液晶/プラズマ表示装置の展示会「LCD/PDP International'98」開幕

会期:'98年10月28日~30日(10:00~17:00)
会場:幕張メッセ 日本コンベンションセンター展示ホール5・6
入場料:2,000円


 液晶ディスプレイおよびプラズマディスプレイ関連製品の展示会「LCD/PDP International '98」が28日に開幕した。出展社数は187社で、展示製品はディスプレイパネルはもちろんのこと、液晶製造装置や設計ソフトウェア、ウルトラクリーン関連製品までと幅広く、業界関係者向けのイベントとなっている。
 ここでは、展示されていたディスプレイパネルについてレポートする。


■LCDパネル

 LCD業界はパソコン製品の伸び悩みから供給過剰となり、'98年はマイナス成長が予測されている。このため、ノートパソコン用が依然メインではあるものの、高精細化、大型化、あるいは屋外/携帯用の反射型液晶やビデオなどのAV機器向け低温ポリシリコン液晶など、多彩な用途向けに特化したバラエティに富む製品が見られた。
 パソコン向けではデスクトップ用CRTの代替え用途がメインと見られる15インチクラスの展示が多く見られ、主催社である日経BP社のブース展示によれば、'99年には15インチTFTで「400ドル以下が求められる」としており、さらなる低価格化が望めるようだ。また15インチを超える17~19インチクラスのTFT液晶の展示も多く見られ、解像度はXGA(1,024×768ドット)のものとSXGA(1,280×1,024ドット)のどちらかが多い。このクラスはハイエンド向けCRTの置き換え用途がメインと見られる。

●日本IBMの超高精細TFT液晶ディスプレイ

 日本アイ・ビー・エムは、“レントゲン”という開発コード名に示されているように、従来液晶の解像度では無理だったレントゲン写真診断も可能となる高精細ディスプレイを展示。その解像度は200ppi(pixcel per inch)、16インチで2,560×2,048ドット表示可能という、これまでの液晶ディスプレイとは一線を画す仕様となっている。製品化は'99年後半の見込みとされているが、すでにサンプルの引き合いが多く来ているという。製品化の際の価格は未定。


●大画面液晶パネル

シャープの42インチプラズマアドレス液晶(左)とSAMSUNGの30インチ(1,600×1,200ドット)表示のTFT液晶
 シャープでは42インチのプラズマアドレス液晶(PALC)を展示。TFT液晶では画素のコントロールをトランジスタでON/OFFしているが、このON/OFFをプラズマの放電を利用して行なうというもの。この方式のほうが大画面のものが作りやすいという。展示品の解像度は854×480ドットだが、解像度を上げるのは、技術的にあまり問題はないとのことだ。大画面だが、輝度は400cd/平方メートルと高い。2000年ごろを目処に製品化を考えており、価格は対抗製品となるプラズマディスプレイの動向をにらんで決めるという。

 SAMSUNGブースでは30インチのTFT液晶パネルを展示。こちらも1枚ガラスで、解像度1,600×1,200ドット、画素ピッチ0.381mm、輝度は250cd/平方メートル。参考出品で、'99年中には製品化したいという。


●反射型液晶

シャープの反射型白黒プラスチック液晶(左)と反射型カラーTFT(HR-TFT)11.3インチを搭載したノート試作機
 シャープではカラーの反射型液晶であるHR-TFT(HRはHigh Reflectionの意)ことスーパーモバイル液晶と、反射型白黒プラスチック液晶モジュールを参考出品。
 HR-TFTは26万色表示のものが3.9/8.4/11.3インチの3製品、フルカラーのものが2/2.5インチの2製品展示されていた。26万色のHR-TFT液晶は、ザウルスカラーポケットに採用された液晶の後継製品で、コントラストがカラーポケット搭載の従来品が10:1であったのに比べ、20:1と向上している。実際に、製品を見ても色が鮮やかになったと、ひと目で感じる違いがあった。これはすぐに製品化されるというので、次の反射型カラーTFT液晶搭載のザウルスが期待される。
 反射型白黒プラスチック液晶モジュールは試作段階で、製品化スケジュールはまだはっきりしないという。現状ではコストはガラスの1.3倍ほどと高くなるものの、ガラス製に比べ、薄く、軽く、対衝撃性にも優れるため、PDA製品などの用途を考えているという。ちなみに展示品は5.5インチ(480×320ドット)で重量22g、パネル厚はわずか1.4mm。


カシオのハーフVGAサイズの反射型TFT液晶(左)と発売間近のFIVAに搭載された6.7インチSVGAのTFT液晶。PDA用やビデオ用の液晶などがメインのカシオでは、この6.7インチが最大の製品
 また、小型液晶を製造しているカシオでも反射型液晶を参考出品していた。こちらはTFTとSTNの反射型カラー液晶を展示していたが、STN液晶のほうは光を当てても暗く、PDAなどで使うにはちょっと苦しい印象。しかしTFT液晶のものはかなり色も鮮やかで、十分実用になるレベル。反射型TFT液晶はハーフVGAサイズ(640×240ドット)のH/PCサイズなので、近い将来、CASSIOPEIAにこの反射型TFT液晶が搭載されるものと思われる。

 このほか松下電器ブースでも7.8インチ反射型カラーSTN液晶(640×480ドット)、7.0インチワイド反射型TFT液晶(480×234ドット)を出品しており、'99年に入るとPDAからミニノートサイズPCへと、反射型液晶の応用製品が広がるのではないかと思われる。


●低温ポリシリコン液晶

 松下電器ブースではデジタルカメラやデジタルビデオなどのAV用途向けの2.5型低温ポリシリコン液晶をずらっと並べて展示。従来のデジタルカメラに搭載されている低温ポリシリコン液晶が12~13万画素程度が標準であったのに比べ、22万画素と最高レベルの画素数。また、ドライバ回路を内蔵しているため、別のICでドライバ回路を持っていた従来品と比べ、小型で低消費電力の製品を作ることができるという。

 東芝ブースでは、SONYのPCG-505RXに搭載され話題を呼んだノートPC向けの低温ポリシリコン液晶を出品。8.4インチと10.4インチの2製品を並べて展示していた。
 またLGジャパンのブースでは、東芝のものよりさらに大型の12.1インチXGA(1,024×768ドット)表示の低温ポリシリコン液晶を参考出品していた。
 反射型液晶と同様、低温ポリシリコン液晶もノートPC向けに従来より大型のものが作られ、用途が広がりつつあるのが感じられる。

松下電器の2.5型低温ポリシリコン液晶。22万画素でドライバ回路を内蔵する 東芝のノートPC用低温ポリシリコン液晶。A5サイズノート向けの8.4インチとB5サイズノート向けの10.4インチ LGジャパンの12.1インチXGA低温ポリシリコン液晶

■プラズマディスプレイパネル(以下PDP)

富士通のHD TV対応PDP(左)と松下電器のHD TV対応PDP
 富士通は独自の新駆動技術「ALiS方式(Alternate Lighting Surfaces method)」を採用したHD TV対応の42型カラーPDPを参考出品。ALiS方式は、従来のプラズマディスプレイでは隣り合う表示ラインの間に非発光領域が存在するが、この非発光領域を無くし表示ラインとして利用するために、その領域にプラズマ放電を発生させ制御する技術。ALiS方式の開発はプラズマディスプレイの革命、とも言われる。出品された対応PDPは、1,024×1,024ドットの解像度を持ち、アスペクト比は横16:縦9、輝度は500cd/平方メートルと非常に明るい。

 解像度と表示輝度はトレードオフの関係と言われるが、富士通ブースの向い側で展示していた松下電器の42インチHD TVも450cd/平方メートルを実現。また、1,920×1,080ドットでのプログレッシブ表示が可能。デモ映像のソースはビデオだが、プログレッシブに変換して表示しており、こちらも注目を集めていた。
 このほか、NEC、パイオニア、日立もプラズマディスプレイを表示。参考出品されていた製品については各社とも製品化は'99年を予定しており、価格ははっきり決まっていないものの、やはり100万円台に乗ってしまいそうだ。PDP業界の当初の目標としては、2000年にはインチあたり1万円程度を目指していたが、それもどうなるかまだ見えないという。家庭向けに壁掛け型プラズマディスプレイを購入するというのは、価格面から、まだしばらくは難しそうだ。

 また、プラズマディスプレイの場合は、現在の家庭用ブラウン管テレビの置き換え用途が大本命。高品位テレビ向けの放送局の対応などにより今後仕様も変わってくるため、メーカー側もHD TV対応や画質の向上などの技術革新を進めているものの、家庭向け製品の仕様までは絞りきれない状態のようだ。


■フルカラー有機ELディスプレイ

 東北パイオニアでは、フルカラーの有機ELディスプレイを参考出品。サイズは5.2インチで解像度は320×240ドット、輝度は150cd/平方メートル。
 有機ELディスプレイは有機発光体を利用したディスプレイで、液晶に比べて、視角の依存性がない、高コントラストで黒などがくっきり表示できる、応答速度がはるかに速い、低温下でも使えるなどの利点があるという。フルカラーのELディスプレイは2000年あたりの製品化を考えているとのことだ。コスト的には、バックライトやフィルタなどTFT液晶のコストを上げているものが必要ない上、製造プロセスも簡単だが、現状ではICを作っているメーカーが非常に限られるためコスト的に高くなるという。
ICが各社から出てくれば、もっと製造コストを下げられるそうだ。表示画質はTFT液晶ほど鮮やかではなく、やや青味が強いように感じられたが、十分実用になるレベルだと思われた。

□LCD/PDP International'98ホームページ
http://www2.nikkeibp.co.jp/EXPO/lcd98/index.html

('98年10月28日)

[Reported by hiroe@impress.co.jp]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp