト重視で、後者はフラッシュパス経由でPCに転送することで、よりスピーディーな作業ができる点をウリにしているわけだが、わずか20ドルしか違わないなら後者の方がお買い得と感じる。
同社の場合、いずれのモデルにも、オリジナルのフォトレタッチソフトである「PhotoMAX Image Maker」などが付属しており、買ったその日からデジタルカメラが楽しめるパッケージにしている点が大きな特徴だ。
■LARGAN
今後、台湾系メーカーは米国市場で低価格モデルを中心に急速な展開をする可能性が高い。なかでも、LARGANは米国でのイベントに積極的に参加している意欲的なメーカー。
今回は新製品こそないが、VGAの低価格モデルである「Lmini 350k」シリーズを出展していた。このモデルは、米国で199ドル、実販179ドル程度で入手できる簡易タイプ。機能的には、35万画素CCDを搭載した、固定焦点式モデルで、メモリも内蔵専用(2MB)。ファインダーも光学式のみという、超シンプル。
しかし、デザイン的にはなかなかオシャレで、ストロボが跳ね上がるタイプの「350」と、固定式の「351」があり、いずれも普通のシルバーカラーのほか、きれいなブルーメタリック調モデルも用意されている。画質的には、国産の初期のVGAモデル程度であり、メモ用機という感じだが、デザインと価格は大いに魅力的だ。
また、来月のPMAでは、200ドルの150万画素モデルのプロトタイプを出展するということなので、こちらも大いに楽しみ。
■キヤノン
キヤノンは今回、米国のイベントらしいショー仕立ての大きなブースを構え、イメージング系を中心とした積極的なアピールを展開していた。
意外だったのは、その出展内容で、デジタル系のメインになっているのは、デジタルビデオ。ブースで来場者のポートレートを撮るデモも、Power-shotシリーズではなく、すべてDVの静止画モード。それをIEEE-1394経由でPCに送ってプリントしているのにはビックリしてしまった。
それ以上に驚いたのは、カメラのハンズオン・デモの大半が、普通のフィルム式カメラであり、デジタルカメラはわずか数台しかなかった。まあ、CES自体はデジタルだけのイベントではないわけだが、どうも周囲のブースがデジタル中心なのに比べると、けっこう違和感があった。
とはいえ、話題の「Power-shot PRO70」はブースでも人気が高く、手にする人が絶えることがないほど。また、新機種で高価なモデルながらも、すでに肩から下げている来場者も見かけた。
■オリンパス
オリンパスブースは、デジタルイメージングパビリオンにあり、そのなかでもひときわ目立つ存在だった。
もちろん、今回も新製品はないが、「Digital Family Room」とタイトルされたステージを設け、デジタルカメラやホームプリンタのある生活の楽しさを実演。PCユーザーだけでなく、一般家庭向けの製品でもあることを強くアピールしていたのが印象的だった。
■三洋電機
家電系メーカーのなかでもデジタルカメラに積極的にチャレンジしている三洋電機。今回も昨秋発表されたばかりの「VPC-X350(DSC-X100)」とメガピクセル ズーム機「VPC-Z400」(DSC-SX1Z)の2機種を出展していた。
ブースでは実際にカメラを手にする人も多く、なかでもコンパクトカメラライクな「VPC-X350(DSC-X100)」のほうが人気が高かった。
■カシオ
昨年、QV-770を突如CESで発表し驚かせたが、今年は残念ながら新製品はナシ。だが、QVシリーズのアピールを欠かしているわけではなく、昨年同様、Windows CEマシンなどとともにステージ上でもその楽しさを積極的に紹介していた。
また、ブースには、QV-7000SX用の水中ハウジングや、IomegaのClik!ドライブを使ったデモなども行なわれてた。
■ソニー
ソニーは自社ブースとパビリオン側の両方でデジタルカメラを出品。自社ブースでは、XGAとなった新型デジタルマビカがメイン。「Cyber-shot PRO」は価格や用途的にやや特殊なものという感じで、今回はメモリースティック関連の説明スペースでの出展となっていた。
また、パビリオンでは恒例となったデジタルマビカでの記念撮影が行なわれており、撮影したデータをフロッピーで持ち帰れるとあって、人気も上々だった。
■松下
松下は今回、テレビやビデオ系がメインで、デジタルカメラは昨年発表されたXGAモデルである「PalmCam」が一台だけ出展されていた。そろそろズーム付きや、より高画素の新型モデルが登場してもおかしくない時期なのだが……。
■富士フイルム
CESの新聞によると、富士フイルムは今回、米国市場で初めてズーム機の「MX600Z」(日本名:FinePix600Z)を発表したようだ。米国ではズームへの要望が高いだけに、ようやくラインナップが揃ったという感じだ。また、日本ではやや大柄に見える本機も、こちらでは普通のサイズであり、むしろ、「普通のカメラと同じような感覚で使える」という点を前面にアピールしている点が新鮮だ。
もっとも、会場にはブースはあるものの、テープやディスクなど記録メディア系しか展示されておらず、ちょっと肩すかしを食った。
□1999 International Consumer Electronics Show
http://www.cesweb.org/
('99年1月11日)
[Reported by 山田久美夫]